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灰の傭兵と光の園 ─ 世界設定&メカ資料集(一部イラスト付き) ─  作者: 青羽 イオ
世界・用語・技術・兵器

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【設定資料】MEM(Memory-Emitter Material)

――灰と記憶をつなぐ、見えない媒介物


1. 概要


 MEM( )(メム) は、正式にはMemory-Emitter Material( )(メモリー・エミッター・マテリアル)と呼ばれる物質群の総称です。


 もともとは、灰災以前に極地から回収された「特殊鉱物・氷中の沈殿物」として研究が始まり、『触れた人の頭の中にだけ“意味”を直接流し込むしかし』録音や映像には一切の痕跡が残らないという、従来の物理モデルでは説明しづらい性質を持つ素材として、レゾナンス・シティの研究機関に集中的に集められていました。


 灰災の発端となった臨界事故も、このMEM研究の過程で起きたものだとされています。


2. レゾナンス・シティとMEM研究


 レゾナンス・シティ──そこは、人類の英知の結晶たる研究都市だった。

 政府機関の塔が林立し、学術都市群は地下の光脈で結ばれ、資源と情報が世界中から収束する。

 

 極地から持ち帰られた《MEM(Memory-Emitter Material)》──触れれば“意味”だけが伝わり、記録には残らない信号。その正体を解く研究がここに集められていた。


 レゾナンス・シティでは、MEMについて次のような性質が報告されています。


・非記録性

 MEMに触れている間だけ、映像・音声・計測ログに異常が出る

 そこにいた人間は「何かを見た/理解した」と証言するが、機械記録は空白のまま


・同夢同期

 離れた被験者同士が、同じ図形・光景・語彙を含む夢やイメージを共有する

 あらかじめ打ち合わせていないのに、絵や言葉が驚くほど一致するケースがある


・媒体仮説

 灰粒子や一部の結晶構造が、MEMの発する“意味波”を搬送・増幅する媒体になっている可能性が指摘されていた(当時は未証明)

 研究要旨の一節は、こう結ばれています。


《観測不能=不存在ではない。記録不能でも“知覚は成立する”。》


 この考え方が、その後の「レゾナンス」やE因子研究の土台にもなりました。


3. 灰災とMEMの関係

 正午を少し回ったころ、レゾナンス・シティで「臨界域の連鎖暴走」が発生します。

 地中からの異常振動

 研究塔のアンテナに走る青白い放電

 空気の甘い金属臭

 ガラスが耳の奥で鳴るような高周波ノイズ

 そして、その直後に降り始めたのが、冷たくない雪──灰でした。

 以降、世界中で観測されるようになった灰膜と灰災は、


「MEMが臨界を超えて“拡散した結果」なのか


「灰膜という媒体が、MEM的な“意味波”を抱え込んだ状態」なのかいまだ決着がついていません。


 しかし、多くの研究者は『灰膜の広がりとMEMの活性化は、同じ“事象”の別の側面』と見なしており、MEMは『灰災の“裏の顔”』として語られることが多くなっています。


4. MEM現象としての再定義

 灰災以後、現場レベルでは「MEM」という語は、元々の素材そのもの(Memory-Emitter Material)それが起こす現象全般(意味波・残響・記憶のゆらぎ)の両方をまとめた俗称/総称として使われるようになりました。


