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2-2 杯の3

それからのアルバート殿下も甘かった。

少しでも暇ができると私に会いに来る。

そして、やはり距離が近い。

知らない人はいないにしても、オリバーさんやアニエスさん、エリクさんとディオンさんがいるのに、私のそばへとやってくる。

さすがに、くっついたり触れたりは(ほとんど)しないものの、まるで大型犬がかまってくれと主張しているかのように私のところへ度々来るのだ。

嫌だと断固拒否できれば良いのだが、いかんせん私も殿下の事が好きなのだ。

完全には断り切れず、その状態が続いていた。


そんなある日、殿下がこんな事を言い出した。

「マリナを不安にさせる前に言っておこう。ロレーヌ公爵の令嬢との縁談が来たが、断ったぞ。」

「はい?」

いやいや、断ったって何?

公爵家ってことは、結構有力な貴族じゃないの?

その機嫌を損ねるのは王族としてマズいのでは?

「公爵家からの話を断ったりして、大丈夫なんですか?」

「ああ。公爵令嬢本人は他に思い人がいるらしくて、むしろ感謝されたぞ。」

「でも、公爵様は王家と縁を繋ぎたかったんですよね?」

「いや?娘に嫌われずに済んだとホッとしていたぞ?」

「ソウデスカ・・・。」

何だかもう、脱力するしかない。

「その公爵令嬢の名がシャルロット・ロレーヌというのだが、マリナと会いたいらしく、近々手紙を送ると言っていたぞ。」

「え・・・?」

先日のテンプレ悪役令嬢グループの顔が頭をよぎる。

面倒な事にならなければ良いなと、私はため息をつくのだった。


後日。

殿下の言っていた通り、シャルロット様から手紙が届いた。

内容は、二人でお茶会をしないかというもの。

公爵令嬢と庶民という身分差もあるし、指定された日は休日である日曜日。

(やっぱ、断ったらいけないんだろうなぁ・・・。)

そう思った私は仕方なく、伺わせてもらう旨を書いて、公爵家へと届けてもらった。


そうして迎えたお茶会当日。

嬉しそうなアニエスさんに飾り立てられた私は、馬車で公爵家のお屋敷へと向かう。

シャルロット様とはどんな方なのかと、内心ドキドキしながらその門をくぐった。

しかし、それは考え過ぎだったらしい。

屋敷の入り口で出迎えてくれたシャルロット様は、おっとりとした笑顔の優しい方だった。

長く伸ばした金髪は、ゆるふわなウェーブがかかっており、緑色の瞳が可愛らしい。

「マリナ様。ようこそ我がロレーヌ家へ。私がシャルロットですわ。」

「マリナと申します。本日はお招きいただき、ありがとうございます。」

「さあ、こちらへどうぞ。」

そう言って案内された部屋は、どこか可愛らしい雰囲気のお部屋だった。

女性だけのお茶会と言うことで、ピンクの花柄の可愛い茶器が用意され、甘いお菓子も何種類も用意されていた。

二人そろって席に着くと、シャルロット様がウキウキと話し始めた。

「私、マリナ様にお会いできるのを楽しみにしてましたの。今日は来てくださって、本当に嬉しいわ。」

「シャルロット様にそう言っていただけるのは光栄ですが、何故私に?」

「それは、色々なお噂を聞いておりますもの!」

「噂・・・ですか?」

何だろう?

私は普通に仕事をしていただけだと思うのだけど・・・。

「まずは、ヒーラーとしてのお話ですわね。王立病院のマリナ様のお部屋は、入るだけでも癒されると評判ですのよ。」

「それは嬉しいです。ありがとうございます。」

私なりに力を入れて作り上げた部屋をほめられて嬉しくなる。

「ヒーラーとしてのマリナ様も、話しやすい、やわらかな雰囲気の方だと伺っていますわ。」

私自身もほめてもらい、なんだか照れ臭い。

「その上、先日の王家主催の夜会でのダンス!社交界には慣れてらっしゃらないとのことでしたのに、堂々としてらっしゃって、驚きましたのよ。」

「アルバート殿下とダンスの先生のご協力のおかげです。」

そこでシャルロット様が紅茶を一口飲んだので、それに合わせて私ものどを潤す。

すると、シャルロット様がニッコリとものすごく良い笑顔になった。

「王城の一般区域でのことも聞き及んでいますのよ。」

・・・?

何のことだろう?

私が首をかしげていると、少しいたずらっぽい微笑みでシャルロット様が言葉をつづける。

「ヴァンドーム侯爵家のご令嬢を言葉巧みに退散させたそうですわね?」

令嬢を退散させた。

つまりはテンプレ悪役令嬢グループとのいざこざの事だろうか?

「あの方は少々言葉の強い方で、苦手とされている方も多いんですのよ。そんなヴァンドーム侯爵令嬢に、勝つでもなく負けるでもなく、ただ退散させたと聞いて、ぜひマリナ様と仲良くさせていただきたいと思いましたの!」

クレーマー処理の能力を認めてもらえたらしい。

「あの程度のこと、客商売をしている方なら、誰でもできると思いますよ?」

「いいえ。中々できないことですわ!」

何にしても、私の事を認めてくれて、仲良くなりたいと言ってくれることは嬉しく思った。

「ありがとうございます。私もシャルロット様と仲良くさせていただきたいです。」

「嬉しいですわ。ぜひ!」

こうして、私はこの世界に来て始めて、同性の友達ができたのだった。




ありがとうございます。

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本日も19:00に番外編を投稿予定ですので、そちらもよろしくお願いします。

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