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糧となるため自らを産み堕とす。

 ネタバレが嫌な方は後書きを読まないことをオススメいたします。

 それは、街というには余りにも粗末で、廃棄所と言うにはあまりに慈愛に溢れている場所だった。

「お待ちください。」

 それはまるで、依存し合うみたいに互を求め続ける。そして依存し合うからこそ、依存されるからこそ自らを愛せる。

「何用で、私たちの住処に足を踏み入れるのです?」

 故に、ここは自愛に満ち溢れている。互を愛し、自らを愛することでしか渇望を満たせない弱者達の集い。

「魔女を、お前たちの仲間を連れてきた。」

 それは、私たちも例外ではなく。

「そして、我も呪師と呼ばれたものだ……。」

 例外があるなら、彼だ。

「なら、名乗ってはいただけませんか? 私がアセリア、魔王です。」

 影から躍り出た黒い人の形の影が語る。

「名乗るのは構わない、だが、彼女は上手くしゃべれないんだ。だから時間が必要だ。」

 酷なことを仰る。代わりに、御身が私を紹介すればいいというのに。しかし、その些細な意地悪ですら、それを意地悪と感じるこの心ですら御身が再び私に与えてくださった。だから、私はそれすらも幸福だと思ってしまう。クロノス様は私に四肢という自由を与えて、心に繋いだ最善という首輪で私を縛る。

「時間稼ぎをさせてもらおう。」

 そして、彼自身もその首輪に縛られているのだ。

「気付かれてしまいましたね? そこをどいて頂けませんか? そこの魔女を、魔王めを殺さねばなりません……。」

 だからこそ、彼自身も自由はなく。また、彼は自らの渇望を満たすことはできないだろう。

「それは困る……。そこの魔女は、魔王は程なく我が王と成るお方だ。さて、忠誠を示すため一つ心を手折ってご覧に入れよう……。」

 狂気、相対する二人から感じるのはそればかりだ。殺意、敵意、闘志、嫌悪、そして服従、その全てが混在するまるで深淵のような狂気だ。

「ならば力尽くで!」

 そう言いながら、男は飛びかかった。

 一瞬だった、クロノス様はまるで何もしていないかのように見えた。だけど確かに、動いていたのだ。それは、戦いというには余りにも緩慢で、攻撃というには余りにも静止した一撃。だけどそれは確かに男に届いて、それどころか膝を付かせるだけの威力を持っていた。

「何を……した……?」

 男は息も絶え絶えに問うた。

「ふふふっ……危ないではないか? ひどいではないか? 心臓に剣を突き立てようとするなど。だから、刺さらないようにしただけだ。しかし、それだけではお前が転んでしまう。それは、少し気の毒だ。だから転ばないように勢いを殺してやっただけだ。」

 男の剣技は神速だった。仕掛けるには余りにも遠い間合いを瞬きの間に詰めて、その勢いで刺し貫こうとする人外の技だった。

「笑わせる……。」

 対して、クロノス様の動きは人間の動きだった。それもひどく緩慢な、まるで老人のような動きだった。

「気遣ってやったというのに。ひどいではないか? それも当然か?」

 男はその言葉が終わるのを待たずにクロノス様に斬りかかった。

「うぐっ!」

 そして、その直後噛み殺した悲鳴を発した。まるで元からあったかのように、その剣を振る手の軌道にはクロノス様の拳があった。

「ひどいことをされたものだ……。そしてひどいことをしたものだ。……だから当然か……。」

 語る彼は妙に懐かしそうで。

「何を言って……いる!?」

 そう言いながら下段から切り上げようとする男の剣を、その塚を足で蹴り地面に突き刺して上から踏んでいる。

「そうであろう? お前は我が心臓を貫こうとして、我はお前に苦痛を与えてしまった。」

 そうじゃない、それはただの縮図だ。もしそうであるのなら、あんな顔をする必要は無い。

「ふふふっ……はっはっはっはっは……痛かったぞ! この心臓に孔を穿たれた時は、この腕をもがれたときは、相喰むこともできぬようにと頭蓋を粉砕されたときは! あぁ、本当に痛かった。ひどいことをされたものだ。」

