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裏社会適合者   作者: 鈴白ぴの
1/1

命を捨てる。

あてんしょん!

・よろしくない表現あります

・語彙力ないです

・闇要素ありです

以上を踏まえてお読みください

___潮風の香り。

波打ち際の近くの、海食崖。

見下ろすと、高さは優に30mを超える。

確実に、死ねる高さ。

ここから落ちれば、地獄のような日々も終わる。

存在を否定され続け、除け者扱いされた私は消える。

...それでいい。

此処に生まれるべきではなかった私は、

排他されて当然なのだから。

目を閉じる。

息を吐く。

手に力を込める。

波打つ音に包まれる。

私は、1歩、前へ進み...!

???「おーい、そこのお嬢さん」

体が跳ねた。人の声がした。

恐る恐る振り返る。

そこには、黒髪の若い男性が立っていた。

???「おー、やっと気づいた。ずーっと呼んでたのに」

おどけた様子で手をひらひらとさせ。

こちらへ近づいたきた。

反射的に体が強張り、緑青色の瞳をまじまじと見た。

???「そんな緊張しなくたっていいよ。

君のしようとした'行為'については触れないし」

私「...何か、用ですか?」

???「用っていうか〜何してんのかな〜みたいな?」

私が睨みつけてもその男の人はへらへらしていた。

苛立ちが募る。この人は何がしたいのだろうか。

私「こんな崖に中学生が1人、なんて。

何をしようとしたかくらい分かりますよね?

さっきだってああ言ってたし...」

???「まぁね。分かるっちゃ分かるし、それに...」

男は目線を逸らし、少し悲しげな表情を見せた。

が、すぐに笑顔に代わり、こう続けた。

???「いや、まぁそれはよくてね。

君に、1つ提案があるんだよ」

私は眉をひそめた。提案なんて、怪しすぎる。

私「そんなものにのるとでも?」

???「まだ何も言ってないでしょうが。

よーく聞いとけよ。

お前は今。人生を捨てようとしたのだろう。

苦悩や、やるせない気持ち。

そういうのを抱えて。自殺を図ったんだろう。

そんなお前は、俺についてくれば。

人生をやり直せるぞ」

男は誇らしげに胸を張っている。

人生をやり直せるなんて決まり文句には騙されまい。

きっとドラッグか何かの類だろう。

私「お断りします。そんなものに頼りたくないです」

???「い、いや、怪しいもんじゃないんだって!

...ちょっとしか」

私「やっぱりちょっと怪しいんじゃないですか!

のるわけないですよ、そんな提案!!」

声を荒らげて否定の意思を主張する私と、

尚も平然と、毅然とした態度をとる男。

???「お前、裏社会って、知ってるか?」

私「裏社会...?耳にしたことは、少しだけ...」

裏社会とは、いわゆる海外でいうマフィアとか、

犯罪に手を染める者が生きていく界隈のことだ。

???「そうか。...俺たちは、その裏社会で生きてる。

ひっそりと、廃墟で暮らしてな。

そこには人生を捨てたやつらが山ほどいる。

虐待やいじめを受けた者。

薬物に手を染めた者。刑務所から脱獄した者。

お前より小さいガキんちょだっている。

理由は違えど、一緒に暮らしてんだ。

俺もそのうちの1人だよ。

お前も、その命を捨てるくらいなら、

俺らのところに来ねぇか? っつー取引だよ」

私「...私がついていって、あなたにメリットは?」

???「んなもんねぇけど?」

私「メリットもないのに誘うんですか!!

あなた絶対商売とか取引とか下手ですよね!!?」

???「えっ酷くない!??初対面だよねぇ!?」

いつの間にかヒートアップし、言い争いになる。

私「名前も知らない相手に敬意なんてないですよ!!」

???「じゃあ名前を言えばいいのか!!

俺は蒼空だ!! 'そう'って読む蒼に空!!」

私「わかりましたよ!!

はぁ...とりあえず落ち着きましょう...?」

蒼空「いや、始めたのお前だろ!

...とりあえず。これ以上の説明はしない。

万が一お前が自殺をやめた時に俺らのこと

べらべら喋られたら困るしな。

2つに1つ。どうするか、お前が今ここで選べ」

蒼空は手を差し出し、真剣な眼差しで私を見据えた。

(...生命的に死ぬか、社会的に死ぬか、ってこと...)

私にとってはあの家から、

あの学校から解放されるならどっちだって構わない。余生の希望を望むか、'終わり'を望むか。

私「...私は...。解放されるなら、なんでもいい」

蒼空「それは、イエスだ ととっていいのか?」

私はこくり、と頷いた。

すると、蒼空はほくそ笑んで、こう言った。

蒼空「んじゃあ、決まりだな。俺についてこい。

今の住処に案内するぜ」

すると蒼空はすたすたと歩き出してしまった。

私「ちょ、ちょっと...!」

追いつこうと足を動かした途端、蒼空が振り向いた。

蒼空「そーいやお前、名前は?

あ、偽名名乗ってもいいんだぞ。

あそこにいるやつは大半偽名だし、俺もそうだ」

名前...ずっと忌み嫌われた私の、名前。

思い出したくない。

思い出せないほど呼ばれていない、名前。

私「...紅葉、とでも名乗っておきます」

蒼空「くれは、か...。 厨二病っぽいな。俺もだけど」

私「ひ、人の名前に文句つけるなんて最低ですよ!?」

蒼空「まぁまぁいいじゃねぇかよ。そう怒んなって。

...あ、それともう1つ。敬語、禁止な。

うちではそういうルールなんだよ」

私「わ、わかった...」

私が頷くのを確認した蒼空は再び歩き始めた。

それを追いかける。

(死ぬ方を選択しない私は、弱虫だ。)

マイナスな言葉を喉奥に留めたまま、

蒼空の後に付いて行った。











___夏の始まり、春の終わり。

死を選ばずに、希望に縋った私。

日常に戻れない。今更後悔はない。

さようなら、私の人生。

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