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2-6 隠者

王城に着き、自分の部屋へと向かっていると、またしてもアルバート殿下に出くわした。

「ちょうど気分転換に庭に出ようと思っていたんだ。良かったら一緒に行かないか?」

特にこの後の予定が決まっているわけではない。

しかし殿下と二人で庭を歩いて良いのだろうかと少し迷う。

すると殿下は捨てられた犬のような視線を送ってくる。

(うぅ・・・そんな目で見られたら断れない・・・。)

私は短い時間なら、と結局うなづいてしまった。


王城の庭園は、さすが専属の庭師さんがいるだけあって、美しく整えられている。

植えられている花も種類が多く、どの季節でもどれかの花は咲いているように工夫されているらしい。

そんな中を四人で歩く。

そう、四人だ。

こういう時、護衛のエリクさんとディオンさんは少し離れて付いてくることが多いが、私が頼んですぐそばにいてもらっている。

殿下と二人きりではないよ、というアピールだ。

殿下は嫌そうな顔をしたが、仕方がないことだと思う。

「今日もロレーヌ公爵家へ行っていたのか?」

「はい。シャルがサロンを開いてくれたんです。ブローニュ侯爵令嬢、ベリー伯爵令嬢、グロスター伯爵令嬢と仲良くなりました。」

「そうか。良かったな。」

殿下が目を細める。

その笑顔を直視しないようにごまかして、私は言葉を続ける。

「シャルがシュトライゼン王国の貴族について書かれている本を貸してくれたんです。それを使って、国内の貴族を覚えるべく、勉強中なんですよ。」

すると殿下は目を丸くした。

「そんな勉強もしていたのか。」

「ええ。先生はシャルです。」

「なるほど。良い友人を得たようだな。」

「殿下のおかげです。ありがとうございます。」

微笑みかけながらお礼を伝える。

そこで、ふと思い出したことがあった。

「殿下。質問しても良いですか?」

「どうした?」

「魔法の勉強もしているのですが、魔力には相性があるとか。それを事前に調べる方法はありますか?」

そうなのだ。

ヒーラーとしての仕事にも魔法を取り入れようと思っているのだが、この相性というのがいまいちよく分からないのだ。

本によれば、相性の合わない魔力が体に触れると気持ち悪くなるらしい。

なので、安易にお客様に使うことができないのだ。

「そうだな・・・。魔力の相性は、性格上の相性と似ていることが多い。だから、話したり触れたりして合わないと感じるなら、魔力の相性も悪いだろうな。」

「そうなんですね・・・。合わない魔力に触れると気分が悪くなると本にあったのですが、どの程度のものなのでしょう?」

「それは魔力の大きさによるだろう。悪意を持って大きな魔力を嫌いな相手にぶつけたりすれば、その相手は倒れるかもしれん。しかし悪意が無く、徐々に魔力を流すなら、合わなかったとしても少し吐き気がする程度だろう。」

うーん。

これはやはり、身近な人に協力してもらって、実験してみてからの方が良さそうだ。

「わかりました。ありがとうございます。」

「俺の魔力をマリナは心地良いと言ったな。だから、俺たちの魔力の相性は良いはずだぞ。」

殿下は笑みを浮かべながら、私の目を見てそう言う。

私は一瞬、呼吸が止まった気がした。

「そ、そうですか・・・。」

何だか恥ずかしくなって、うつむいてしまう。

でも確かに、殿下の魔力は心地良いものだった。

温かくて、優しくて・・・。

そこまで考えたところで私は自分の思考を強制停止させた。

ダメだ、これ以上思い出していたら殿下に抱きつきたくなってしまいそう。

「私、そろそろ部屋に戻りますね。」

「なら、俺も戻るとするか。」

こうして、束の間のお散歩は終わりを告げたのだった。



ありがとうございました。

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次の更新は、月曜日の予定です。

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