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1-20 杯の9

連続投稿祭り 三日目の一本目です。

お茶会当日。

アニエスさんや侍女さんたちの協力もあって、準備はスムーズに進んでいた。

茶器は、花柄はお色気の意味があるとの侍女さんの助言で、シンプルな無地の陶器の物に。

茶葉とお菓子は、やはり侍女さんにアルバート殿下のお気に入りをリサーチして、それを用意した。

部屋についてはエリクさんとディオンさんにも相談して、警備しやすい部屋にしてもらった。

もちろん、初めてのお給金で買ったプレゼントも用意してある。

さあ、後は殿下の到着を待つばかり。

楽しんでもらえるだろうかという期待と不安でドキドキしてきた。

何となく座る気になれずソワソワしていると、ノックの音が響いた。

アニエスさんが扉を開けてくれて、アルバート殿下が部屋に入ってくる。

「アルバート殿下。本日は私のお茶会にお越しくださり、ありがとうございます。」

マナー講義で覚えた淑女の礼で殿下を出迎える。

「招待してくれて嬉しかった。今日はゆっくり話そう。」

殿下は柔らかく微笑んでそう言ってくれた。

相変わらず破壊力抜群の微笑みだが、だてに接客業をやっているわけではない。

私もそろそろポーカーフェイスで乗り切るくらいは出来るようになってきた。

心の中ではもう一人の私が殿下の素敵さにのたうち回っているけど、気づかなかったことにする。

「侍女の皆さんから殿下がお好きだというものを聞いて用意したんです。どうぞ。」

そう言って殿下を席へと案内する。

優秀な侍女さんがちょうどよい感じで用意してくれた紅茶の入ったポットを持ち上げ、ティーカップに注ぐ。

ふわりと紅茶の香りが広がり、心地よい。

淹れたての紅茶を殿下の前へ置いた。

殿下はそれを一口飲むと、また微笑んでくれた。

「ああ。確かに俺が好きな紅茶だ。心遣い、ありがとう。」

どうやら気に入ってもらえたようだ。

色々考えて準備した身としては、ホッと胸をなでおろした。

「実は今日は、先日いただいたワンピースのお礼がしたくてお招きしたんです。」

そう切り出してプレゼントを手に取る。

「素敵なお洋服を、ありがとうございました。こちら、殿下の健康をお祈りして用意しました。気に入っていただけると良いのですが・・・。」

そう言って、プレゼントの箱を殿下へと差し出した。

日本人的には、ものすごく謙遜(けんそん)したい。

つまらないものですが、とかとか!

でも、日本では当たり前だった謙遜も、この国ではあまり良くないらしいことを講義で学んだので、ぐっとこらえる。

殿下は驚いたような表情をして、箱を受け取ってくれた。

「ありがとう。開けても良いか?」

「はい。もちろんです。」

殿下はていねいに箱を開けて、中身を取り出した。

豪華な宝石を見飽きているだろう殿下が、たいして高価でもない守り石を見てどんな反応をするのか不安で、恐る恐るその表情をうかがう。

すると、そこには守り石を愛おしそうに見つめる殿下がいた。

そんな表情を見て、私の心臓がドキドキと早鐘を打ち始める。

「俺の健康を、マリナが祈ってくれるのか。嬉しく思う。ありがとう。」

「い、いえ・・・。喜んでいただけて、私も嬉しいです。」

私の意志とは関係なく、頬が緩んでいく。

よかった。本当によかった。

殿下は、守り石の付いたペンダントを早速身に着けてくれる。

「大切にする。」

「はい。ありがとうございます。」

その後は、お茶とお菓子、そして他愛のないおしゃべりを楽しんだ。

しかしお忙しい殿下をいつまでも引き留めるわけにもいかないので、ほどほどのところでお開きにした。

こうして、私の初めてのお茶会は、無事に幕を下ろしたのだった。



ありがとうございました。

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連続投稿祭りの詳細は、12/24の活動報告をご覧ください。

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