2-4 女教皇
シャルとすっかり仲良くなった私は、ご機嫌で王城の自室へと戻ってきた。
すると、まるで見計らったかのようにアルバート殿下が部屋へとやってきた。
「今日はロレーヌ公爵令嬢との茶会だったのだろう?どうだった?」
「はい、シャルとは仲良しになりましたよ!」
私が笑って答えると、殿下も嬉しそうな表情になった。
「そうか。良かったな。」
ポンポン、と軽く頭を撫でられる。
「殿下。あまり気軽に触らないでくださいませんか。」
思わずときめいてしまった私は、気持ちを隠すようにそう言った。
「嫌なのか?」
「そういうことではなく。どこで誰に見られているか分からないじゃないですか。」
「関係の無い者はここにはいないのだから、問題ないだろう?」
こういったやりとりは何度目だろう。
何回言っても殿下は私を愛でるのをやめてくれない。
そしてそれを嬉しいと思ってしまうのだから、私もどうかしている。
「殿下。私が殿下のお話をお断りしたのは、身分が違い過ぎるからです。」
「ああ。わかっているぞ。」
「身分が違い過ぎると、自然と結婚を祝福してくれる人が少なくなります。私は、皆に祝福されない結婚は嫌です。」
今日、シャルと話していてハッキリした私の本音を伝える。
「だから、反感を持たれるような行動は慎みたいと思っています。ご協力いただけませんか?」
気持ちが伝わるように、殿下をまっすぐに見て言う。
すると殿下は少し困ったような顔をした。
「俺はマリナのそばにいたい。他の者がいない場所でもダメなのか?」
「ダメです。」
きっぱりと言い切った。
「みんなに認めてもらえるまでは一緒に我慢しましょう?そして、どうしたら認めてもらえるのかを私と共に考えてもらえたら嬉しいです。」
そう伝えると、殿下は渋々ながらも頷いてくれた。
「わかった。貴族たちを中心に、皆に認めさせる方法を考えよう。」
「はい!」
そうして話を終えると、少しだけしょんぼりしながら、殿下は執務室へ戻っていった。
翌日。
いつもどおり仕事を終えて帰ってくると、シャルから私宛に荷物が届けられていた。
いったい何だろうと思いつつ開けてみると、分厚い本が出てきた。
添えられた手紙には、こう書いてあった。
「まずは国内の貴族の方々の顔と名前を覚えてくださいませ。」
そう。
分厚い本はシュトライゼン王国の貴族について書かれたものだった。
「これ・・・全部覚えるの?」
私は途方にくれた。
それでも、王太子妃になるために必要だと言うならやるしかない。
自国の貴族の事も知らない王族なんて、確かにありえないもの。
私は自分の頬をパチン!と叩いて気合を入れてから、その本を開いてみた。
身分の高い家から順に書かれているらしく、一番最初に載っていたのはシャルの家だった。
ロレーヌ公爵家。
現在の当主はシャルのお父さんであるサミュエル・ロレーヌ。
そして後継ぎとなる長男はシャルのお兄さんでオースティン・ロレーヌ。
そんな風に、各家の家族構成や、その領地がどこなのか、領地の特産品は何なのか等が、絵も交えて描かれていた。
最初が友達であるシャルの家の事だったので、わりと抵抗なく読み進めることができた。
とはいえ、仕事後の限られた時間で読み切ることは出来ないと判断し、ほどほどのところまでにしておいた。
続きはまた明日読めば良い。
こうして私は、隙間時間を利用して貴族についての勉強をしていったのだった。
ありがとうございました。
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