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04話 俺と二つの山と住居と収入所

疲れた。兎に角其の一言に限る。

俺は結局、北に向かって歩くことにした。

何処か、歩き続けたら何時かは町に着くだろうという淡い期待を

抱いて。


「本当にごめんなさい・・・」


「もういいよ、其のことは」


 レティーナは先ほどからこの調子だ。

もし、彼女が頼りないと思うのなら、俺からレティーナのナビゲートを

断る権利はあるらしい。しかし、こんな見たことも無い世界でナビゲート

無しに生きれるとは思わん。なので仕方なくナビゲートを続けて貰っているのだ。


「あ! みてあそこ!」


「なんだよ」


 レティーナが指差すほうに視線を向けると町の入り口があった。

町の入り口にはゲートがあり、其の両脇に鎧を身に着けた兵士が携わっている。

ゲートの上には看板があり、大文字で『カサリタン王国』と書かれてあった。


「ようやくかよ・・・」


 正直、町に着くかどうか分からない中ずっと歩いていたのだ。

肉体的にも精神的にも、もうクタクタである。

そんな疲れきった体でゲートの前まで歩いた。


「おい! 其処のもの用件は何だ!」


 兵士の二人のうち一人が話しかけてきた。

この兵士はゲートの右側にいた方であり、俺たちに呼びかけると

同時にゲートの中央に出てくる。


「俺は旅の者だ。 ちょいと此処の町に寄ろうと思ってね」


「俺? まぁいい。 ならば身体検査を受けて貰おうではないか」


 兵士は俺の一人称に違和感を覚えたのか小声で呟く。

そういや、俺って見た目は美少女だったっけ?

