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命の灯  作者: 坂上きつね
第一章ー--坂下ー--
23/46

違和感1

 二人は再びチル室へ戻った。溶岩室からは、1セット目で根を上げた人たちがチル室に10人くらい集まっていた。

 「ごめん、先にくたばってしまって」

 「ううん、気にしなくていいの」お餅は不気味に笑った。

 「一本、煙草を吸おうか」

 「うん」

 二人は汗を拭いて、岩盤浴コーナーを後にした。

 ー-ー喫煙所ー--

 彼はウィンストンに火を付けた。お餅も煙草に火を付ける。

 「いやー、汗かいた」

 「熱かったわ」お餅はリップを塗りなおした。バランスのとれた肉厚の唇がぷっくりと光った。彼の視界はしばらく彼女の唇に吸い寄せられた。ああ、なんて美しいのだろう。

 「口になんか付いてる?」お餅は不思議そうな顔をしている。

 「いや、なんでもないんだ」彼は慌てて返事をした。

 「お腹空いた」

 「そうだね。もう13時半だし、一階の食堂でなにか食べようか」

 「うん」

 二人は煙草を消し、食堂へ向かった。

 食堂の入口で若い女性の店員が彼の姿を視界に捉えた。

 「一名様ですか?」

 「えっ、二人だけど」

 「えーと?」店員は反応に困っている。彼はお餅の方を見た。お餅は不気味に笑っている。

 「席空いてる?」

 「あー、はい。お好きな席へどうぞー」

 二人は向かい合って座った。お餅はメニュー表を開いて眺めている。

 「カレーがいい」お餅は言った。

 彼は違和感を覚えた。しかし、今感じた違和感を言葉にしてはいけないような気がした。

 「あ、うん。僕もカレーにするよ」

 注文はタッチパネル式だった。彼はカレーを二つ注文した。

 やがてカレーが運ばれてくる。さっきの女性の店員だ。彼女は彼の顔をまじまじと見つめた後、お餅の前にはカレーを置かず、彼の前にカレーを二つ並べて去っていった。

 何かがおかしい。

 お餅は彼からカレーを奪って食べ始めた。彼はお餅を見た。不意に彼女の輪郭が揺らめいた気がした。目の錯覚だろうか。いや彼女は、、あるいは、、

 「どうしたの、カレー食べないの?」

 「あ、うん。いただきます」

 「私はここにいるから」

 「え?」

 「いや、なんでもないわ」

 二人はカレーを食べきった。

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