 彼の狂気はまるでどこでもないどこかに向かっているようで。

「今、そうしてやりたいさ!」

 男の狂気はしっかりと彼を捉えていた。

「構わんぞ? お前がお前であるというのなら、我を殺しても構わんぞ。」

 私には、私たちには狂気に見えるそれが。

「何故だ! なぜお前は、そうでありながら正気でいられる!?」

 男には正気に見えていた。

「正気? これが正気だと……? ふふふっ……はっはっはっはっは……ふっはっはっはっはっは。おかしな事を言う。なら、なぜ我が正気だと思う?」

 しかし、狂気に見える彼の目には確かに彼の意思が宿っていて。

「答えろ!」

 正気に見える男の目にはただ空虚な感情だけがそこにあった。

「もしそうであるなら、そう、成り得るかも知れないな。」

 そう言いながらクロノス様は柄頭に置いた足を地面に下ろした。

「答えろと言っているんだ!」

 我武者羅に、絶叫とともに放たれた渾身の突きは確りとクロノス様の腹を捉えた。肉を抉り、内蔵を突き抜け、背骨を骨髄をズタズタに引き裂いて背を抜けた。

 その瞬間、男の顔が恐怖に歪むのを見た。しかし、それは一瞬で貫かれながらも男に見舞ったクロノス様の掌底は男の顎を射抜いて男を失神させた。

 直後、崩れ落ちるクロノス様を見て私は駆け寄らずにいられなかった。上手く叫べない喉で、声にならない絶叫で彼の名を呼んで居た。

「ク……ロ……ノ……さ……。」

 そして、彼が与えてくれたこの両腕で。今度は彼を抱き上げて。

「我が身を喰らえ、私の肉をやろう!」

 命じられた瞬間に全身がそれに従おうとする。彼に喰いちぎられる灼熱感と充実感を感じながらも抗おうとするが、それはまるで甘美な誘いのように抗い難く気が付けば相喰み互いに互を糧として再生し合う。穿たれた穴は塞がって、私の声は癒えて腐りきっていた右目は光を取り戻した。代わりに、彼の体はほんの少しだけ、腐敗した部分を広げ私の噛み跡を残した。

「クロノス様! お体が……。」

 それに気がつき口を離すとクロノス様は私を撫でてくださった。

「声が癒えたな。もう少し我を喰らえば全て癒えるぞ、いいのか?」

 さっきまでとは違う、とても優しげな声だった。

「構いません、私はあなたの方が心配です。クロノス様のお体が腐ってしまわれる方がよほど……。」

 彼は私を抱きしめて笑った。

「穴があいているよりマシだ……。」

 黒い影に見えていた女は、一歩前に出ながらその正体を現した。外套のフードを外し、その顔を顕わにして手を差し伸べながら言った。

「疑ってごめんなさい。よく、私の元まで来てくださいました。」

 クロノス様は聡明だった。あの男の一撃を受けたのも敢えてだろう。そして私に、相喰む口実を与えてそれを見せつけて異形たるを証明した。それは、私が魔女である事の証明になり、同時にクロノス様が呪師である証明になった。そしてそれは、些細な嘘であった。もし、出過ぎたことでないなら私は手助けをしたい。だから、わざと涙を止めずに手を取って立ち上がる。

