2-5 杖のペイジ
ある日曜日。
私は王城の自室でシャルとお茶を楽しんでいた。
「お送りした本ですけれど、その後お勉強は進んでいますの?」
「うん、お陰様で、多少は貴族の関係がつかめてきたよ。」
すっかり仲良くなった私たちは、互いに行き来しながら、よくお茶を飲むようになっていた。
「では、そろそろ実際に会ってみましょうか。私と仲の良いご令嬢を何人か紹介しますわ。」
シャルがそう提案してくれる。
「シャルと仲良しなら安心だね。同性の友達が増えるのは嬉しい!」
こうして私はシャルのサロンに参加させてもらうことが決まった。
開催日と招待客は事前に相談して決める。
私は開催日までに、招待されるご令嬢方の家について、しっかり勉強したのだった。
そうして当日。
サロンに集まったのは、私とシャル、そして四人のご令嬢だった。
「皆様、はじめまして。私はマリナと申します。」
淑女の礼で集まったご令嬢たちに挨拶をする。
「マリナ様、はじめまして。私はベリー伯爵家長女のアメリアですわ。」
「私はブローニュ侯爵家三女のミアと申します。」
「私はグロスター伯爵家長女のオリビアです。お会いできて嬉しいですわ。」
「オリビアの妹のカミラですわ。私、今日を楽しみにしておりましたのよ。」
皆も淑女らしく挨拶を返してくれる。
一見したところ、皆いい人そう。
「どうぞ皆さまお座りになって。お茶とお菓子を楽しみながらお話ししましょう。」
シャルの声でそれぞれ席について、出されたお茶に口を付けた。
「最近は、何か新しいお話はありまして?」
シャルが皆に問いかける。
するとオリビア様が話し始めた。
「それでしたら、最近、ドレスの流行のラインが変わりつつあるのをご存じですか?」
「今まではプリンセスラインの、華々しいドレスが流行りでしたわね。」
「それが、最近はシンプルながら、生地をたっぷりと使った物が流行り始めていますのよ。」
さすが女子会。
まずはオシャレの話題から始まった。
オリビア様はこのグループの中ではファッションリーダー的な立場らしく、その方面の話題が豊富なようだ。
「実は、アルバート殿下がいずこかの女性にそのような服をプレゼントしたと噂がありまして・・・。」
私は、食べていたお菓子がのどに詰まりそうになった。
それって、この間のワンピースをプレゼントしてもらった時のことじゃない?
「それで、それが殿下のお好みならと、それに沿ったドレスの注文が増えてきているようですわ。」
シャルが意味ありげな視線を私によこしたが、私は気づかなかったふりをする。
あれは殿下の好みではなく、私が頼み込んでシンプルにしてもらったのだ。
その方が少しでも価格が安くなると思ったから。
最初は殿下も流行通り、派手なドレスを仕立てようとしていた。
それが、何故か新しい流行を生み出しつつあるらしい。
王族の影響力、すごい。
「アメリア様はいかがですの?新しいお菓子の流行はありまして?」
私が内心、汗ダラダラになっているのを気づいてか、シャルが話題を変えてくれた。
アメリア様は大のお菓子好きで、シャルも手土産に迷うと相談したりしているらしい。
「城下町の東の方に、新しいショコラの店ができましたの。とろけるショコラが絶品だったので、皆様にもぜひ食べてもらおうと、本日お持ちしましたのよ。」
シャルとアメリア様の視線を受けて、シャルの家のメイドさんがそのショコラを持って来てくれる。
「綺麗・・・!」
思わず感嘆の声が出てしまう。
そのショコラは、まるで宝石のようにキラキラとしていた。
「いただきますわ。」
早速みんなでショコラを口に運ぶ。
口に入れた途端にとろけるショコラ。
果実も使われているのか、ほんのり甘酸っぱい。
「とても美味しいですね・・・!」
幸せな気分でアメリア様に笑いかけると、アメリア様も満足そうに微笑んだ。
その後も、話題は美容に関する事や雑談で、誰かの悪口等は無かった。
さすがはシャルのサロン。
嫌な気分になる話をする人はいないようだ。
楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、もう夕方に差し掛かろうとしている。
それぞれシャルに別れの挨拶をして、家路につく。
良家のご令嬢方なので、移動はもちろん馬車だ。
私は庶民だけど、警備上の理由で王城から支給された馬車に乗り込む。
女同士の気の置けないおしゃべりを楽しんだ私は、満足感いっぱいで王城へと帰ったのだった。
ありがとうございました。
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