憎しみの視線をレティーナに向けたが彼女にはその思いは伝わらず、

ドヤ顔で笑い返してきた。


後で絶対に絞めてやろう……


 俺がそう決意した瞬間でもあった。


 レティーナの方にやっていた視線を再度兵士に戻し問う。

身体検査とはいったい何をやるのか。答えは割りと簡単で、

普通に服の上から怪しいものを忍ばせていないか確認するだけのものだった。


「何だそんなことだったらほれ」


 兵士に体を近づける。

俺はこの世界に転生したばかりだし、怪しいものなど持っていない。

早く審査を通過して町へ行きたかった。


「では失礼するぞ」

 兵士は俺の体を服の上から触る。

特に怪しいものは見つからず俺たちは、町へ入ることが許可された。

因みに、兵士の手の動きは滅茶苦茶気持ち悪かった。やたらと胸部ばかり

調べてくるのだ。男に欲情されてうれしい男などいない。少なくとも

俺は嬉しくない。


「では、ゲートをお通りください。 貴方の旅がより良いものになることを」


 兵士はそういってゲートを開く。

何がより良い旅だよ。こちとら、お前のせいでテンション駄々下がりだわ。

 ゲートを通ると其処には美しい町並みが広がっていた。

町の真ん中に噴水があり、其の周りにはたくさんの種類豊富な花が咲き乱れ。


「綺麗だなぁ」


「そうね」


「そういえば、お前って検査受けた?」


 そうレティーナに尋ねて見たところどうやら天使族は人間の間では

神と同等の扱いを受けているため、検査などという相手を疑うようなことは無礼に値し、

その結果、天使族は検問に引っ掛からずに中へ入れるのだ。何それせこすぎる。


「お前もあれうけろよ!」


「あんな胸ばかり触る検査なんて嫌よ!」


 俺だって嫌だわ! と内心叫びつつ目の前を見る。

ようやく俺の異世界生活が始まるんだなと、期待と不安を抱かせつつ、俺はその町の

者たちの笑顔を目に焼き付けた。


 俺達は暫く街中を散策した後、ギルドに向かっていた。

レティーナ曰く、俺みたいな転生して間もない者はギルドへ行き小遣いを貰うのが

基本との事。


「つっても、ギルドって何処に在るんだ?」


「ギルドはこっちよ」


 どうやら、前半使い物にならなかったレティーナも町に来れば案外使えるらしい。

この町のことは知っているらしく、「ここは私の箱庭なのよ!」と威張っていた。

当の俺は内心こいつ大丈夫か? と思っていたがどうやら心配しすぎだったようで、すんなりとギルドに到着した。


「お前って案外使えるんだな」


「何よ! その上から目線は!」


 何かレティーナが色々言っているが無視することに決めた。

それにしても此処がギルドか。見た感じ結構規模が大きく、多くの冒険者がいるんだろうなぁと思う。やはりというところか。中から騒がしい男性客の声が漏れている。


「これでこそギルドだな!」


「早く入りなさいよ!」


 レティーナはまだ怒っているらしく当たりがすごい強い。

まぁ、そんな事は気にしないのだが。彼女に言われたとおり、

中へと足を踏み入れる。すると、中にいた客が全員俺たちのほうに視線を向けてきた。


「いらっしゃいませ~」


「本日はどういったご用件で?」


 前から物凄い一部が大きいお姉さんが話しかけてきた。

髪は栗色で、瞳は緑。睫は切れ長で、俺は少々見とれていた。


「あんた! 何見とれてんのよ! ちゃっちゃとしなさい」


「うっせーな。 そんな事言ってると、ナビゲートから外すぞ!」


 レティーナは「其れをいうのはずるいじゃない!」と文句を言ってきている。

俺たちの会話を聞いていたお姉さんは何か微笑ましそうに笑いながらこちらを見ていた。


「あ、これはすみません。 俺たちはギルドに入りたくてここに来ました」


「冒険者への登録でしょうか?」


「はい」


「こんな可愛らしいお譲ちゃんが冒険者に調味を持ってくれて私も嬉しいわ」


 少々、女の子扱いされるのは何とも言いがたい気持ちになる。

が、もういいやと思えてくる。せめて、声がもうちょっと厳つかったら、

まだ男で信用されてたものを。声まで高くて綺麗な女声だ。

今では俺自身本当に男なのか?と内心疑っており、後でその判定を見ようと思う。


「ではこちらにいらしてください」


 そう言って受付のほうまでお姉さんは歩いていく。

そこで書類をもらい、記入していくだけでいいのだとか。

ギルド内の何処のテーブルを使ってもいいと言われたので、隅の方にある

余り目だたない机に座った。


「えぇーと? 書くのは住所、氏名、性別か」


「ちょ。 あんたこれ見なさいよ」


 大笑いしながらレティーナが性別の記入欄に指を指す。

其処にはなんと女と書かれた綺麗な文字が。


「なん・・・だと?」


「あんた性別間違えられてるじゃない。 こいうの何だっけ? ネカマ?」


 首を傾げながら俺に哀れみの目を向けてくるレティーナ。

やめろ。 そんな目で俺を見ないでくれ。

しかし、俺はこの性別の欄を訂正するつもりはない。そこには俺のこの美少女の

姿を利用した念密な計画があったからだ。


「そういや、俺の名前って何?」


「そんなのあんたが決めたらいいじゃない」


「て、言われてもなぁ」


 名前を考えるっていうのが一番苦手なのである。

生前、不登校になる前は良く友人たちとゲームをしていたのだが

俺は彼らにネーミングセンスがないなのダサイだの色々言われてきた過去があるのだ。


「しかない、考えるだけ考えるか」


 此処で重要なのは、男でも女でもどちらでも使える名前にすること。

もし、名前を男よりにして、あれ?この子男の子なんじゃ?と受付のお姉さんに疑われた時点で俺の計画は水の泡だ。


かんだ、トーマス、テイ


 駄目だ。いい名前が思いつかない。

縋る様な思いでレティーナに名前のアドバイスを貰うことにした。


「なぁ、レティーナ。 ナビゲーターとして俺に名前のアドバイスをくれ!」


「はぁ? あんた、其れ本気で言ってる? ナビゲーターに名前のアドバイスを貰おうとするの、あんたが初めてよ」


 やれやれと言った表情をするレティーナ。

しかし、何だかんだ言いつつ、彼女は俺にアドバイスをくれるのだ。

少し考えた後、レティーナは思いついたというような表情を浮かべた。


「ならディニアってどう?」


「ディニア?」


「ラテン語で定められた運命って意味よ」


 成る程いいかもしれないな。

最悪、気に入った名前と出会えば其のつど改名したら言いだけの話しだし。


「じゃあ、ディニアと」


 これでようやく名前の欄が埋まったわけだが、最大の難関が

次の項目だ。住所。俺は何も無い大地に空から落ちてきて生まれたのだ。


「なぁ俺の住所って何処?」


「適当でいいんじゃない?」


「なら、何も無い大地っと」


 よしこれで完成だ。

出来上がった書類を受付のお姉さんへと差し出す。

俺の項目を目で確認したお姉さんが慈悲の涙を浮かべた目で

俺に言い放つ。


「ディニアちゃん?今までご両親がいなくて一人で彷徨っていたのね」


 そいいい俺を抱きしめるお姉さん。

住むところが無いのなら、ギルドの二階がホテルになっているらしく、空き部屋が有るから其処を使えばいいと。俺のことを思って優しいお姉さんだなと思うが、俺は大きい二つの山に顔を挟まれそれどころでは無かったのだ。

取りあえず、これで収入どころと住む場所はできた訳だし、これから本格的な異世界ライフを送れると思うと棟のドキドキが収まらなかった。

・・・・決してお姉さんに抱きしめられて照れているからではない。 決して。

最初、キリのいいところで書くのを終わったら文章量があまりにも少なかったので、

仕方なく続きを書いていたら結構多くなってしまいました笑

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