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1-12 女帝

連続投稿祭り 一日目の三本目です。

普段は王城から王立病院まで馬車で移動してしまうので、街は窓からちらりとしか見ることはできない。

今日は街の入り口近くで馬車を降りて、そこからは徒歩で移動することになった。

さすがは城下町だけあって、活気に満ちている。

私はワクワクと目を輝かせて色々な店を見て回った。

イケメン三人に囲まれた私への視線も感じたが、気づかなかったふりをする。

そのうち、特に見たかった雑貨屋を見つける。

「あのお店に入ってみても良いですか?」

「ああ。かまわない。」

殿下の了承が得られたので、早速お店に入ってみる。

「わあ!素敵・・・!」

中は、ナチュラルで可愛い雰囲気だった。

私は品物をあれこれ見て回る。

テーブルの上にちょこんと飾れるような可愛らしい置物。

部屋の壁に飾るのにちょうどよさそうな綺麗な絵。

私は持って来ていたメモ用紙とペンを取り出して、欲しいものを書きこんでいく。

「マリナ?何を書いているのだ?」

そんな私の手元を覗き込んで、殿下が声をかけてくる。

「王立病院の私の部屋に欲しいものをピックアップしているんです。あとでオリバーさんにお願いしようと思って。」

そうなのだ。

私はこの世界のお金は全く持っていない。

なので、必要なものをメモにまとめて、後でオリバーさんにお願いしようと思っているのだ。

オリバーさんの名を聞いて、何故か殿下が面白くなさそうな表情になる。

「そんな必要はない。俺が買うから、欲しいものがあるなら言ってほしい。」

「え、でも、経費にするんですよね?」

「書類上のことも俺が後でやっておくから、気にしなくて良い。」

うん、私としては、殿下のおごりでないなら良しとしよう。

どちらにしても王国のお金なのでただの気持ちの問題なのだが、経費か個人資産かは大きく違って感じる。

お互い様と言える関係が成立せずに一方的に甘えるだけの関係は嫌いなのだ。

経費ということであれば、お仕事を頑張ることで恩返しができるはずなので、遠慮なく頼らせてもらおう。

「では、これとこれをお願いできますか?」

私はメモに書いていた置物と絵を指し示す。

「ああ。わかった。」

殿下はあっさりと買ってくれたのだった。


次に訪れたのは魔法道具屋だ。

魔法が使えることを先ほど聞いたばかりなので、どんな道具があるのか興味津々で見て回る。

火をおこす道具や水を生み出す道具。

灯りを灯すためのものや、音や声の録音と再生ができる道具もあった。

そこで思い出す。

そういえば王立病院の私の部屋にある簡易キッチンに置いてあったな、と。

てっきり、水は私が出勤する前に汲み置いてくれていると思っていたし、火はコンロだと思っていたが、よくよく思い出せば、これらの魔法道具を使っていたと考える方が自然だ。

「こういう魔法道具って、私でも使えますか?」

「ああ。魔法は得意不得意が大きく異なるものだからな。苦手な者の為に魔法道具があるんだ。」

殿下に尋ねるとそう返事が返ってきた。

使えるなら、ぜひ欲しい。

「この灯りの道具は、灯りの強さも調整できますか?」

今度は店主らしきおじさんに聞いてみる。

「これは明るくするだけだ。こっちの物は、好みの明るさに調整できるよ。」

おじさんは別の道具を指し示してくれる。

日本の電灯と同じだ。

性能がそれぞれ違い、より良い品になると価格が上がる。

でも、明るさが調整できないと意味がない。

お客様が眠っている間は薄暗くして、それ以外では明るくしたいのだから。

「殿下、こちらの灯りの道具が必要なのですが、お願いできますか?」

「問題ない。値段のことは気にするな。」

私が少し遠慮がちにお願いすると、殿下はすぐに了承してくれる。

「あと、こちらの記録できる道具も欲しいです。」

「わかった。」

これで照明とBGM用の道具が手に入った。


そこまで買い物が終わったあたりで、お腹がすいてきた。

「少し休憩しよう。」

殿下のその言葉でお昼休憩をとることとなった。

「この店は、最近流行っているらしい。俺も初めてだが、入ってみないか?」

なんと、殿下は流行りのお店を調べていてくれたらしい。

「はい!ぜひ!」

私も笑顔で了承し、皆でカフェ風のお店に立ち寄った。

何故か私と殿下、エリクさんとディオンさんの二組に分かれて席に着く。

エリクさんたちは騎士なので、殿下と同じテーブルは畏れ多いとのことだった。

いや、それを言ったら私だって庶民だから殿下と同じテーブルは緊張するのですが。

しかし機嫌のよさそうな殿下をみると言い出すことも出来ず、そのまま食事となった。

この店の売りは焼き立てのパンらしく、そのパンで作ったサンドイッチを注文してみた。

食事マナーがまだまだ怪しい庶民としては、食べやすいしとっても美味しかった。

ニコニコとご機嫌でサンドイッチを頬張っていると、殿下と目が合った。

どういうわけか優し気な微笑みを浮かべて私を見ている。

ドキン!と心臓が跳ねると同時に、サンドイッチがのどに詰まりそうになった。

「この店のパンは評判通り、なかなか美味いな」

「は、はい・・・。とても美味しいです。」

殿下の食事する姿は、ラフな服装なのに気品がにじみ出ていて、すごく格好良かった。





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連続投稿祭りの詳細については、12/24の活動報告をご覧ください。

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