表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
命の灯  作者: 坂上きつね
第一章ー--坂下ー--
34/47

旅行2

 二人は電車に揺られていた。

 通りゆく家々、自然、鉄塔などが彼らの視界を過ぎていく。

 にゃあ。

 え? 彼はリュックサックを開けた。中にはお嬢が入っていた。

 「あ、お嬢」

 「こらこらお留守番してろって言ったじゃないか」

 「にゃあ」

 「静かにしてるんだぞ」

 「にゃあ」

 お餅はお嬢の頭を撫でた。彼はお嬢を軽く撫でると、リュックを閉めた。やれやれ。

 「どんなところに行くの?」

 「静かな港町がいいな」

 空は快晴だった。ところどころ雲があって、風景画を描いたらさぞかしいい絵になったことだろう。

 二時間が経った。

 二人はテキトーな海沿いの町で電車から降りた。

 改札を出ると駅前は何もなかった。風に乗って海の匂いがしていた。少し歩くと寂びれた商店街があった。かつてはここも賑わっていたのだろう。

 「海岸まで行こうか」

 「うん」

 二人は海岸まで歩いて行った。地平線まで広がる海。絵画のような青空が広がっていた。

 「ん?」

 見覚えのある背中が彼の視界に入った。

 「マキさん!」

 呼ばれたマキは筆を走らせる手を止めた。

 「坂下さん!」

 マキの足元には茶色の子猫が鎮座していた。あ、そうだお嬢をリュックに入れたままだった。

 彼はお嬢をリュックから出した。

 お嬢と茶色の子猫は互いに近寄ってにゃあにゃあ鳴いている。

 「マキさん、退院したんですね」

 「おかげさまで。あっちで古沢さんが釣りしてるよ」

 「どこ?」

 マキは遠くの岩場を指さした。たしかに古沢らしき姿が釣りをしていた。

 「二人でデートに来たの」

 「いいね」

 「海ってさ、精神が生き返る感じがするよね」

 「僕もそう思ってた」

 「今日はこんなところまでわざわざ一人で来たんだ」

 「、、、」

 「どうしたんですか。黙っちゃって」

 「いや、気にしないでくれ。ちょっと古沢さんに挨拶してくる」

 「うん」

 「ちょっとお嬢を見ててくれないか」

 「え!?」

 「ん?嫌だったらいいよ」

 「そうじゃなくて、ウチの子もお嬢って言うの」

 「ふーん」

 彼はお餅の方を見た。お餅は不気味な笑顔をしていた。

 「すごい偶然だね」

 「偶然なんてものはほとんど存在しない」

 「偶然は存在するよ」

 マキは坂下の子猫を撫でた。すると突然驚いた表情をした。明らかにお餅のことを見ている。

 「こんにちは」

 「あら、お餅さんじゃない。坂下さんと一緒に来てたの?」

 「うん」

 そこで突然、雨が降ってきた。

 「あ、やば。坂下さん、お餅さん、どこか避難しよう」

 「そうだね」

 三人は商店街まで走った。みるみるうちに雨風は強くなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