9. A級モンスターの出現
レオ助長との会食の翌日。
お酒を飲んだので、二日酔いをラーメンで解決したくて、以前から目をつけていたラーメン屋に向かった。
そこで注文したラーメン一杯。
「ズルズルッ」
うーん……この味だ。
私の好みを完璧に射抜く味だった。
ラーメン好きの私が点数をつけるなら、星5つのうち4つはあげるほど。
普段は食べるために列に並ぶのが理解できないタイプだったが、これなら納得できる。
半分ほど食べた頃だろうか。
「いらっしゃいませ!」
店に西洋人の男が入ってきた。
周りの客も彼が珍しかったのか、食べる手を止めて新しく入ってきた男を見つめる。
東京に外国人がいるのが何だと言うかもしれないが、私たちが驚いたのはそのガタイの良さだ。
人間がどうしてあんなに横に広いんだ?
家に入ろうとして玄関の入り口で詰まってしまいそうな巨体だった。
こうして見るのが失礼だと分かってはいても、自然と目が彼の方へ向いてしまう。
彼もこういう状況には慣れているのか、気にする様子はなかった。
周りをぐるりと見渡すと、私の隣に座った。
彼が腰を下ろすと、椅子が「助けてくれ」と悲鳴を上げた。
その音に椅子の脚が折れるかと思ったが、何とか耐え抜いている。
当然のようにラーメンを頼む時は麺を追加。
一口で、あんなに多かった麺が消えた。
空の器を横に置いてさらにおかわりを注文する。
その姿を見ていると、なぜか私の中にも闘志が湧き上がってきた。
「ズルズルッ。おかわり!」
ラーメン好きの私も負けじと、ラーメンを追加で注文した。
そんな私の姿が彼の目には可笑しかったのか、「フッ」と鼻で笑った。
私への挑戦か?
このデカいだけの野郎が! かかってこい!!
ラーメンに対する私の愛をバカにした罪を償わせる!
彼が一杯平らげれば、私も負けじと一杯平らげた。
周りには積み重なり始めるラーメンの器。
威勢よく戦意を燃やしていたが、箸の動きが鈍くなり始めた頃、ふと「何をやっているんだ?」という考えがよぎった。
好きだと言っていたラーメンを味わいもせず、フードファイターにでもなったかのように食べているなんて……。
その事実に気づいた瞬間、箸を置いた。
その瞬間、ラーメン屋の中に目も開けられないほどの突風が吹いた。
「え? あっ…おっ!」
その風に煽られ、店内にあったすべてのラーメンがふわふわと浮き上がる。
隣にいた男が、まるで人間掃除機にでもなったかのようにすべてを吸い込んだ!
道理で人間離れした食いっぷりだと思ったが、その時に気づくべきだった……。おそらく僕と同じ「覚醒者」なのだろう。
変な対抗心を燃やして、馬鹿なことをしたという思いがこみ上げてきた。
肩を落としたまま店を出ようとすると、隣にいた西洋人の男が話しかけてきた。
「ひ弱そうな見た目のわりに、よく食べるな。日本にこんな戦士がいたとは。一緒に食えて楽しかったぞ」
なぜか誇らしい気持ちになった。
「僕もです。ところで、一つ聞いてもいいですか?」
「いくらでも」
「最後に店の中にあった食べ物を全部吸い込んでいましたが、あれは能力なんですか?」
「いや。気合だ」
楽しくラーメンを食べに来たはずが、なんとも奇妙な経験をした。
レオが僕を呼んでいるという知らせを受け、訓練場へと向かった。
そして、防衛隊に初めて入った時のように、疲れ果てて倒れるまで訓練に明け暮れた。
体が楽だと余計なことを考えてしまうから、たっぷり鍛えてやる、とのことだ。
気持ちはありがたいが、僕は普段からこれといった考えはしない方なんだけどな。
「防衛隊に入って間もないのに、これまでよく頑張りましたね。身体能力がかなり向上しています。」
訓練の成果があったのか、定期的に行われる身体検査で著しく向上した測定値が出た。
個人の成果とは裏腹に、マサヒロ隊長から受けた任務には進展がなかった。
レオ助長が防衛隊の敵かもしれない?
私が彼を尾行できるわけでもないし、もし本当にそれがバレて敵だと判明した日には、私は命はないだろう。
そもそもレオ助長と一緒にいて怪しい点があれば報告すればいいという言葉で、隊長の提案した任務を引き受けたのだから、しばらく成果がなくても文句は言われないだろう。
向こうも大きな期待はしていなかったはずだ。
本当にレオが防衛隊の敵だとしたら、私は···いや、そんなことがないことを願う。
午前の仕事を終えた私は、訓練をするために訓練場へ向かった。
汗だくになって転がっていると、レオ助長がとんでもないことを言った。
「やはりお前は剣が似合わない。」
使えないから上達しようと努力しているのだ。
だからといって、人の顔に向かってそんなことを言う必要がどこにある?
