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30/39

30 若者ぶったはずなのに、一気に老けちゃいました

 評議会は急転直下の兆しを迎える。

 とんでもない先走りをしてしまったと、ヒラクルの背筋に冷や汗が浮かぶ。


「お……オミネリア様、そ、それはいったいどういうことなのですかな?」


 先を促すと、オミネリアは不思議そうな顔をして続けた。


「昨晩、スカイ殿は乳母のナニーナが作ったという、ニシンのパイをフロイランに差し入れてくれたそうじゃ。

 そしてフロイランのなかにあった、ナニーナとの確執を解いてくれたそうなんじゃ。

 私は執務があって、誕生パーティには遅れて参加したのだが、その時はスカイ殿はおらんかった。

 でも、フロイランは子供の頃のような笑顔を取り戻しておった。

 この私や妻がいくら取り除こうとしても、できなかった心のわだかまりを、スカイ殿はあっさり取ってみせたのだ」


 オミネリアは、感極まって立ち上がる。


「私は王位継承順などとというつまらぬものにこだわって、ずっと意地を張ってきた……!

 しかしスカイ殿は違った!

 スカイ殿は本来であれば、ラブライン様のご機嫌だけを伺っておればよいはずなのに……。

 王位継承順の2位である我が娘までにも、その大いなる心を示したのだ!

 私はスカイ殿の『おためし婚』には反対の立場であったが、それはとんでもない間違いであった!

 スカイ殿こそ、この国の王にもっとも相応しい人物である!

 今ここに、全面的に『おためし婚』に賛成しようっ!」


「おっ……おおおおおおーーーーーーーーーーっ!?!?」


 評議会はかつてないほどの驚嘆に包まれる。


 無理もない。国王と王位継承順の2位の家系というのは、対立する宿命にあった。

 それなのにスカイは、王室に脈々と受け継がれてきた内部抗争の歴史を、あっさりと終わらせてみせたのだ。


 これを偉業といわず、なんと言おう……!?


 国王は目を見張った。



 ――なっ、なんと……! 余の反対派の最大派閥である、オミネリア家が賛成するとは……!

 オミネリアは今まで一度たりとも、余の政策にはウンと言わなかったのに……!


 それを、こうもあっさりと……!?

 す……スカイ殿は、余が足元にも及ばぬほどの、深大なる王の器だというのか……!?



 評議会内に、兵士が駆け込んでくる。



「た、大変です! 昨晩、オミネリア様のお屋敷の庭に埋まっていた不審人物が、毒薬の入った瓶を持っておりました!

 尋問をしたところ、アギョ伯爵とウギョ伯爵から、フロイラン様の毒殺を命じられたと白状しました!」


「なっ……なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」


 権力者たちの視線は、一斉にヒラクルに集まる。


「ヒラクル殿、アギョ伯爵とウギョ伯爵といえば、ハイランダー一族の者ではないのか!?」


「それにそなたは先ほど、スカイ殿が毒殺の犯人だと申しておったな!?」


「しかしスカイ殿はオミネリア様を感服させるだけの活躍をし、アギョとウギョはオミネリア様の愛娘である、フロイラン様を狙った……! これは、どういうことなのだっ!?」


 針のむしろに串刺しになったカエルのように、脂汗が止まらなくなるヒラクル。

 両手をわたわたと振って言い訳した。


「えっ、えーっと、あのあのあの、その、えーっと。

 こここっ、これは、えーっと……どっ、ドッキリでしたぁーーーーーーーーーーーーっ!!

 さっ、最近この評議会はちょっと険悪な雰囲気でしたので、場を和ませようと思いましてぇ!!」


 中年をとっくに通り越しているヒラクルは、若者のようにおちゃらける。

 それは見ていて実に痛々しかった。


 その白けた雰囲気をすぐに感じ取ったヒラクルは、キリッとした族長の表情を作ると、


「アギョとウギョはおそらく、我が一族の期待の星であるスカイを妬み、今回のような浅はかな行為に及んだのでしょう!

 聞けばスカイの営む『運び屋スカイ』はアギョとウギョの担当する『ハイランダー運送』のシェアを奪っておったそうですからな!

 でもワシは常日頃からアギョとウギョには言っておったのです!

 同じ一族である以上、つまらぬ足の引っ張り合いなどせず、正々堂々としたビジネスで切磋琢磨するように、と!

 しかしアギョとウギョはワシの気持ちを無視し、凶行に及んだ……!

 王族の毒殺を企むなど不届き千万っ! よってふたりは『追放』といたします!

 フロイラン様の笑顔を取り戻したスカイはもちろん昇格で、『伯爵』にいたしました!

 うぇーいっ! やったぁーーーーっ! ぱちぱちぱちぃーーーーっ!!」


 若者ぶってはしゃぐオヤジキャラで、その場をなんとか乗り切る。


 その様は哀れとしか言いようがなく、全身は脂汗で滝に打たれたようにびっしょり。

 顔はやせこけ、黒々としていた髪には白髪が現れ、一気に10歳は老けて見えたという。


-------------------爵位一覧


大公

 ヒラクル


侯爵


伯爵

 ↑昇格:スカイ


子爵


男爵

 タランテラ


廃爵


追放

 ↓降格:アギョとウギョ

 フロッグ

 ブルース


-------------------

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― 新着の感想 ―
[良い点] 10年寿命が減りましたか!(ニヤリ) [気になる点] ホントに乗り切ったのこれ?(汗) さすがに無理がありすぎるかと思いますね?(汗) とりあえず切り捨てられたアギョウギョ このあとクズ…
[一言] さながら黒澤明監督の「乱」の一文字秀虎のように豹変したヒラクル、 そして国王様及び家臣一同 「わ、儂等は一体何を見とるんじゃ...」 と、「あ、ありのままを話すぜ...」と困惑している…
[一言] ……バッカじゃねえの?ヒラクルはさ。 まあ、いずれどん底に叩き落とすから覚悟しな。 ……フロイランとナニーナの確執を生ませた大馬鹿野郎には。
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