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命の灯  作者: 坂上きつね
第一章ー--坂下ー--
24/52

違和感2

 二人はサウナを出た。お餅がぐーっと伸びをする。揺れる彼女の長い髪。駐車場から続々と出てくる車のエンジン音。彼の胸はキュッと締め付けられた。

 食堂での一コマ。店員の不自然な態度。お餅は本当に存在しているのか? 不安になった彼はお餅の肩に触れてみる。

 たしかにそこには人のぬくもりがあった。大丈夫、お餅が存在しないわけがない。

 「さ、僕はグループホームに帰るよ」

 「私もついていく」

 「いいけど、大学のほうは大丈夫なの?」

 「,,,」

 お餅は何も言わなかった。これ以上踏み入ってはいけない気がした。

 二人はグループホームに帰った。グループホームに着くとお嬢が彼らを外で待っていた。その時、ちょうど一階の管理人室兼食堂から一宮が姿を現した。白髪交じりの1000円カットで短く整えられた髪。180センチ80キロの腹の出た大柄な身体。坂下は172センチだから、一宮のことは少し見上げる形になる。一宮がいると坂下は安心した気持ちになる。

 「おお、坂下さん。お久しぶりです。俺は今日から一週間、体験入所です」

 お嬢は坂下の元へ駆け寄ってきた。坂下がお嬢を抱っこすると、お嬢はにゃあと鳴いた。

 「元気にしてましたか、一宮さん」

 「おかげさまで。可愛い子猫ですね。ずいぶん坂下さんに懐いているようですが」

 「先日の体験入所の時に、グループホーム前で弱っているところを助けたんです。それから一緒に住むようになりまして,,,」

 「助けてあげたんですね。とても立派な行為だと思います。えらいです。坂下さんは一人きりでお出かけですか?」

 彼は再び違和感に襲われた。お餅のほうを見る。お餅は彼の横に立っている。

 「一宮さん、彼女が見えませんか?」

 「,,,」

 一宮は何も言わなかった。「そうだ、坂下さん。近くにパチスロ屋があるのでちょっと行きませんか?」

 「あいにく、お金をあまり持ってなくて,,,」

 「それならこうしましょう。俺が5000円、坂下さんに貸します。もし負けたらその5000円は返さなくていいですよ」

 「いいんですか?」

 「心配しないでください。俺はフルタイムで週5働、20年働いているんですよ? 金の心配はいらないですよ」

 「じゃあ、お言葉に甘えて」

 「よし!行きましょう」

 「さすがに子猫は連れてけないですよね?」

 「パチスロ屋はペット禁止です」

 「お留守番してろ、お嬢」彼はお嬢を地面に下した。お嬢はすぐにお餅の元へ駆け寄り、お餅はしゃがんでお嬢を撫でている。坂下が心配そうな顔でお餅を見ると、彼女はバイバイと合図するように手を振った。これなら心配いらないだろう。

仕事が大変です。働くって簡単なことじゃないですよね。でも、執筆するために仕事をする。好きなことのために嫌なことをする。生きてくって大変です。

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