1-26 杯の2
仕事、マナーの講義、魔法の勉強と充実した日々を送っていたある日。
いつも通り自室へ戻るとアニエスさんが一通の白い封筒を銀のトレイに乗せて差し出してきた。
「アルバート殿下からお手紙をお預かりしております。」
基本的には王立病院と王城の往復しかしていない私としては、要件に心当たりはない。
お礼を言ってアニエスさんから封筒を受け取ると、早速あけて内容を確認してみた。
「お茶会のお誘いだ!」
そう。
先日のお茶会のお礼に、今度は殿下が私をもてなしてくれるというのだ。
私は早速アニエスさんに相談して、当日着るドレスやアクセサリー等を選んだ。
また、マナー講師のベルナール先生には、招待される側のお茶会マナーを教えてもらった。
そうして準備を整えつつ、ワクワクしながらお茶会の日を待った。
お茶会当日。
指定された部屋へ行くと、殿下が出迎えてくれた。
「よく来てくれたな、マリナ。さあ、こちらに座ってくれ。」
エスコートされて、私は席に着く。
殿下もこっそりアニエスさんにリサーチしてくれたらしく、私が最近気に入っているハーブティーと、甘いお菓子が何種類も用意されていた。お菓子の種類は多いが、どれも一口サイズなので、あれこれつまみつつ、おしゃべりを楽しんだ。
そうして場が落ち着いた頃、ふいに殿下が立ち上がり、私のそばへ来て跪いた。
・・・って、跪いた?!
ちょっと待って、何で王太子殿下が庶民の私に向かって跪いてるの?
軽くパニックを起こす私をよそに、殿下はゆっくりと話し始めた。
「マリナ。短い期間だがそなたと過ごしてきて、俺は度々驚かされたり楽しませてもらった。できるなら、これからもずっと俺のそばにいてほしい。俺の妃になってはくれないか?」
オレノキサキニナッテハクレナイカ?
え、これ何語?
どこか遠い国の言葉かな。
私は思わず現実逃避した。
でも、真剣な殿下の目を見ているうちに、だんだんと意味がわかってくる。
徐々に変化する私の表情を読み取って、殿下は再び口を開いた。
「もう一度言う。マリナ、俺の妃になってほしい。」
プ、プロポーズだ!!!
え、嘘、何、何がどうしてこうなった?!
完全に混乱した私は、正直な気持ちを言葉にするしかできなかった。
「身分が違い過ぎるので無理です!!!」
私はマナー講義で習った淑女らしさを忘れて、大声で叫んでしまった。
「身分?断る理由はそれだけか?俺を嫌っているわけではないのだな?」
「いや、殿下みたいな素敵な男性、好きにならない女性はいないと思います!」
「そうか。ならば俺は諦めないぞ。身分の問題なんて必ず解決して、マリナには俺の妃になってもらうからな。」
「ええええぇぇぇぇ?!!!」
衝撃だった。
初めてこの世界に来た時以上に混乱した。
片思いでそっと見ていられればそれで良いと思っていたのに、まさかのプロポーズ。
私の人生、これからどうなるのか。
正直、不安しか感じられなかった。
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本日19:00に、番外編を投稿します。
コチラ→https://ncode.syosetu.com/n3104gs/
このプロポーズに至るまでのアル殿下視点のお話になります。
よろしければこちらもお読みいただけると幸いです。