初授業
翌朝...
ベッドで目を覚ました俺は、大きな伸びをする。あたりを見回すと、そこにはいつもと違う景色があった。
どこだ、ここ?
夢か?
いや、まてよ...
そうだ、ここは確かEGTとかいう組織の俺の部屋だ。
「夢じゃぁなかったか...」
ここでじっとしてても仕方ないので、部屋をでて広間にむかった。
広間には、すでに皆がいた。
「あ、忍君。おはよー」
朝から元気な美玲がいう。
「あ、あぁ、皆おはよう」
劉賢を除く3人が返してくれた。
とりあえずソファに座る。
確か最初の授業は9時からだったはずだ。今は...8時か。まだ時間があるな。
そういえば、麗奈は昨日何言われたのかな?
「ねぇ、麗奈。昨日教官に何言われたの?」
麗奈がビクッと肩を震わせる。
「あ、いや、嫌なら言わなくていいんだよ?」
そう言うと、麗奈は小さく首を振った。
「大丈夫。あの後先生に呼ばれてね、戦いについて話をしてね、スキルについて詳しく教えて貰ってたの」
「もう大丈夫なのか?」
「うん...。気持ちの整理はついたつもり。まだ戦えるかは自信ないけど...」
「そうか。じゃあ良かった」
話が一段落ついたので、近くのソファに座ってくつろいだ。
昨日の戦いでの疲れが残っていたのか、俺はそのままウトウトして、寝てしまった。
「起きて、忍君。ねえ起きてってば」
美玲の声が聞こえる。
「ん~、あと5分ー」
まだ眠たい。
「何を言ってるんだ!起きろと言っている」
あれ?喋り方がいつもと違うな。
「こいつめ...。体に言い聞かせんといかんようだな」
またまたー。そんな教官見たいな喋り方しちゃってー。
ビシィッ!!!
「ギャッ!」
腹部に激痛が走る。あまりの痛みに飛び起きると、目の前に怒りをあらわにした教官が立っていた。
「桜井。貴様私をなめているようだな。あとでみっちりしごいてやる」
「え、いや、すいません!これぽっちもなめてません!」
必死の弁解をするが、教官はお怒りのようで、
「これは決定事項だ。では今から移動するぞ。ついて来い」
助けを求めて十勝さんを見る。
が、涙を流しながら笑いをこらえていた。
この人はほんとに...。
他の皆を見ても麗奈ですら笑っていた。
誰か起こしてよ!!
テレポーターから教室に移動すると、
そこは普通の高校となんら変わりのない教室だった。いや、黒板の横に謎のパネルがある。何だあれは。
「ここがお前らの教室だ。教材などは授業の度に机の上にでてくる。それくらいだ。で、始めての授業は、戦闘だ」
いいながら、教官はニヤッと笑った。
うわー、悪い顔。
「まず、適当に座れ」
そう言われたので、俺達は座った。
「今日は初めてだからな、基本から行くぞ。前回の戦闘で、お前らは普段以上の身体能力を発揮したはずだ」
そう言われれば、普段であんな動きは無理だったな。
「それは、最初の武器を与える段階で、身体能力をあげておいたからだ。
これからはある特定のモンスターを倒したり、戦闘での活躍により、身体能力と武器も強化していく。今回は全員強化してやる。武器をだせ」
俺達は武器をだした。改めてみると、
俺の武器ってすっげーボロいな。
所々刃こぼれしてるよ。皆も似た感じか。
「出したな?ではいくぞ」
そういって、教官が何か呟くと、俺達の武器が光った。
光が収まると、そこには刃こぼれのない、綺麗な剣が出てきた。
「「おぉっ!」」
俺達から感嘆の声が漏れる。
皆のをみると、美玲の日本刀は刃こぼれがなくなり、守のハンドガンは、二つに増えていた。劉賢のグローブは、材質が革製に変わって、金属が変わったようだ。麗奈の杖は...、立派になった、かな?
身体能力も上がったのだろうか?
「あのぉ、私のは何が変わったんでしょうか?」
麗奈が聞く。まぁ、そうだな。見た目の変化だけしかないようにしか見えないし。
「あぁ、お前の杖は魔力強化だからな。見た目くらいしか変わらんが、威力は上がっているはずだ」
「そうですか...。分かりました」
ちょっと落ち込んでるよ。ドンマイ。
「では、今からお前らにはスキルを一つ習得してもらう。桜井と松木にはもう一つ覚えてもらう」
.....え?
「スキルは戦闘中に覚える事が多いからな。今日は実践だ」
そう言って、教官は指を鳴らした。
また光が目の前を包む。
次は、森のような所だった。周りには誰もいなく、一人だった。
教官の声が響く。
「お前らには、今からゴブリンと呼ばれるモンスターと一体一で戦ってもらう。制限時間は1時間。安心しろ。やられても死にはしない、痛みは伴うがな。一定以上のダメージを受けると、強制的にこちらへ戻ってもらう。
ただし、死ぬ気で戦わないものには、そこでゴブリンに殺されてもらう。
以上だ、健闘を祈る」
そう言って、声は途切れた。
ジメジメした森の中で一人取り残された。
すると、前の茂みからモンスター、ゴブリンがあらわれた。
見た目は160cmくらいの身長に、尖った耳にキツネ目、口には細かい尖った牙。剣と盾をもっていて、何より、5mは離れているのに、鼻につく悪臭。
ゴブリンはこちらを確認すると、奇声を上げながら飛びかかってきた。