VSゴブリン 美玲、麗奈サイド
ー美玲サイドー
「めんどくさいなぁ」
ゴブリンを目の前にして美玲は呟いた。
「まあ、一人でよかったぁ。こんな雑魚相手に手こずるふりするのしんどいんだよねぇ。それとも、本部が気を効かせてくれたのかな?」
そう言って、天を仰ぐ。
バカにされたのが分かったのか、ゴブリンが吠えながら突進してきた。
「ギャォォォォォォォォォォ!!」
美玲はそちらを見ようともしない。
ゴブリンは怒り狂って剣を振り下ろした。
「ギャッ‼!?」
美玲はそれを人差し指と親指で挟んで止めていた。
ゴブリンが必死に押すが、剣はビクともしない。
美玲は剣をへし折り、ゴブリンは真っ青になって逃げた。モンスターでも恐怖は感じるようだ。
「はぁ」
美玲はため息を一つついた。
すると、全力で逃げているゴブリンの前に美玲が現れた。
「雑魚が手間取らせないでよね」
次の瞬間。
ゴブリンは光となって消え、折れたゴブリンの剣を持った美玲が立っていた。
「スキル何て使うまでもないってね♪」
ー麗奈サイドー
麗奈は茂みに隠れていた。
小さくなり、息を殺し、存在を消していた。
やっぱり、私に戦いなんかできないよぉ。恐いよぉ。
ゴブリンがすぐそばを通る。恐怖を押さえつけて、声を我慢する。
どうしよう。何とかして倒さないと。
でも、私力なんて無いし...。
ガサッ
後ろでの音に慌てて振り向く。
「風か...」
ホッとして振り返ると、すぐそこにゴブリンいた。
「キャァッ!!」
思わず声を出してしまう。その声でゴブリンに居場所がバレた。
こちらに向かって走ってくる。
「キャァッ!」
パニックになる。そこでふっと教官との会話を思い出した。
[お前のスキルは見えない障壁を作り出す、プロテクという魔法だ。杖もあるから、ある程度は防げる。]
「プロテク!!」
見えない壁にゴブリンの剣が弾き飛ばされ、ゴブリンはひるんだ。
「やったぁ!」
嬉しくて飛び跳ねる。ゴブリンが剣を拾い再び攻撃してくる。
魔法が成功して興奮した麗奈は、ゴブリンに向き直り、
「あんたの攻撃なんて効かないわよ。
プロテク!」
再度攻撃を弾く。
「何度でも来なさいよ」
挑発すると、ゴブリンは怒り狂って、斬りつけてきた。
「プロテク!」
またもゴブリンの攻撃は弾かれ...
るはずだった。
しかし、攻撃は何にも遮られず迫ってきた。
「えっ!」
とっさによけたが、左手を斬りつけられた。
またも教官との会話を思い出す。
[ただし、魔法の回数には上限があってな。それも武器強化のときに一緒に増やしてやろう。いいか?残り回数は把握しておくんだぞ]
血が噴き出す。
「イヤァァァァァァァァッッ!!」
痛みと血を見たことにより、麗奈は発狂した。ゴブリンは構うことなく追い打ちをかけにくる。
「イヤァッ!血がっ!痛いよ!」
痛みと恐怖とで、麗奈の中の何かが弾けた。
「来ないでぇぇぇ!!!!」
杖から一筋の雷が走り、ゴブリンを焼き切った。
「へぇ?私、やったの....?」
我に返った麗奈は緊張が解け、気を失った。