「姿勢がぎこちないですか?」
「それよりも、似合わない服を着ているような…とでも言うべきか?」
「まだ剣を使うのに慣れていないから、そう見えるだけでしょう。」
「そうかもしれないな。しかし、剣を習いに来た奴が野球のバットを持っているような感じがしてな。」
「ええ、何ですかそれ。」
「万物流転というものだ。剣であろうとバットであろうと、達人の域に達すれば結局は武器を使う人間の問題だから、一つの武器にこだわりすぎるなということだ。」
その言葉に私は動きを止め、彼を見つめて言った。
「では、レオ助長さんはその…万物流転というものに達しましたか?」
「いや。俺が本気で戦うのを見たことがないから聞くようだが、俺は武器なんて使わない。」
呆れた言葉に私は目を細めて彼を見た。
武器も使わないくせに、よくも万物流転なんてことを言うものだ。
この人はどれだけ厚かましいのだろう。
しかし、彼と私の間には容易には埋められない「経験の差」があったため、一概に無視できる言葉ではなかった。
忠告は心に留めておき、再び訓練を始めようとした矢先、誰かが私たちの方に近づいてきた。
「はぁっ、はぁ…今、緊急招集命令が出ました。」
どれだけ急いで走ってきたのだろうか。
私が見ていて苦しくなるほど息を切らしている。
「どういう理由で?」
レオ助長の言葉に、彼は私を見て顔色をうかがう。
私は招集から除外されたようだ。
ためらう彼の姿を見て、レオ助長が口を開いた。
「どうせ隣の奴にも俺が教えてやるんだから、はっきり言え。もったいぶるな。」
ちょっと、感動だぞ?
一生忠誠を誓います!
「あ…あの。確かではありませんが、九州地方にA級モンスターが出現したそうです。」
「!!」
これはちょっと衝撃的な言葉だな。
しばらく静かだったのに、一体どういうことだろう。
A級モンスターは、その存在自体が災厄であり。
世界的に見れば月に一度の割合で出現するが。
一度現れれば、その国に天文学的な被害を残すことで有名だ。
そんな奴が九州に現れたという。
「呼ばれたんだから行ってみよう。」
成り行きで私も彼と一緒に招集場所へ行った。
招集場所に到着すると、知っている顔が多く見えた。
普段通り過ぎて見ただけなので、声をかけたことはなかったが。
この場所にいる人の中で、私が一番序列が低いことは分かった。
私はレオ助長の隣で、九州に出現したモンスターに関するブリーフィングを聞いた。
「桜島火山にいた個体で、どういうわけかこれまで静かだったのが活動を開始しました。こちらを見ていただけますでしょうか。」
今回現れたモンスターは、最初から桜島火山にいたということなのか?
私は好奇心を抑えきれずにレオ助長にささやいた。
「あれ、どういう意味ですか?元々火山にいたかのように言ってますけど。」
「よく理解したな。最初からそこにいた奴だ。北海道にいる雪女を知ってるか?」
「はい。」
知らなければ日本人ではない。
いや、規格外モンスターに分類された奴だから。
文明と断絶して山奥に住む人でなければ、世界中の人が知っているだろう。
「そんなよく知られた奴らの他にも何体かいる。今回もそういうケースだが、民間に知られたらどうなると思う?」
みんな逃げ出さないだろうか?
そうなると、住める土地が狭くなるだろう。
そちらは地価も暴落し、安全な場所は天井知らずに高騰するだろう。
私たちが騒いでいる間、スクリーンには今回の元凶が姿を現した。
噴火する火山から現れる姿から、街を疾走する映像まで、巨体なのにかなり速かった。
情報を確認したマサヒロ隊長が顎を撫でながら言った。
「コードネームはオーガ。どういうわけか、奴の移動経路を考慮すると福岡市へ直行していることを確認した。突然の出来事であるため、残る人員も決めなければならず、全員が行くことはできない。少人数のみで出発し、現地支援を受けることにする。今出発すれば、オーガが福岡市に到着する前に遭遇できるはずなので、私が呼名する者は直ちに準備せよ。」
マサヒロ隊長が呼名した者の中にはレオ助長もいた。
行く者が決まり解散する時、私はマサヒロ隊長の元へ行った。
「何か用か?」
「私も行きたいです。」
「お前が行っても役に立たないだろう。」
そうかもしれない。
「レオ助長の監視も私の任務です。」
「…命は保証できない。それでも構わないならついてきてもいい。」
「防衛隊に入隊した時から、いつ死んでもおかしくないと思っていました。どうせなら、死ぬ場所くらいは自分で決められたらいいなと。でも、まだ墓場を探したい気持ちはありません。」
私の言葉を聞いた隊長は、私の片方の肩を「ポン」と叩いてその場を去った。
今回の件が危険だということは私も分かっている。
隊長の言う通り、死ぬかもしれない。
しかし、九州に行かないからといって安全ではない。
覚醒したあの瞬間から、私の命はすでに天秤にかけられていたと思っている。
マサヒロ隊長には、レオ助長を監視するという名目で同行すると言ったが。
その目的よりも、高位の覚醒者たちがどのように戦うのかをこの目で見てみたいという気持ちの方が大きかった。
覚醒者の戦いはベールに包まれていて、直接見なければ分からないものだ。今後、私が目標とする人々がどの程度の力を持っているのかを知らなければ、私もそこに到達するための道しるべを立てられないではないか。
私たちはオーガを討伐するために、防衛隊にある超音速飛行機に乗り込んだ。




