1-16 星
連続投稿祭り 二日目の二本目です。
そうして迎えた日曜日。
森の中を歩くからと動きやすいワンピースと靴に着替えた私は、殿下とともに馬車へと乗り込んだ。
エリクさんとディオンさんは馬にまたがり、馬車の周りで警護をしてくれる。
殿下は王太子だからか、宮廷マナーは完ぺきなのではないだろうか。
一緒にいると自然にエスコートしてくれる。
そもそも男性に対して免疫のない私は、そのたびにドギマギしてしまうのだが許してほしい。
マナーの講義は受けているが、いつか自然にふるまえるようになるのだろうか。
そんなことを考えていると、馬車が動き始めた。
「仕事の方はどうだ?」
「はい。先日街で買っていただいたものも活躍しています。王立病院のスタッフの方たちからも、部屋の雰囲気がさらに良くなったと好評です。」
「それは良かった。」
まだここでの仕事は始まったばかりなので、お客様は全員ご新規様だ。
スタッフが私一人なので、中々リピーターの人を受けられるだけの余裕が無いのだ。
その為、王立病院のスタッフの人たちに感想を聞いたのだが、みんな良い反応だった。
今後も何か改善をしたら意見を聞くつもりだ。
私は良いと思っても、この世界の人たちに受け入れられなければ意味がない。
「殿下は、お仕事の方は大丈夫なのですか?」
「問題ない。昨日のうちにほとんど片付けてきた。」
さすがは王太子殿下。
仕事の能力も一流らしい。
「そうでなければ、そなたとの時間を楽しめないだろう?」
少しいたずらっぽい笑顔でそう言われてしまった。
「そ、そうですか・・・。」
対する私は、かろうじて返事はしたものの、ときめき過ぎて死ぬかと思った。
(アルバート殿下が素敵すぎる!!!)
脳内の私は大暴れだ。
それを悟られないように必死で平静を装おうと頑張った。
「ところで、音が人を癒すというのは、どういうことなのだ?」
仕事に関する話を振られた私は少しホッとしつつ、殿下に1/fゆらぎについて解説した。
その解説がちょうど終わるころ、馬車は森の中の川へと到着した。
「うわあ・・・!綺麗!」
さほど川幅は広くないが、流れもゆったりしていて水も澄んでいる。
木漏れ日が心地よく、ときおり小鳥のさえずりが聞こえてくる。
最高の環境!!
早速私は川に近づき、せせらぎが心地よく聞こえるポイントを探す。
私的に納得できるポイントを見つけると、記録用の魔法道具をセットして、録音を開始した。
余計な音が入らないように、そっと魔法道具から離れ、殿下のもとへ戻る。
すると、木陰に早くもピクニックの準備がされていた。
「さあ、お茶にしよう。」
殿下のエスコートを受けて、草の上に敷かれた布の上に腰を下ろす。
殿下付きらしい侍女さんが淹れてくれた紅茶を受け取り、一息つく。
殿下は目を閉じて、自然の音に耳を澄ませているようだ。
「ああ、確かに心が落ち着くな。こんなに心地良いとは知らなかった。」
しばしの間、互いに紅茶やお菓子をつまみつつ、自然の音に耳を傾けた。
十分に堪能してから、私は殿下に声をかけてみる。
「あの、殿下。聞いてもよろしいでしょうか。」
「どうした?」
「魔法の使い方なのですが・・・」
「ああ。俺が教える約束だったな。」
そう言って殿下は私の方へ体を向けた。
「魔力の流れは感じられるか?」
「いえ、よくわかりません。」
正直に答える。
「では、そこからだな。」
そういって、殿下は私の方へ手のひらをかざした。
「俺の魔力をマリナへ流す。目を閉じて集中してみてくれ。」
言われたとおりに目を閉じる。
すると、胸のあたりから何か温かい物が体に流れていく感じがした。
温泉にでもつかったかのような心地良さだ。
「どうだ?わかるか?」
「はい。温かくて心地良いです。」
そう答えて、そっと目を開ける。
「これが魔力の流れだ。次は自分の魔力を感じて、それを手のひらに集める練習をする。」
言われて、私は自分の手のひらを見つめる。
(えっと・・・自分の魔力ってこれかな?)
分からないながらも、手のひらにパワーが集まるイメージをする。
すると私の手がやわらかい光に包まれた。
「上手いぞ。あとは呪文を唱えつつ、魔法が発動するようイメージすれば良い。試しに『ライト』と唱えて灯りをつけてみろ。」
「ライト。」
言われたとおりに呪文を唱えて、光の玉が出現するイメージをする。
すると、ポンっと本当に光の玉が出現して、私の手のひらの上に浮かんだ。
「すごい!本当に出来ました!」
嬉しくて笑顔で殿下の方を見る。
「効果の強弱は術者のイメージ力次第で変わる。それと持続時間は術者の魔力量によって変わるから、覚えておくと良い。」
「わかりました。」
「とはいえ、細かくコントロールできるのは一握りの才能ある者だけだ。だから一般的には魔法道具に頼る者が多い。マリナもゆっくり練習すると良い。」
「はい。ありがとうございます!」
当たり前だが、生まれて初めて使った魔法だ。
テンション上がってしまったのも仕方ないだろう。
その後、魔法道具にきちんと録音できているか確認して、王城へと戻った。
ありがとうございました。
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連続投稿祭りの詳細は、12/24の活動報告をご覧ください。