表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/63

1-3 剣のナイト

ブクマ、評価、ありがとうございます!

「出ろ。」

そうしてしばらく待たされた後、先ほどの騎士から声をかけられた。

「はい。・・・あの、私はどうなるのでしょうか?」

不安いっぱいで思わず尋ねれば、

「この後、取り調べがある。それ次第で処分が決定するだろう。こちらへ。」

そう騎士が答え、また別の部屋へと連れていかれた。

今度の部屋は先ほどの部屋とほぼ同じで、しかしベッドは無く、中央に机と、向かい合わせに二人分の椅子が置かれていた。

「奥の席に座って待て。」

騎士に言われて、おとなしく席に着く。

少しすると、また違った男性が現れた。

銀色の髪は男性にしては長く、後ろで一つにまとめられている。

瞳の色はアメジストのような紫色だ。

中世ヨーロッパの貴族っぽい服装をしている。

年齢は私と同じくらいか。

「初めまして。私は王太子殿下の側近を務めております、オリバー・モンフォールと申します。」

(・・・疲れてる!この人めっちゃ疲れてる!)

そうなのだ。何よりも私が気になったのは、隠し切れないほど表に出ている疲労の色だった。

「初めまして。私はマリナ・ナカノと申します。この度は、勝手に建物内に侵入してしまったようで、申し訳ありません。」

とりあえず考えていた謝罪の言葉を述べながらも、つい観察してしまう。

顔色が悪い。目の下にはクマができている。

髪の毛も艶がなくパサついている感じで、少し乱れている。

動作もどこかぎこちない・・・っていうか、眠いのを無理して起きている感じだ。

「先ほどの騎士から、逃げる様子は無いと報告を受けました。何があったのか落ち着いて話してください。」

私の向かいの席に着くと、オリバーさんに問いかけられた。

「それが、私にもよく分からないんです。気が付いたらあの場所にいて・・・。あの、話しながらで構いませんので、手に触れさせていただいてもよろしいでしょうか?」

オリバーさんのあまりの疲れ具合に我慢できずにハンドリフレクソロジーをできないかと声をかけてみた。

リフレクソロジーは足に行うことが多いが、手や頭にも行うことができるのだ。

この部屋では足には行いづらいので、手を出してほしいとお願いしてみた。

これだけ疲れていれば、さぞや多くの老廃物があるだろう。

少しワクワクしてしまう。

「は?手、ですか?」

オリバーさんは怪訝な顔だが、私の言葉がいきなりすぎた事は自覚しているのでスルーする。

「はい。お嫌でなければ、お願いいたします。」

害意がないことを示すために、自分の両手を広げて見せる。

オリバーさんは怪訝な顔はそのままに、けれど手を出してくれた。

私は早速その手を取り、施術を始める。

「ブチュブチュブチュッ!」

始めた途端、すぐに体の中の老廃物がつぶれていく感触があった。

その後も、どこに触れても老廃物がたまっていて、全身疲労があることが伺える。

いったい、どうやったらこんなに疲れるのか。

「これは、何をしているのですか?」

オリバーさんに尋ねられ、すっかり仕事モードになった私は普段の接客のようにゆったり優しく答える。

「これはリフレクソロジーと言って、手に溜まっている老廃物を細かくしています。とてもお疲れのようですね。最近、お忙しかったのではありませんか?」

「確かに、ずっと忙しかったのですが、私の体の疲れが分かるのですか?」

「頭や神経に関わる反射区に特に多く老廃物が溜まっています。頭を使うお仕事が多かったり、精神的なストレスが多い感じがしますね。また、首、肩、腰にもお疲れがあるようです。もしかして、座りっぱなしの事が多いのではないですか?」

「その通りです。・・・ああ、何だか頭がスッキリしてきました。」

オリバーさんは目を閉じて、若干ホッとした様子だ。

「手は、第二の脳と呼ばれていますから。では最後に、私の合図に合わせて深呼吸をお願いできますか?」

「ええ」

オリバーさんの了承をもらえたので、私は自分の親指の腹をオリバーさんの手の中心付近にあるソーラープレクサスと呼ばれる場所にセットする。

「それでは。鼻から、ゆっくり息を吸ってー。」

合図をしつつ、ゆっくりと親指に自分の体重を乗せていく。

「ゆっくり息を吐いてくださーい・・・」

吐く息に合わせて、またゆっくりと親指の力を抜いていく。

「はい、お疲れさまでした。」

最後まで施術を終えた私は、オリバーさんへ微笑みかける。

オリバーさんは、閉じていた目をクワッ!と開いて、身を乗り出してきた。

「あなたは、ヒーラーなのですね?!」

急なことにビックリした私は、とっさに返事ができない。

「は・・・?え・・・?」

「あなた、人を眠らせることもできますか?」

勢いのまま続いて出た質問に、どうにか答える。

「えーと、普段は足に触れるのですが、お客様は8割か9割くらいの確率で眠ってくださいます。」

「できるのですね!!」

「た、たぶん・・・」

私の答えを聞いたオリバーさんはガタン!と椅子を蹴って立ち上がり、私の腕をガシッと掴んだ。

「眠らせてほしい人がいます!付いてきてください!」

「えぇ?!」

そうしてそのまま部屋を出ていく。

私は引きずられるようにして、連れていかれた。


連れてこられた部屋は、何やら豪華な部屋だった。

調度品はキラキラと輝き、カーテンも絨毯も艶々だ。

窓から差し込む光も美しい。

・・・が、雰囲気は重苦しかった。

部屋の中には数人の人がいたが、皆疲労の色が濃い。

中でも部屋の主らしき位置の机に座っている男性からは、どす黒いオーラが見えるかのような状態だ。

にも係わらず、その机の上には書類が山のように積まれている。

(ブラック企業の、社畜・・・?)

机にかじりついて仕事をしているようなので顔は見えないが、とりあえず常軌を逸していることは分かった。

「殿下、寝てください!」

そんな彼に向って、オリバーさんが声をかけた。

「オリバー、それが出来ないことはもう知っているだろう」

「ヒーラーを見つけました。とにかく寝室へ行きましょう!」

オリバーさんは社畜状態だった彼の腕も掴んで、また移動を始めた。

私は訳が分からないまま、引きずられ続ける。

そうして次に連れてこられた部屋は、これまた豪華な部屋だった。

部屋の奥の中央には天蓋付きの巨大なベッドが置いてある。

オリバーさんはそのベッドに男性を放り込むと私に言った。

「御覧の通り、この人は限界を超えています。眠らせてください。」

「わ、わかりました。」

「おい、オリバー。この者がヒーラーか?」

「そうですよ、殿下。早く横になってください」

オリバーさんの言葉に、殿下と呼ばれた彼は大人しく従うようだ。

私は再び仕事モードをオンにして、施術しやすい位置に横になってもらうようお願いする。

さあ、仕事だ。そう思うと自然と口角が上がる。

ここまで疲れた人の施術をするのは初めてだ。

いったい、どんな足をしているのか、ワクワクしてきた。

「俺の名はアルバート・デ・ロス・シュトライゼンだ。そなたの名は?」

社畜状態だった彼はアルバートというらしい。

初めて見たその瞳は、タンザナイトのような美しいバイオレットブルーだった。

「はい。本日担当させていただきます、私はマリナ・ナカノと申します。特にお疲れが気になる所はございますか?」

「全身、何もかもだ。よろしく頼む。」

「かしこまりました。よろしくお願いいたします。」

そう言葉を交わして、私は施術を始めた。

お読みいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