2-3 剣の8
そうして始まったお茶会の話題は、恋バナへと移っていった。
女性だけの集まりではありがちな展開だ。
「アルバート殿下の思い人は、マリナ様なのでしょう?」
思わず紅茶を噴き出しそうになるのを、ギリギリでこらえる。
「いや、えっと・・・その・・・。」
動揺する私を見て、シャルロット様はクスクスと笑う。
「まあ、やっぱり!」
少し悔しくなった私も反撃に出る。
「そういうシャルロット様はいかがなんですか?思ってらっしゃる方がいると伺いましたが。」
そう聞くと、シャルロット様は頬を染め、とびきり優しい笑顔になる。
「ええ。そうですの。でも、悩んでいるのですわ。おそらくはマリナ様と同じことで。」
「私と同じ、ですか?」
私は首をかしげる。
「身分の差、ですわ。」
そう言って、シャルロット様はため息をついた。
「サヴォイア男爵家のご長男で、お名前はフェリクス様とおっしゃるの。夜会で何度かお会いしているうちに、互いに思いあうようになったのですけれど、フェル様は男爵家を継がれる方。公爵家の私が嫁ぐことを父は許してくださらなくて・・・。」
なるほど、確かに公爵家のご令嬢が男爵家に嫁ぐというのは、反対されるかもしれない。
「父は、私を王太子妃にしようとしていました。その為の教育も受けさせてきたので、いまさら男爵家へ嫁いで苦労をさせたくないと言っていますわ。」
男爵家へ嫁げば、公爵家にいるときと同じ生活はできないだろう。
それでも好きであれば、やはりずっと一緒にいたいと思うようである。
「マリナ様はいかがですの?」
「私は・・・。確かに、アルバート殿下からプロポーズはされましたが、お断りしました。でも、殿下は『諦めない』とおっしゃっています。」
「まあ!殿下は情熱的な方だったのですね。マリナ様のお気持ちは?」
シャルロット様はぐいぐい突っ込んでくる。
「・・・好き・・・です。でも、庶民である私が王太子妃になんてなれません・・・。」
「何故ですの?」
私が俯きつつも本音を話せば、シャルロット様はさらに疑問を投げかけてくる。
「何故って、だって、まず周りの方々が認めないでしょう。誰にも祝福されない結婚なんて嫌です。それに、私は王太子妃がどんなものなのか知りません。だから、私に務まるのかどうかすら判断できないんです。」
言葉にすることで、だんだんと自分の心の中が整理されていく気がする。
そうだ。
私は誰にも祝福されないことが一番嫌なんだ。
「それなら、私に協力させてくださいませんか?」
「え?」
驚いて顔を上げると、シャルロット様が私の方をまっすぐに見て微笑んでいた。
「私はマリナ様がアルバート殿下とご結婚なさることになれば、祝福しますわ。これから一緒に少しずつ、そういった方を増やしていきましょう?そして、私がこれまで受けてきた王太子妃になるための教育の内容もお教えしますわ。そうしたら、マリナ様の不安は無くなるのではなくて?」
「で、でも、そんなにシャルロット様に甘えてしまって良いのでしょうか?」
「あら。私たちはお友達になったのでしょう?お友達を応援するのは当たり前のことですわ。ですから、マリナ様も私とフェル様のことを応援してくださいませね。」
そう言ってシャルロット様はウインクしてくれる。
まるで天使か女神のようだ。
「そうそう。私の事は、どうぞ『シャル』と呼んでくださいませ。」
「なら、私の事も『マリナ』と呼んでください。」
「これからもよろしくお願いしますね、マリナ。」
「こちらこそよろしく、シャル!」
こうして私たちはすっかり仲良くなったのだった。
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