1-15 杯のクイーン
連続投稿祭り 二日目の一本目です。
翌日。
王立病院の私の部屋に出勤した私は、部屋を見渡しながら考えていた。
先日購入してきた置物や絵も飾ったし、アロマも焚いている。
灯りの調節も出来るようになった。
だいぶサロンらしくなってきたように思う。
「あとは、BGMね。」
そうなのだ。
今は、部屋の外の音がかすかに聞こえるだけで、何の音楽も流れていない。
外出すれば常にどこからか音楽が聞こえていた日本での生活を思えば、少し違和感がある。
録音のための魔法道具は購入してあるので、あとはどんな音を流すかを決めなければならない。
この世界の雰囲気的に、クラシック音楽は存在しそうだ。
しかし、そうすると大勢の人の協力が必要になる。
ピアノのみの音楽にするとしても、弾ける人の心当たりなどない。
「うん、やっぱりここは、自然音でいこう!」
自然の音。
たとえば川のせせらぎや木々のざわめき、海の波の音などの自然音には、1/fゆらぎというものがある。
これは予測できない音のゆらぎのことで、これがあるととてもリラックスできるものだ。
中でも私のお気に入りは川のせせらぎに小鳥のさえずりが入ったもの。
次の日曜日には、これを録音できるところに出かけてみよう!と決め、仕事を始めた。
「エリクさん、ディオンさん。王城の近くに川はありませんか?」
その日の帰りにさっそく二人にリサーチする。
二人はまた不思議そうな顔をするものの、教えてくれた。
「川、ですか・・・。そうですね。街を出てすぐの森の中に流れていますが、何かございましたか?」
「日曜日に連れて行ってもらえませんか?」
「それは、アルバート殿下のお許しが出るかどうか・・・」
「私からお願いしてみます!」
そうして王城に戻った私は、アニエスさんに殿下にお会いできないかと伝言を伝えてもらったのだった。
すぐに執務室に行っても良いと返事をもらえた私は、早速殿下のもとへ向かう。
執務室を訪ねると、殿下が快く迎えてくれた。
「俺に話があると聞いたが、どうした?」
「実は、日曜日に街の外に流れている川へ行きたいんです。その許可をいただけないかと。」
私の言葉を聞いて、殿下は難しい顔になった。
「街の外か・・・。何故川へ行きたいんだ?」
「川のせせらぎや小鳥のさえずりには、人を癒す力があるんです。その音を魔法道具で記録したいと思っています。」
説明すると、殿下は納得してくれたようだ。
「なるほどな。オリバー、スケジュールを調整してくれ。日曜は休むことにする。」
「やれやれ。そうおっしゃると思いましたよ。わかりました。調整しておきます。」
オリバーさんはあきれ顔だ。
「え、もしかして殿下もいらしてくださるのですか?」
「ああ。俺が一緒にいれば、マリナを危険な目には合わせないと約束しよう。それに、人を癒す音というものに興味がある。」
ニコニコと機嫌よさそうに殿下が言う。
「でも、記録している最中は、特にやることもないし、暇ですよ?」
「なら、軽食を用意させよう。ピクニックだな。」
ピクニック!
何だかウキウキする言葉に、私の目も輝いた。
「それは素敵ですね!楽しみです!」
こうして、次の日曜日も殿下とエリクさんとディオンさんと四人で出かけることとなった。
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連続投稿祭りの詳細は、12/24の活動報告をご覧ください。