「すまないな。付けられてしまったようだ。」

 クロノス様はアセリアにそう言った。

「ご自分で撃退したあなたに何の責がございましょうか? それにもとよりこれは私の仕事です。」

 そう言いながらアセリアは気を失った男に刃を振り上げた。

「やめろ。私たちまで、同じになる必要はない。」

 それをクロノス様は制止した。まるで、諌めるように。

「放っておけばきっとこの男は大群を引き連れて戻ってまいりますよ。」

 しかし、止めるためにはもう一言必要で。

「そうはならないさ、ヤハウエの勇者ですら撃退した相手にいったい誰が挑みたい?」

 その一言ですら、クロノス様はもうすでに考えていた。

「ッ……この男が!?」

 そこには確かに証があった、クロノス様の持ち得ないものでほかの勇者にあるもの。

「この男はヤハウエの勇者ラセル。」

 それは刻印された神の紋章、勇者の証。

「何故それを……?」

 知っているのか、とでも言いたいかのような問で、同時に答えに行き着いてそしてまた新たな疑問が生まれたかのようで。

「知っているさ、前に何度か戦ったことがあってね。最もこの男は覚えてはいまい。」

 その言葉は、ラセル以外の何かに向けられた寂しさを孕んでいた。いつだってそうだ、クロノス様は御身をそこに置きながらもまるでそこに居ないかのように、そこにある全て以外に対して感情を抱いている。

「ここを離れましょう……。起きられたら困ります。」

 踵を返して、返し終わってからアセリアはその続きを言う。

「ついてきてください、仲間のところへ案内します。」

 この女は、魔王は優しい人間である。同時に愚かだ。きっと、魔女なら何でもいいのだ。例え、それが勇者であっても魔女と名乗ってしまえば、迫害される所以を示してしまえば彼女はきっと受け入れてしまう。それが、彼女の投棄だ。そうして、守ることで魔王たるに至ったか弱い常軌を逸した異能の責任を投棄しているのだ。だから、私たちの名前にも正体にも全く興味が無い。

「行くぞ? ついてこい。」

 ならば何故、クロノス様はあんなにもそれを自らの為に使えるのだろうか。自らが描く最善のために。ラセルと呼ばれた男の問が私にも少しだけ理解できてしまう気がする。私は、知らないうちに投棄していたのだ。クロノス様の心に、私の責任を投棄していたのだ。

「お前が、何を思うか知らない。我に何をするのか知らない。だが、お前を離したくはない。何があってもだ。」

 あぁ、あなた様には全てわかっているのですね。私の心、全て見通して、私が例えそうだとしてもクロノス様は私を離してはくれない。私の心に繋がれた敬愛という首輪で縛って、その手綱が責任という重石だったとしてもあなたはそれを離さない。なら、私は貴方のそばに居ましょう。

「はい、クロノス様……。」

 だから今はただあなたの後を追いましょう。

 追ってたどり着いたのは古びた古城だった。そこには、彼女を、魔王を、アセリアを慕うものが多くいた。女が多い、女とは迫害されやすいのだ。少し美人であれば魅了の呪いを帯びた魔女に仕立て上げることができる、少し料理が上手ければそれもまた呪いに仕立て上げられる。だから、女が多い。

「アセリア様、お帰りなさい。……そちらの方たちは……?」

 しかし、それでも盲信するばかりでない者もいるらしく故に私たちは興味を持たれる。しかし、それは盲信でなくとも一種の崇拝であり、アセリアに対し絶対の信頼を寄せている。

「新しい仲間ですよ。さぁ、自己紹介してくださいますか?」

 そこでは名前などただの識別用の記号としてしか意味を成していない。

「クロノスだ、よろしく……。」

 必要なのは神託にも似た信頼だけだ。アセリアによって信頼されている、それがここに受け入れられる条件だ。そして、誰もがその信頼を裏切らなかったからこそ今があるのだ。

「ルーフェと申します。」

 だから、名だけあればいい。名だけ知られればいい。それ以外は、大した価値を持たないのだ。そうして、互いに愛し合うことでしか自らを保てない人間たちの集まりなのだ。私も例外じゃない、何も変わらない。私を保つ愛を与えてくれる相手が違うだけだ。