 現代の実務用語としてのMEMは、だいたい次のようなニュアンスです。

 空間に残った“出来事の残り香”、何もない場所なのに妙な既視感がある。

 人がいないのに、誰かに見られているような圧。

 人の記憶・感情との共鳴( )(レゾナンス)を引き起こす“場”。

 特定の地点に近づくと、同じ悪夢を何度も見る。

 灰に弱い子どもほど、MEMの高い場所で異常反応を示しやすい。

 記録と記憶がズレる領域。


 ログ上では「何も起きていない」のに、現場の証言だけが揃っている。

 逆に、「記録にはある出来事」を体験した本人だけが思い出せない。


 こうした“場の性質”まで含めて、まとめて「この辺り、MEMが濃い」「MEMがにじんでる」と表現されます。


5. MEM値(MEM Index)という指標


 前線の部隊や白帯護衛任務では、MEMの強さを便宜的に数値化した MEM値 が使われています。


MEM:0.00〜0.02

 → 背景ノイズレベル。どこにでもある「普通のゆらぎ」


MEM:0.03〜0.05

 → 注意レベル。長居すると頭痛や悪夢、集中力低下が増えると言われる


MEM:0.06〜

 → 要警戒。ブリーフィングで事前に警告され、

 「ここは最短で抜けろ」と指示が出る域


 白帯護衛任務のブリーフィングでは、「この区画、灰密度は許容内だがMEM:0.06。VOLKは通過時間を短くしろ」といった形で、「灰」では説明できないリスクを補足する指標として扱われます。


 なお、MEM値はあくまで統計的な目安であり、同じ数値でも「何を引き出してくる場所なのか」は場所ごとに異なります。


6. 灰膜・E因子・レゾナンスとの関係

 作品世界では、次のような関係性を仮定しています。


・灰膜

 灰そのもの。吸い込めば肺を傷つける、直接的な物理的・化学的要因。


・E因子(E6因子など)

 灰膜への暴露を繰り返した結果、人間の側に生じた「反応の変質」。

 灰への「過敏さ」「異常な適応力」の遺伝的・生理的な原因。


・レゾナンス

 人間の神経系/感情と、灰膜・E因子・MEMが作る“場”のあいだで起きる「揺れ方」「波形パターン」のこと。

 スキャナや計測器でかろうじて捉えられる領域。


・MEM

 そもそもの「意味波」を発する素材/現象。

 灰膜やE因子、レゾナンスは、その表に出ている症状に過ぎない。


このため一部の研究者は、「灰災の“本体”は灰ではなく、MEMの世界的な暴走と定着だ」と主張していますが、政治的理由も絡み、表立って論じられることは少なくなっています。


7. 立場ごとの「MEM」の見え方

・一般市民

 ニュースや病院の掲示で聞く「よく分からない専門用語」のひとつ


「MEMが高い地区は、住宅指定から外されるらしい」

「MEM警報が出たから、あのルートは避けよう」

 といった、ざっくりとした不安材料として受け止められている


・傭兵・RFパイロット

 ブリーフィングで示されるリスク指標のひとつ

(灰密度、敵配置、地形危険度と並ぶ)


現場感覚では、「変な夢を見させてくる場所」「時間の感覚がおかしくなるエリア」

くらいの理解。


「あの橋の手前、MEMが高すぎて頭が痛くなる」

「あの廃ビルは、灰よりMEMがヤバい」


といった会話が交わされている。


・研究者・企業側

 表向きは「灰膜・E因子・レゾナンス研究の一部」として扱われるが、

実際は、


「もし制御できれば、新しい通信手段・兵器・経済価値になる」


「下手に触ると、灰災級の“第二幕”を招きかねない」

という、希望と恐怖が入り混じった対象。


 そのため、MEM関連のデータは、共同研究を装いつつ、各社・各機関が水面下で奪い合う。

 現場には「詳細非公開/特別管理」の通達だけが降りてくる


8. 物語の中での役割

 MEMは、作中世界でもまだ「完全には解明されていないもの」として描かれます。


 灰災の起点となったレゾナンス・シティ

 白帯のごく一部に残る「説明のつかない違和感」

 特定の子どもたちや人物が見ている“夢”や“声”


 こうした要素の裏側に、静かに影として存在しているもの──

それがMEMです。


 序盤では、MEM値の警告、一部の地名・施設に付随する単語、として名前だけが出てきますが、物語が進むにつれ、


 灰災の正体

 「選ばれてしまった」子どもたち

 人間の記憶そのものの扱い


 といったテーマと結びつき、少しずつその輪郭が見えてくる……かもしれません。

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