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バッドエンドストーリー  作者: トウイ小秋大福
2/2

轢かれてヘッドブレイク

なんとも運の悪い話です

赤い夕焼けに照らされた、古めかしいアスファルトを歩く、おじいさんとおばあさんがいた。

どちらも所々破れた服を着ており、背にはリュックサックをからっていた。

彼らの目の前にはうっすらとだが、確かに見える国の城壁があった。

「ようやく」

しわがれた声で喋り始めたのはおじいさんで、おばあさんはそれを黙って聞いていた。音は、カラスのバカにしたような鳴き声しかない。

「ようやく、こんな生活とはおさらばできる」

おじいさんは歩きながら今までのことを思い出す。


感染生物に怯えながら、住める国を探し、あまりにも当たり外れの激しい携帯食糧を食べて空腹を満たす毎日


それがついに終わりを迎える。

おじいさん達の向かっている国は漂流者達を迎えてくれる、このご時世では珍しい国だった。

「そうですねえ、でも今日はここまでにしましょう、日が暮れてくるわ」

おばあさんは立ち止まり、おじいさんの意見も訊かずにその場でテントを建て始めた。



時間はあまりかからず少し大きなテントが道の真ん中で建っていた。

平和だった昔ならありえないだろうが、ゾンビだらけの今ならばなんの違和感もないだろう。

おじいさんとおばあさんは、これで最後になるであろう携帯食糧を食べると、すぐに寝てしまった。




朝になった

晴れ晴れと輝かしい太陽に照らされている、潰れたテントがあった。

テントの半分にタイヤの痕があり、タイヤの痕には仲良く二つ並んだ大きな血痕が布に染み込んでいた。


昼間になっても、夜になっても、日付が変わっても、朝になっても、誰もテントからは出てこない。

どれだけ経っても、誰も出てこない。


しばらくして国のある方角から一台の青い車がやってきた。

その車の側面には、『ごみ収集車』と書かれ、その車の役割や乗っている人たちの役職を大きく誇示していた。

その車は半分潰れたテントの前に停まると、二人の男が出てきた。

二人とも青い作業着でどちらも三十代ぐらいだった。

一人がテントを開けて中を確認すると、嘔吐物を踏んだ時のような顔になり、

「さっさと回収するぞ、中はもうだめだ、二人いるがどっちも頭が潰れて、腐ってやがる」

そう吐き捨てると、作業に入り、終わるとさっさと帰っていった。



筆者は「違和感がない」と書いたが、これは「問題がない」という意味(わけ)ではない。

一応この世界にも車という物はある。

その車で旅をする漂流者も少なからずいるが、車がどこを通るか?

なにも難しくはない


答えは「道」だ


それでは、その「道」のど真ん中でテントを建てて動かなかったら?

当然轢かれるし、轢かれても文句も言えない



道の端にテントを建てていれば、生きて国に入れたものを、死体になった上、ごみ収集車でごみとして国に入るだなんて、なんとも皮肉で間抜けな話である。



なんとも惜しい、おじいさんとおばあさんの話だった。




真夜中のアスファルトを一台の大型トラックがエンジン音を出しながら走っていた。

ところどころ錆びているそのトラックは、壊れいてるのかライトがチカチカと中途半端に進む道を映していた。

「~~~♪」

運転手は、機嫌良さそうに鼻歌を歌いながら運転していた。

そして、国の城壁が見えてきた瞬間、車体に小さな振動が走った。

(?、なにか踏んだか?)

運転手は怪訝そうに眉をひそめたが、それだけだった。特に気にする様子もなく、

(踏まれたのはそいつの運が悪いせいだ、人だったとしても、俺は悪くねぇ)

そう考えながら運転を続けた。



やがて国の門につき、ある程度の手続きを終わらせると、世間話のような軽さで、さっきなにかを轢いてしまったと検問の人間に話した。

「っと、そろそろだな」

大きなシャッターのような門が開き、国の光がトラックのガラスを照らした。

運転手は検問との雑談をやめると真夜中にも関わらず明るい国の中に入っていった。


ガラガラと門が閉まっていく


国の外にあるのは、中とは対称的な真っ暗な闇だけだった




閲覧していただきありがとうございました

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