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02話 この日俺は世界を旅立った

「くそ! また負けた!」


 暗い部屋に一人。俺はギャルゲーをしていた。

妹が亡くなってから早二年。生きる気力もなく部屋にこもってひたすらゲームに没頭していた。勿論、自殺を決意したことは幾度とある。が、妹、稟の

『私の分まで生きて』という言葉がそれを阻止する。


「今日で三回忌か・・・」


 ふと、何となくカレンダーを見る。

今日は稟が亡くなった日。その日付を目にするだけでも心が痛む。


「もうこんな時間になったのか・・・」


 昨日の深夜からずっとゲームをしていた。

幾ら引きこもりとはいえ、ここまで長い時間プレイをしていたのは初めてだった。

今回のゲームはいつもと違いRPGではなくギャルゲー。

妹を攻略することを題材としたゲームであった。

 長時間、画面の中の彼女と真剣に向き合ったお陰か、後もう少しで

エンドロールが拝めそうだ。


「少し気晴らしにご飯でも買いに行くかな」


 一人事を呟き部屋を出る。

両親はまだ就寝中であり、俺はそのままばれない様に外へ出た。

 外へ出ると、すでに日が昇っており辺り一面明るかった。

俺は家の近所にあるコンビにへと行き今日の朝飯を調達する。


(今日のご飯はこのドリアかな)


 商品棚で一際存在を主張するこの商品。

こいつとは、俺が初めて引きこもりになった夜に出会った。

何となく買ってみたこのドリアだがチーズの蕩け具合、

それに加えその上に乗っているトマト、ホタテ、肉が

ちょうどいい具合にチーズと交わりドリア全体の旨さを加算するのだ。

俺は会計を済まし袋を二つ手にする。

家に帰宅したが両親はまだ寝ているみたいだった。


「よぉし。 俺のドリアちゃん今頂くからね!」


 引きこもりになってから独り言が特に増えた。

まぁ今まで、朝から夜まで稟と話していた俺だ。

一人になってもそのお喋りな性格は直らないのだろう。


「さて、シリアちゃんは今どうしているかなっと」

 

 出かける前に進めていたゲームに再び戻る。

ご飯を食べながらゲームと言うのはお行儀が悪いと言われるかも知れないが

この空間には俺一人しかいないのだ。何をしたって文句を言うものはいない。


「もう、お兄ちゃん! また何かしている途中にご飯食べて!」


「へ?」


 慌てて声がしたほうに視線を向ける。が其処に声の主はいなかった。

当たり前だ。稟が焼かれるその時まで、若しかしたらまだ生きているんじゃ

ないかと言う愚かな希望を抱き最後まで見届けたのだ。結果は予想していた

通りのものだったが。


「つかれてんのかな」


 我ながら幻聴を聴くなど相当疲労が溜まっているのだろう。

しかし、シエルちゃんを攻略するまでは休息は取れまいと

ギャルゲーを進めていく。そしてシエルちゃんと触れ合うこと数時間

やっとのことでエンドロールを拝むことができた。


「やったねお兄ちゃん!」


 その声はゲームの中ではなく俺の背後から聞こえてきた。

「稟!」と叫びつつ勢い良く振り返る。しかし其処に稟の

姿はない。


「全く。 よりによって何で今日に幻覚を見るかなぁ」


 そう言いつつ、先ほど店員から受け取った二つの袋。

ドリアが入っていたものと別の袋に目をやる。

 「なぁお兄ちゃん、もう駄目かもしれない」


 最初は最愛の妹の最後の言葉を叶えてあげようと、幾ら心が折れようとも

必死に今を生きようと決意していた。でも、一周忌。その時には俺の精神は原型を留めないほどに朽ち果てていた。だってさ、稟はもう過去の人だと思い知らされるんだぜ?

しかも、お前のことを忘れて日常に戻ってるやつも多数いる。いや、寧ろ日常に戻れない俺が異常なのか。


「なぁ稟。 お兄ちゃんな心に決めていた事があるんだ。 お前の死から二年。

其の二年我慢してみて無理だったら俺はお前に会いに行こうって」


 誰もいないはずの空間で一人俺は呟く。

そして、先ほどゲームをしていた時に使用していた椅子を部屋の中心に持ってくる。

両親はデザインに凝る性格だったため、天井の骨組みは丸見えであった。

そこに、袋から取り出したロープを巻きつける。そして垂れ下がった方に、

輪を作る。


「俺の身長からするとこのぐらいか?」


 其の輪に首を通したとき、自分の足がつかないように

高さを調節する。

 全ての準備が整った後、俺は机の引き出しから一枚の封筒を取り出す。

それには大きな文字で『遺書』と綴られてあった。

内容は両親や友人、俺がなるべく早く学校に来れるようにと

行動をしてくれていた担任の先生。其の人たちへ向けた感謝の文。

そして、最後には稟。彼女に向けた一文を最後に書いた。


「あばよ世界! 俺は妹のいない世界など断固拒否する!」


 大声で言いもって勇気を出し縄に首を通す。

そして足から椅子をどけ宙吊り状態になった。不思議と痛みや苦しみはない。

何故ならあの世で彼女が待っているから。

もう直ぐ彼女に会えると言う喜びで心は満たされていた。



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遺書の最後の一文にはこう書かれてあった。


『稟。 お前のあの言葉のお陰でこの二年生きることができた! 今までありがとう』と、所々滲んだ字で。 数時間後、彼の両親が彼を発見したのはまた別のお話。

まだまだ文章能力は乏しいですが、頑張って続けていきます!

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