ゆうたとおもちゃ
ゆうたは、3人兄弟のすえっこ。
ゆうたのおもちゃはルーベンカイザー。ソフトビニールでできている、宇宙からやってきた謎の生命体だ。
おにいさんのおもちゃはビュートルグラス。合金でできたロボット戦士だ。
おにいさんと遊ぶと、勝つのはいつもビュートルグラス。だって、おにいさんは戦車やロケットが使えるのに、ゆうたは小さな消しゴムの人形だけしか使えなかったんだもの。
それでも、ゆうたは楽しかった。いつも負けているけど、ルーベンカイザーが好きでした。小さいけれど、たくさんある消しゴムの人形が大好きでした。
おねえさんのとっておきは、アンジェリエッタ。
オレンジに輝く長い髪に、青いドレスを身にまとっています。アンジェリエッタの夕食会や舞踏会ではゆうたはいつも王子様の役。
男の子が、女の子の人形の相手役なんてはずかしいよね。だけどおねえさんは、アンジェリエッタにきちんとした身振り、やさしい話し方をさせて、ゆうたの相手をしてくれたから、だから、ゆうたはアンジェリエッタが好きでした。ほんとうに生きていたらすてきなのになと思っていました。
でも、今おにいさんは野球に夢中。おねえさんはブラスバンドでフルートを吹いているので、もうアンジェリエッタには見向きもしません。
ゆうたは、ひとりぼっちになってしまいました。
でも、おもちゃがあるからさみしくありません。
ゆうたは、おもちゃ箱のなかに王国を築きました。
そこでは、ビュートルグラスは歴戦の勇者。戦えば負けることを知らないが、戦うことを好まず、平和を愛するロボット軍団の隊長だ。
ルーベンカイザーは王国の守護者。王国をすみずみまで旅し、平和を乱すものがいないか監視する一匹狼の放浪者だ。
そして、アンジェリエッタは命の泉を守るうるわしき女王。王国のすべてのものを愛し、命とともに夢と希望を王国にもたらすすべてのものの母親だ。
そう、この3つのおもちゃをめぐる王国の物語があったから、ゆうたはひとりぼっちでもさみしくなかったんだ。