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2-9 運命の輪

王妃様のお茶会当日。

例によって張り切っているアニエスさんに飾り立てられていた。

「マリナ様は素材が良いから、みがきがいがありますわ!」

そう言って、鼻歌でも歌いだしそうなテンションでウキウキと支度をしてくれる。

「今日はシャルも来るらしいから、会えるのが楽しみなんです。」

私も自分のテンションを少しでも上げようと、そう話してみる。

「王妃様は、時々こうしてご令嬢方を招いてお茶会をなさいます。これも社交という立派なご公務ですわ。」

アニエスさんがそう教えてくれる。

なるほど、お茶会も王妃様にとっては仕事なのか。

私でお役に立てることは何かあるだろうかと考え始める。

そうこうしているうちに支度が整った。

時間的にもわずかに早いくらいだったので、会場として指定されている部屋へと移動する。

王城内だけの移動だが、いつも通りエリクさんとディオンさんが護衛としてついてきてくれる。

「マリナさん、私のお茶会へようこそ。」

部屋に着くと、そう言って王妃様が出迎えてくれた。

私は淑女の礼をして答える。

「王妃様。本日はお招きにあずかり、光栄でございます。」

「貴女のお友達だというロレーヌ公爵令嬢も招いているから、楽しんでいってね。」

「はい。ありがとうございます。」

さすがは王妃様。

私の交友関係もご存じらしい。

案内された席に座って少しすると、シャルもやってきた。

「ごきげんよう、マリナ。」

「ごきげんよう、シャル。会えてうれしいわ。」

この『ごきげんよう』という挨拶にも、最初は戸惑ったものの、少しずつ慣れてきた。

「ごきげんよう。シャルロット様、マリナ様。」

「ミア様!ごきげんよう。」

先日のシャルのお茶会で知り合ったブローニュ侯爵令嬢のミア様も参加するらしい。

嬉しさに顔をほころばせる。

そんな私に、シャルがそっと耳打ちしてきた。

「ヴァンドーム侯爵令嬢もいらしてますわ。お気をつけて。」

ヴァンドームといえば、夜会や王城で私に嫌味を言ってきたテンプレ悪役令嬢だ。

チラリとシャルの視線を追えば、確かに彼女だった。

様子をうかがっていると目が合ってしまったので、私はニッコリと微笑んで軽く手を振ってみる。

彼女は少しビクッとしたあと、ツン!と顔をそらせて私とは離れた席に座った。

そんな彼女が、中々なつかない猫のように見えて、思わず可愛いと感じてしまう。

「さすがはマリナ様ですわ。仲良くなれて嬉しいです。」

私がヴァンドーム侯爵令嬢を遠くから愛でていると、シャルがそんなことを言う。

「え、だって、可愛いよね?」

「他のご令嬢方はそんな風に思っていませんわ。マリナ様は懐が深い方なのですね。」

ミア様まで私の事を褒めてくれる。

そんな話をしていたら、会場のご令嬢方から嬉しそうな声が上がった。

なんと、アルバート殿下が現れたのだ。

殿下は中央の席に王妃様と共に座る。

そうしてお茶会が始まった。

始まって少しすると、ヴァンドーム侯爵令嬢を始め、色々なご令嬢方が殿下に話しかけに行き始めた。

殿下は笑顔で対応している。

私はといえば、少しモヤモヤしたものを感じながら、シャルとミア様とおしゃべりしていた。

「マリナ様は行かなくてよろしいの?」

シャルがいたずらっぽく聞いてくる。

「ええ。サバンナに自ら赴くような真似はごめんです。」

それに、気付いてしまったから。

殿下の笑顔が、外向きの作り笑顔だということに。

私に向ける笑顔はもっと柔らかいのだということに。

それでもモヤってしまうけど、我慢できるのはそういうことだ。

それに、殿下はまだ私のものじゃないし。

とやかく言う資格は、今の私には無いのだ。

そんなこんなで女同士の会話を楽しんでいると、王妃様がやってきた。

三人とも、淑女の礼をする。

「私のお茶会、楽しんでもらえているかしら?」

「はい。我が領の茶葉をご利用いただいているようで、光栄ですわ。」

シャルが答える。

「マリナさんは、アルバートのところに来てくださらないの?」

王妃様は、今度は私に声をかけてくれる。

「私よりもふさわしい身分の方々がお伺いしているようですので・・・。」

「身分だけで言えば、そうね。でも、王太子妃や王妃の資質は、それだけでは計れないものよ。」

そう言って意味ありげな視線を投げてくる。

「私は・・・まだまだ未熟者です。」

「『まだ』ね。それなら、今後を楽しみに見ていましょう。」

王妃様はそう言葉を残して、他の席へと行ってしまった。

国王陛下といい、王妃様といい、何が言いたいのかよく分からない。

とりあえず、私の印象は悪くないらしいということだけ、良かったとしよう。


そんなお茶会が終わったころから、貴族の皆さんからの問い合わせが増えてきた。

国王陛下に施術(せじゅつ)したことが広まったらしく、自分の屋敷に来て施術してほしいという要望だ。

一人にOKを出すと、貴族全員に対応しなければならなくなるため、迷った私はアルバート殿下に相談することにした。

「俺としては、受けても良いと思う。ただ、王立病院が空になるのも問題だろうから、数は絞ったほうが良いだろうな。」

「そうですね。出張は一日一件だけに絞って、後は王立病院で受けるようにしたいです。あと、対象は貴族の方だけでなく、足が不自由だったりして王立病院まで来れない平民の方も受けようと思います。」

「分かった。その方向で進めてくれ。あと、ヒーラーの人数を増やしたいのだが・・・。」

「あ!私もそう思っていました!希望者がいれば、ヒーラーとして育てたいですね。」

「マリナ。こちらから言い出したことではあるが、仕事が増え過ぎないか?」

「しばらくは大変でしょうけど、ヒーラーの人数が増えれば一気に楽になりますから、大丈夫です!」

「そうか。では、ヒーラー希望者を募集しておこう。」

「はい、よろしくお願いします。」

こうして、出張の要望を受けることと、新たなヒーラーを育てていくことが決まったのだった。





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