余韻2
「そうだ、旅行に行かない?」
「旅行?」
「日帰りでさ。電車で行けるとこまで行くんだ」
「面白そう」
「明後日の土曜日とかどう?」
「お嬢は連れてくの」
「さすがに連れていけないかな」
お嬢はウィンストンの煙にパンチし始めた。飛んで、空中で煙にパンチ。煙くないのだろうか。
「明後日なら大丈夫」
「よし、決まりだ」
彼は少しずつ社会へとの接点を持ち始めていた。少しは病気がよくなってきたのかもしれない。
とてもいい兆候だった。発病後2,3年は実家に閉じこもっていた。それが今では友人を旅行に誘うまでになったのだ。
彼のスマホが鳴った。電話に出ると一宮だった。
「坂下さん、今から、今日の祝勝会しませんか? 坂下さんが好きって言ってた梅サワー買ってきましたよ」
「いいですね祝勝会。今行きます」
「では、グループホームの駐車場で待ってます」
「わかりました」
彼は電話を切った。そうだ、今日は彼がジャグラーにハマった記念すべき日なのだ。
「お餅。ごめんけど、今日はもう帰ってもらえるかな。大切な友人と打ち上げなんだ」
「わかった。じゃあまた明後日」
「うん。明後日、新大久保駅に8時集合で」
「わかった」
お餅は扉から外へ出て行った。お嬢はにゃあにゃあと鳴いた。よく考えるとお餅とお嬢ってどこか似ているようなー-マイペースなところとかー-なんてことを考えながら、彼はお嬢の頭を撫でた。お嬢はにゃあと鳴いた。




