1-2 杯のエース
あまりの眩しさに思わず目をつぶり、次に目を開けた時には、景色が変わっていた。
たった今まで、夜の公園にいたはずなのに、目の前に広がっているのは・・・
「ヨーロッパとかの、お城・・・?」
私が立っているのは回廊のような場所で、洋風の彫像などが品よく飾られている。
凝った飾りに装飾された窓の向こうには、美しい芝生の庭が広がっている。
何故か太陽が高い位置にあり、とても明るい。
上を見上げればシャンデリアが飾られ、天井には天使などが描かれていて、美しい。
以前テレビで見た、ヴェルサイユ宮殿に似ている気がする。
「え・・・と・・・」
あまりのことに、脳の処理が追い付かない。
いったいどうして自分はここにいるのか。
いや、その前にここはどこだというのか。
「何者だ!」
突然、男性の怒鳴り声が聞こえ、私はビクン!とする。
ちょっと待て。もしかしてもしかしなくても、これは不法侵入なのでは・・・?
反射的に私は両手を上げて叫ぶ。
「すみません!ごめんなさい!わざとじゃありません!」
先ほど怒鳴ってきた男性は、これまたヨーロッパにいそうな騎士のような出で立ちだ。
私の態度と言葉に、逃げるつもりはないと伝わったのか、騎士は歩いてこちらへ近づいてくる。
しかしその眼は、とっても私を疑っていた。
「何者だ?何故ここにいる?」
「あの、えっと、私の名前は、マリナ・ナカノといいます。何故ここにいるのかは、私にもわかりません。それ以前に、ここはどこなのでしょうか?」
まわりの状況から、西洋風にファーストネームを先に名乗り、騎士に尋ねる。
すると騎士は疑いの目はそのままだが、私のことを迷子だと判断したようだった。
「ここは王族の館だ。迷い込んだだけだとしても、ここにいる以上、簡単には帰らせてやれない。私についてくるように。」
そう命令して、歩き出した。
私はと言えば、ついていくよりない。
途中、私を先導する騎士と同じ格好をした男性が数人、見張りのように立っている前を通ったが、みんな私のことを疑いの目で見てきた。
やがて、もといた館を抜け、別の建物へと移動した後、ある部屋へと着いた。
・・・うん、ここって牢屋だよね。
部屋の中はそこそこ綺麗なものの、扉の一部には部屋の中が覗けるよう鉄格子が付いている。
部屋の中には質素なベッド、机、椅子が置いてある。
「ここで待て。」
そう騎士に言われて、渋々牢の中へ入る。
だって、彼らからしたら、私は不法侵入の犯罪者だ。
扉が閉められ、鍵がかけられた。
「帰りたい・・・」
一人になった私は、そう呟いてベッドに腰かけた。
ありがとうございました。