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1-25 杖の5

次の休日。

私は王城内にある図書室へと向かっていた。

先日アルバート殿下から魔法を教わったので、もう少し勉強してみたいと思ったのだ。

図書室は王城の一般区域にあるので、様々な人たちが行き交っていた。

「あらマリナさんではなくて?ごきげんよう。」

声をかけられ振り返ると、そこには先日の夜会で私に嫌味を言ってきた令嬢達がいた。

みんなそろって、私の方を見ながらクスクスと笑っている。

「ごきげんよう。」

とりあえず、挨拶されたので挨拶を返す。

「まだ王城内にいらしたのね。恥ずかしさのあまり、もう出ていかれたのではと心配してましたのよ。」

リーダー令嬢が話を始める。

どうやら彼女たちは夜会での私の行動を泣いたのだと勘違いしているらしく、自分たちの方が優位だと信じて疑っていないようだ。

「残念ながら、私には帰るあてがありませんので。」

私はと言えば、何もわかっていない風を装って、ニッコリ笑って答える。

そんな私の様子に少し眉をひそめながらも、令嬢たちは話を続ける。

「偶然ヒーラーだったからアルバート殿下が保護してくださったのでしょう?そうでなければ、どうなっていたかわかりませんわね。おかわいそうに。」

「ええ。私も幸運だったと思います。保護してくださっている殿下や皆様には、深く感謝しております。」

天然のふりをしながら、のらりくらりと令嬢たちの嫌味をかわす。

令嬢たちは私が思っていた反応をしないので、少しずつ苛立ち始めているようだ。

「早くあてを見つけて、殿下のおそばを離れたらいかが?見苦しいですわよ。」

「私もそう提案したのですが、警備の問題で許可いただけなかったんですよ。」

けろりと答えたが、これは真実なので仕方ない。

「では、私は用事がありますので、これで。」

そう言って立ち去ろうとすると、リーダー令嬢が私の腕を掴んできた。

とっさに前に出ようとするエリクさんとディオンさんに、待つように合図する。

「あなた、平民のくせに当たり前のような顔をして殿下の隣にいるなんて、目障りなのよ!」

リーダー令嬢が声を荒げ始めた。

「つまり、あなたも殿下の隣にいたいという事でしょうか?」

私がそう確認すると、リーダー令嬢は一瞬黙ってしまった。

「なるほど、あなたもヒーラーになりたいのですね!」

リーダー令嬢が黙った一瞬を見逃さず、私は大きく明るい声を出す。

「ご安心ください。私が責任をもって指導させていただきます!少々スパルタ気味になってしまって、指の骨が折れたりするかもしれませんが、それでも立派なヒーラーにお育てしますよ!」

今度は熱血教師のふりをしつつ、私の方がリーダー令嬢につめよっていく。

こんな反撃は予想外だったのか、令嬢たちは後ずさり始める。

「そうと決まれば、善は急げです!早速練習にとりかかりましょう!!」

そう熱く語って、リーダー令嬢の腕をとる。

すると、リーダー令嬢は私の手を振り払った。

「け、結構ですわ!私たち、これで失礼します!」

そう捨て台詞を吐いて、令嬢たちは去っていった。

「気が変わられましたら、いつでもお声掛けくださいね!」

そんな彼女たちの背中に、追い打ちの一言を投げかけておいた。


考えてみてほしい。

職場の上司やクラスの担任の先生が、一人だけずば抜けて熱血な状態を。

たいていの人は正直、関わりたくないと思い、愛想笑いでそっと距離を置くはずだ。

私が令嬢たちに対してやったのは、その応用である。


そんなひと悶着を、実はアルバート殿下がオリバーさんと共に目撃していたとは、この時の私は気づいていなかった。


やれやれと一つ息をついたあと、私はエリクさんとディオンさんに向き直る。

「待ってくださって、ありがとうございました。さ、行きましょう。」

「本当によろしかったのですか?彼女たちを罰することも出来たはずですが。」

「あの程度の嫌味くらい何ともありません。実害が出るような嫌がらせをしてきたら、また考えましょう。」

そう言って、図書室へ向かって歩き始めた。


図書室には司書さんのような役割の人がいたので、魔法の基礎の本の場所を聞いて、一番簡単そうな本を開いてみた。

そこには、先日アルバート殿下から教わった内容から、初歩の魔法の呪文が記載されていた。

私はその本を借りて勉強することに決め、他にも面白そうな本は無いかと本棚の間を歩き回った。

さすがは王城の図書室だけあって、ものすごい種類の本が置いてある。

ヒーラーについて書かれた本も見つけたので、開いてみる。

ヒーラーとはどんな職業なのか。

これまでヒーラーの人たちがどのように国に貢献したのか。

ヒーラーの歴史等が書かれていた。

また、魔法を応用したヒーリングの方法が書かれており、この本も借りてじっくり読もうと決める。

あまりたくさん借りても読み切れないので、とりあえずその二冊の貸し出し手続きをして、自室へ戻ることにした。


ありがとうございました。

次話でいよいよアル殿下がプロポーズします!

そんな殿下を応援してくださる方は、下の「☆☆☆☆☆」をポチっとして評価をお願いします。

また、ブックマーク登録もよろしくお願いします。

次話は明日の昼12:00に投稿します。

ぜひお読みください!

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