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あの頃のあなた  作者: yui
3/15

*校庭


正門を通って、土の校庭に足を踏み入れる。

土曜日の午後ということもあり、サッカー部が部活をしていた。

目を閉じると、いつもの黄色の練習着を着てボールを追いかける祐輝の姿が浮かぶ。何度遠くから見つめたことだろう。


校舎をふりあおぐ。校庭に面した3階の小さな窓。あの音楽室の窓から、走り回っている何人もの中からあなたを見つけ出すのは、わたしの特技だったよ。




***




〜中2春〜




新学年になり、新しいクラスになって最初の土曜日。お弁当を食べて、いつものように、親友の天野美奈(あまのみな)と吹奏楽部の練習が行われる音楽室に向かう。

「今年も柚菜と同じクラスなんてラッキー!」

「ねー!」

美奈と今年も同じクラスになれたことを喜びながら、30分も早く音楽室についた。

「まだ誰もいないねー」

美奈が音楽室に入り、両手を広げて言う。

「だって早いもん。でもわたし、誰もいない音楽室好きだな」

「分かる! そ、れ、に!」

「なによ美奈、そのにやにやした顔は」

「薮先輩のサッカー姿をこっそりみられる特等席だしねっ」

美奈はそういうとスクバを放り投げて窓辺に走っていった。

「そうだよねー!」

わたしも美奈を追いかけて窓辺に向かう。

薮先輩とは、学校一のイケメンで、サッカー部のキャプテン。この音楽室はちょうど校庭に面していて、

サッカー部のようすがよく見えるのだ。

「今日も薮先輩かっこいいー!」

「うん」

背の高い薮先輩は、探さなくてもすぐに見つかる。

美奈は薮先輩が大好きで、わたしはそんな美奈に影響されて薮先輩に憧れるようになり、先輩のかっこいい姿をよくここから二人で見るのだ。


「あれ? あれ小山じゃない?」

小山が校庭を指差していう。

「小山?」

初めて耳にする名前だった。

「小山祐輝。同じクラスじゃん」

「そうだっけ? まだ新しいクラスの男子分からないもん。どれ?」

「ほら、あの黄色いやつ」校庭に目をこらすと、ちょうど黄色の練習着を着た男の子が、ボールを取った。

「今ボール持ってる人?」

「そうそう。小山二年なのにゲームに出てるなんて、うまいんだー」

「へえ」

走る黄色の練習着を目で追いかける。

どちらかというと背の小さいのに走るのはすごく速くて、あっという間にゴール前。

あ、シュート……!


"ピー"


「すごーい!小山ゴール決めた!」

黄色の練習着の彼は、嬉しそうにガッツポーズをしている。

「あー! 小山、薮先輩に肩ポンポンって叩かれてる! いいなー!羨ましいよ〜」

「美奈ったら誰にやきもち妬いてんの」

美奈に苦笑しながら、わたしの視線は、今はもうまた走り出している、黄色の練習着から離れない。











それからわたしが窓から見つめるのは、薮先輩じゃなくて、祐輝の背中になったんだよ。




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