「二人はどうやら本物ですよ。それにとても強い、だからきっと力を貸してくれます。」

 アセリアは、嬉しそうにそう語る。

「それで……? ふたりの魔術はどんなものなの?」

 奥から歩いてきた女が問いかける。その女は目隠しをしている、つまりはこの女も本物の魔女だ。

「見たいか?」

 クロノス様は問いに問を返した。それはまるで脅迫するかのように。

「是非とも……。」

 それでも女は引かなかった、塞がれたその両目で。しかしきっと見えているのだ、そしてその両目にはきっと呪いのような魔術がかかっているのだ。

「やめましょう。あれは、見るべき類のものではありません……。」

 アセリアが女を制止した。おかげで私は、クロノス様を喰まずにすんだ。少し感謝するべきなのだろうか。

「アセリアは見たんだ? じゃあ話してちょうだい……それが一体どんなものなのかね。」

 アセリアはまるで困ったように私たちを見た。

「構わない……。」

 クロノス様は短くそう言った。

「お二人の魔術は、いえ、あれは魔術などという生易しいものでは……。それは、もう在り方で……なんと説明していいのやら……。」

 そう、私たちの在り方とても不気味に映るだろう。アセリアはそれを不気味に写したくないのだ、出来ることならば美しく語りたい。腐った肉槐になっても死ねない私にそんな気遣いは無用だというのに……。

「在り方……ねぇ……。気にしないことにする、きっと私たちに害のあるものじゃないでしょうから。」

 そう言いながらも、女の目は未だに猜疑心が宿っていた。

「良かった、じゃあ私は二人を空き部屋に案内しますね?」

 アセリアは私たちを連れて行こうとするが女がそれを阻んだ。

「私が連れて行く、だから、アセリアは外をお願いしていい?」

 その真意にも気づかずに。

「わかりました、じゃあ新人さんをよろしくお願いします。」

 ただただ、了承する。

「クロノス様……。」

 私には不安だった、この女の心が見えなかった。

「心配はない……。」

 でも、それはクロノス様には全て分かっているようで、だから彼を疑わずにただ付き従う。

 しばらく歩いて、そこには私たちと女だけになった。

「それで、やはりどうしても見たいのかね?」

 女が踵を返すと同時にクロノス様は僅かに口角を上げながら訪ねた。

「魔女でも、呪師でもないでしょ? 一体……何が目的?」

 私にとっては恐ろしい質問だった。

「ははははっ、言いがかりは止してくれ……。」

 それでも、クロノス様は笑っていた。

「とぼけるなら今、ここでッ……!」

 そう言って女は目隠しを取ろうとした、それと同時に隠した短剣を引き抜いていた。

「クロノス様!」

 その短剣がクロノス様に向かうのを見て思わず声を上げる。

「アセリアも厄介なものを拾ってくるわね……。」

 その両方は嘘でどちらも本物の殺意を孕みながらも、その殺意を完遂することはなかった。短剣は、寸前で止まり、外された目隠しの下にはただただ誰にでもある普通の瞳があった。そして、クロノス様はまるでそれを知っていたかのように一切何もしなかった。

「気にしないことにする……あなた相手に私も、アセリアもきっと手も足も出ないから。」

 彼女はその虚構で情報を得ていた。それは、予測されるという情報。クロノス様に対して、いかなる攻撃も予測されその刃が届くことはないというもの。彼女の演技は完璧だった、それはもはや演技ではなく感情の上書きだ。そして、その攻撃は完全な奇襲。彼女の持てる全てを奇襲のために総動員して一撃に込めた絶対致死の致命攻撃。それなら、本物の殺意も乗るというもの。

