極東支部2
部屋に入ると、そこは凄く綺麗に掃除されていた。まさに埃一つない、といった感じだった。机一つ、椅子二つ、ベッド、その他家電と日用品だけ置かれていた。
(何にもねーな)
確認を終えて部屋を出ると、皆が広間に戻っていた。
全員を確認してから教官が続ける。
「部屋の確認は終えたな。ではこれからの生活についての話をする」
俺たちは一斉に注目する。
「さきほど言った様に、これからは基本的にここで寝泊まりしてもらう。
今日はもう夜なので休め。
明日からは、9時から17時までは、教室に移動してもらって、普通の学生同様に授業を受けてもらう。お前らは1年3組だ。担任はもちろん私、副担任は十勝だ。授業は全て私達で行う。何だその顔は?」
全員顔を引きつらせていた。
(この人の授業って、間違えたらボコボコにされそうだな)
「まあいい。授業には、普通はない、戦闘という教科がある。これは、その時に説明する。それと、授業の途中に時々戦闘訓練がはいる。どのような訓練かはその時々による。教室への移動は、さっきのテレポーターで行う。使い方を教える。見ておけ」
そういって、テレポーターの方へいくと、パネルに手をかざした。
すると、パネルに行き先が表れた。
[本部][教室][訓練場][闘技場][研究所]
[宿舎]
研究所ってなんだ?やばい感じしかしないんですけど...
「分かったか?他に何か質問はないか?」
美玲が手をあげて聞く。
「あのー、この武器はずっと持ってた方がいいんですか?」
もっともな質問だ。こんなのずっとなんか持っていられない。
「ああ、それを言うのを忘れてたな。
武器を持って、武器が消える所をイメージしてみろ」
言われた通りにやってみる。
と、武器が光となって消えてしまった。他の皆も驚いている。
「消えたな。では、次は武器が出てくる所をイメージしてみろ」
今度は、手に光が集まると、剣が実体化した。
「まあ初めはこんなものだろう。イメージなどしなくても、息をするように自然に出したり消したりできるようにしておけ。いざという時に対応できないからな」
そういいながら、教官は一瞬で武器の出し入れをしてみせた。一瞬だったが、教官の武器はムチのようだ。
「あと、桜井、松木。お前らはさっきの戦闘でスキルを発動したな」
スキル?ああ、あの体が勝手にうごいたやつか。
ん?麗奈ってスキル使ってたっけ?
「スキル名は思い出せるはずだ。どんなスキルかもな。スキルは突発的に習得するものだ。初めのうちは、スキル名を言うと体がうす赤く光り、あとは勝手に体が動いてくれる」
「あっ、あの!」
麗奈が声をあげる。
「どうした、松木?」
「私、スキルなんかつかってません」
「なんだ、気づいていないのか。戦闘中に桜井がやられかけただろ。あの時お前のスキルがなかったら桜井はやられていたぞ」
そうだったのか。後でお礼言っとこう。
「お前の記憶にはしっかりとスキル名が残っているはずだ」
「そんなの知りません。私は戦ったりなんかしません!」
後半は自分に言い聞かせてるみたいだった。
「まあいい。では、試しに桜井、先ほど覚えたスキルを使ってみろ」
「え!?」
「早くやれ」
「はいぃー」
ビビりながらも、俺は記憶にあるスキル名を叫んだ。
「ソードクロス!」
すると、体がうす赤く光り、剣が十字を描いた。
皆から感嘆の声が漏れる。
「このように、技名を言いさえすれば、こいつのような剣のド素人でも体がうごいてくれる」
うっ。さらっとひどいことを言われた。
「慣れてくると、声に出さなくても発動できるようになる」
なるほど。そんなこともできるのか。
「説明は終わりだ。分からない事があったら、私か十勝に聞け。答えれる範囲で答えてやる」
そーいや十勝さん一言も喋ってないけど、なにしてたのかな。
横目で見ると、立ったまま寝ていた。
「寝るな!十勝!」
ゲンコツ。痛そ~、
「では、解散だ。何をしてもいいが、ここから出るな。何があってもしらんぞ。明日から授業だから、早く寝ておけ。あと松木、お前は一緒に来い」
そう言って麗奈を連れてでていった。
俺たちは一言二言はなすと、それぞれの部屋に戻り、明日に備えて寝ることにした。