旅行2
二人は電車に揺られていた。
通りゆく家々、自然、鉄塔などが彼らの視界を過ぎていく。
にゃあ。
え? 彼はリュックサックを開けた。中にはお嬢が入っていた。
「あ、お嬢」
「こらこらお留守番してろって言ったじゃないか」
「にゃあ」
「静かにしてるんだぞ」
「にゃあ」
お餅はお嬢の頭を撫でた。彼はお嬢を軽く撫でると、リュックを閉めた。やれやれ。
「どんなところに行くの?」
「静かな港町がいいな」
空は快晴だった。ところどころ雲があって、風景画を描いたらさぞかしいい絵になったことだろう。
二時間が経った。
二人はテキトーな海沿いの町で電車から降りた。
改札を出ると駅前は何もなかった。風に乗って海の匂いがしていた。少し歩くと寂びれた商店街があった。かつてはここも賑わっていたのだろう。
「海岸まで行こうか」
「うん」
二人は海岸まで歩いて行った。地平線まで広がる海。絵画のような青空が広がっていた。
「ん?」
見覚えのある背中が彼の視界に入った。
「マキさん!」
呼ばれたマキは筆を走らせる手を止めた。
「坂下さん!」
マキの足元には茶色の子猫が鎮座していた。あ、そうだお嬢をリュックに入れたままだった。
彼はお嬢をリュックから出した。
お嬢と茶色の子猫は互いに近寄ってにゃあにゃあ鳴いている。
「マキさん、退院したんですね」
「おかげさまで。あっちで古沢さんが釣りしてるよ」
「どこ?」
マキは遠くの岩場を指さした。たしかに古沢らしき姿が釣りをしていた。
「二人でデートに来たの」
「いいね」
「海ってさ、精神が生き返る感じがするよね」
「僕もそう思ってた」
「今日はこんなところまでわざわざ一人で来たんだ」
「、、、」
「どうしたんですか。黙っちゃって」
「いや、気にしないでくれ。ちょっと古沢さんに挨拶してくる」
「うん」
「ちょっとお嬢を見ててくれないか」
「え!?」
「ん?嫌だったらいいよ」
「そうじゃなくて、ウチの子もお嬢って言うの」
「ふーん」
彼はお餅の方を見た。お餅は不気味な笑顔をしていた。
「すごい偶然だね」
「偶然なんてものはほとんど存在しない」
「偶然は存在するよ」
マキは坂下の子猫を撫でた。すると突然驚いた表情をした。明らかにお餅のことを見ている。
「こんにちは」
「あら、お餅さんじゃない。坂下さんと一緒に来てたの?」
「うん」
そこで突然、雨が降ってきた。
「あ、やば。坂下さん、お餅さん、どこか避難しよう」
「そうだね」
三人は商店街まで走った。みるみるうちに雨風は強くなった。




