違和感1
二人は再びチル室へ戻った。溶岩室からは、1セット目で根を上げた人たちがチル室に10人くらい集まっていた。
「ごめん、先にくたばってしまって」
「ううん、気にしなくていいの」お餅は不気味に笑った。
「一本、煙草を吸おうか」
「うん」
二人は汗を拭いて、岩盤浴コーナーを後にした。
ー-ー喫煙所ー--
彼はウィンストンに火を付けた。お餅も煙草に火を付ける。
「いやー、汗かいた」
「熱かったわ」お餅はリップを塗りなおした。バランスのとれた肉厚の唇がぷっくりと光った。彼の視界はしばらく彼女の唇に吸い寄せられた。ああ、なんて美しいのだろう。
「口になんか付いてる?」お餅は不思議そうな顔をしている。
「いや、なんでもないんだ」彼は慌てて返事をした。
「お腹空いた」
「そうだね。もう13時半だし、一階の食堂でなにか食べようか」
「うん」
二人は煙草を消し、食堂へ向かった。
食堂の入口で若い女性の店員が彼の姿を視界に捉えた。
「一名様ですか?」
「えっ、二人だけど」
「えーと?」店員は反応に困っている。彼はお餅の方を見た。お餅は不気味に笑っている。
「席空いてる?」
「あー、はい。お好きな席へどうぞー」
二人は向かい合って座った。お餅はメニュー表を開いて眺めている。
「カレーがいい」お餅は言った。
彼は違和感を覚えた。しかし、今感じた違和感を言葉にしてはいけないような気がした。
「あ、うん。僕もカレーにするよ」
注文はタッチパネル式だった。彼はカレーを二つ注文した。
やがてカレーが運ばれてくる。さっきの女性の店員だ。彼女は彼の顔をまじまじと見つめた後、お餅の前にはカレーを置かず、彼の前にカレーを二つ並べて去っていった。
何かがおかしい。
お餅は彼からカレーを奪って食べ始めた。彼はお餅を見た。不意に彼女の輪郭が揺らめいた気がした。目の錯覚だろうか。いや彼女は、、あるいは、、
「どうしたの、カレー食べないの?」
「あ、うん。いただきます」
「私はここにいるから」
「え?」
「いや、なんでもないわ」
二人はカレーを食べきった。