「それは助かる……。」

 クロノス様はいつだってそうだ、何があっても動じない。それはその全てが、クロノス様を動じさせるに至らないから。きっと彼はこの世界のすべてを知っているのだろう。

「でも、私の目はいつだってあなたたちを見てる。アセリアを裏切ったら許さないから……。」

 女は背を向けて私たちに言った。

「もとよりそのつもりはない。」

 クロノス様はそう言うが、彼女は微かに震えていた。

「ここが、あなたたちの部屋。好きに使っていいから、あと、食事は気がついた人が呼びに行くから。ほかに何か質問はある?」

 促されるままに私たちは部屋に入るとクロノス様は女に尋ねた。

「お前は名乗ってはくれないのか?」

 女は一瞬戸惑って、しかしすぐに答えを出した。

「エルスよ。」

 そして、クロノス様はとても愉快そうにもう一つ質問を加える。

「ところで、我々はどうして同室なのだ?」

 それは、初めて彼の放った無駄な言葉にも思えた。

「そっちの子が貴方を好いているように見えたから。……もう一部屋用意したほうがいい?」

 クロノス様は私に目で答えるように促した。

「いえ、一緒の部屋がいいです。」

 だから私は答えた。

「やっぱりね……。今度あなたの話も聞かせなさい、私もたまに退屈するから……。」

 彼女は僅かに私を見て微笑むとそのまま私たちに与えた部屋を後にした。

 少しして、エルスの足音が聞こえなくなった頃にクロノス様は私に声をかけた。

「ルーフェと言うのだな?」

 私にだけ見せる顔だった、それはとても優しくて、本当に力の抜けたただのひとりの男の顔。それが、私には嬉しかった。

「はい! クロノス様! 最初にお聞かせできなくて申し訳ありません。」

 そのせいで、少しだけ申し訳なくなる。

「いや、聞き忘れたのは我だ。お前を見つけられて少し舞い上がってしまってな。」

 そうやって、恥ずかしそうな顔をなさるから私の贖罪の気持ちは勝手にあなたへの愛情に変わって。

「クロノス様はずるいです。いつも、私の気持ち全部知ってるみたいで……。」

 たまには少し拗ねてみようか。クロノス様はお許しくださるだろうか。

「そうだったなら、少しつまらない……。」

 そう言ってクロノス様は微笑んで下さる。

「クロノス様?」

 その微笑みの意味はわからなかったけど、気持ちだけは大体分かって。

「ルーフェ、しばらくはお前をただ感じていたいのだ。」

 だから、私はただ側に寄って。

「少し、甘えてもよろしいですか?」

 彼の腕の中で彼を抱きしめ返す。

「許そう。」

 その言葉は余りにも甘く私の脳内を木霊して、だから私は滴る幸福が彼に気づかれてしまわぬように彼の胸に顔をうずめる。

「泣き虫になってしまったのだな……。」

 それでも、彼には全てわかってしまう。恐ろしい程に聡くて、恐ろしい程に優しいお方。

「申し訳ありません……。」

 そう言ってなく私の頭をそっと抱き抱えると、私の髪をその手でそっと梳きながら。

「そんなお前も愛おしい。」

 ただそう仰って頂くことが、嬉しい。私にすべてを与えてくださったお方は、私の世界はまだ、確かに私を愛してくれていたのだ。今はただそう思いたい。


 この物語は「ウロボロス」。第三の神ウロボロスが深く密接に関わる物語です。

 おそらく皆様は疑問をお持ちでしょう“なぜ、この物語の語り手は。そうであると明記されていない彼女は、主人公の『親』であるが如く敏いのだろうか?”

 理由は簡単です。

 彼女は彼の『親』であるからです。

 この物語は「ウロボロス」要するに、第三の神ウロボロスの視点で描く物語だからです。

 彼女の勇者は証を持たず、ただ能力だけを得る。そしてその力とは完全なる不死の力。それは例え肉体を粉々にされようとも、例え太陽に薪としてくべられ様とも、例え世界がまるごと滅びようとも生き続ける絶対の不死。

 世界が滅びた場合、世界が滅びる原因が生まれた瞬間に転生する。そして幾度となく彼は世界とともに滅び続ける。相対ではなく絶対の不死です。その怪物こそが今回の主人公。そしてその力を与えてしまったが故に世界と共に滅びてしまう相対的不死にまでその力を落としたのが本作のヒロインであるウロボロスです。

 勇者が魔王を倒せば、人間はまた魔王が欲しくなる。一万を生かすために百の魔族が生まれ、九千九百を生かすために九十九の魔族が生まれる。何時しか、人は二人になって一人は人間で一人が魔族になって残る人間は一人になってやがて朽ちていく。それが本作のテーマです。

 さて、今回はかなり核心に迫ったネタバレをしてしまいました。今回、ネタバレをしたのは読者の皆様の違和感を解消したいなと思ったからです。納得して頂けたなら幸いです。

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