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異世界占い師  作者: 紅りんご
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第一座 今日のラッキーアイテムは『トラック』

あなたは星占いを信じますか?

 重い瞼をこじ開け、目を覚ます。階段を降りて一階で顔を洗う。覚醒した意識で最初に目にするのは食卓に並ぶ和食。鮭の塩焼きに卵焼き、ご飯とお味噌汁。朝からそこそこの量だと思うが、毎日の事なので慣れてしまった。


「おはよう、母さん。」


「おはよう、美琴。ご飯できてるわよ。」


「ん、いただきます。」


   居間で母が用意してくれた朝食を食べていると、起きてきた妹の美里が目の前に座った。薄く茶色に染めた髪、確か髪型はボブとかいうやつだった気がする。昔は仲がよかったが、中学3年生ともなると高校2年の兄はウザったいと思うらしく、最近はマトモな会話がない。

そんな美里は机の上のリモコンを取って、TVをつける。今は朝の7時、やっているのは情報番組だけだ。映ったのは春のグルメ特集とかいうコーナーだった。別に見る必要もないが、今は美里にチャンネル権があるので黙って朝食をかき込む。美里はオレと共に家を出るのを恥ずかしいと言って嫌がるので、しょうがなく俺は毎日美里より早く家を出ている。

   学校へ行く準備を終えると、番組は星占いのコーナーに差し掛かっていた。美里はまだ朝食を食べ終わっていないみたいだし、これだけ見てから行っても大丈夫だろう。

11位、10位、9位、8位、7位、6位、5位、4位、3位、2位。どんどん流れていくが、俺の蟹座はまだ出てこない。残るは12位と1位。先に12位、続けて1位が発表される。12位は獅子座、そして1位は蟹座だった。こういうものに御利益があるとかは思っていないが、1位になるのは何となく嬉しい。喜ぶ俺の耳元に読み上げるアナウンサーの声が届く。


「1位は蟹座のあなた。今日は運命が変わる出来事があるかも。ラッキーアイテムはトラック。蟹座のあなた、安全にはくれぐれも気をつけてくださいね。」


   ラッキーアイテムがトラック……? これほどラッキーと関係の無さそうなものはあるだろうか。それに最後の言葉、蟹座の人がトラックに轢かれる前提のセリフだった。運命が変わる日って間違いなく死じゃないか。こんなに嬉しくない1位は初めてかもしれない。母の行ってらっしゃいを背に、低いテンションで行ってきますと答えて家を出た。

   学校までは徒歩で30分。自転車を使うほどでもないから、こうして毎日歩いて登校している。それにしても、ラッキーアイテムがトラックか。学校までに通る交差点は3本。避けて通ってもいいが、星占いの為だけにそこまでする気はない。いつもより気をつければ充分だろう。

   そんなことを考えつつ、1本、2本と何事もないまま、レストランやビルが多く立ち並ぶ最後の交差点に差し掛かる。近くに小学校があるからか、小学生がちらほらいるのが見える。ここを乗り越えれば、学校まではまっすぐ行くだけだ。信号を待つ間もいつもより1歩下がって待っておく。目の前を通り過ぎる車を見ながらぼんやりしているうちに信号が青に変わった。ゆっくりと歩き出す俺とは反対に小学生たちは友達と駆け出して行く。案の定、何事も無く横断歩道を渡り終えることが出来た。

   やっぱり星占いなんて大したことなかったな、そんな事を考えていた時だった。近くから悲鳴が上がるのが聞こえたのは。

  声の上がった方を見ようとしたが、俺の首が回るよりも俺が目の前のレストランに叩きつけられる方が早かった。背中に激しい痛みが走る。思考が上手くまとまらない。一体何が起きたか分からない。起き上がれないまま、目を開く。頭に響く痛みで目を少ししか開けていられない。目に入ったのはナンバープレート、そして大きな鉄の塊。理解に時間がかかったがトラックで間違いない。頭が割れるように痛い、そして熱い。どれだけの血が流れ出ているのだろうか。間違いなく死ぬ、その感覚に身体が支配され、何も考えられなくなっていく。

 

「何が運命が変わるだよ。俺の運命、ここで終わりじゃねぇか。」


   ラッキーアイテムが呼び寄せた不幸に悪態をついたのを最後に俺は意識を失った。


星占い信じてみたくなりました?

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