5. 足は重く、拳は軽く。
彼の話を聞いているうちに、レンと私の能力が入れ替わったのではないかという気がしてきた。
本をよく読むのだから、精神力はレンの方が高いのではないかと思うし、レンの肉体派の能力は、むしろ私の方が似合う気がしたからだ。
そして今、私たちの実力で現場に投入されれば死ぬから、一人前になるまで教育してくれると言った。
レンは剣を受け取り、モンスターと戦う際には心臓と頭を守るように言われた。
そうすれば最低限死ぬことはない、と。
「私は何もありませんか?」
「何が?」
「レンは武器をもらったのに、私は何もありません。」
「能力を置いて何をするんだ?」
私と同じ能力のタイプは、武器に頼るよりも精神力と想像力が重要だという。
必要なら想像力を鍛える訓練をするように言われた。
「どうやって?」
「どうしても分からなければ、映画でも見ればいい。」
その言葉を聞いた私は、ヒーローが出てくる映画を探して見た。
最初はこれでどうなるのかと思ったが、驚くべきことに成果はあった。
見つけた方法とは何かというと…ただ私が得意なことをするのだ。
体を張ること。
念力を拳にまとわせた。
私が見つけた、手の保護と同時に破壊力も得る方法だった。
しかし問題は、手に念力を纏うと、なぜか念力の発現が虎の手のようになったことだ。
以前の足の時とは違い、僕の手はそのままで、ぼんやりと虎のグローブが上から覆いかぶさったような形だった。
まだ未熟なせいか形は完全ではなかったが、正直なところ、自分がモンスターになったような気分になり、あまり気に入らなかった。
そんな僕の姿を見てレンは死ぬほど喜んでいた。
それでも、念力を纏った拳で壁を殴ると、壁にひびが入り、コンクリートがごっそり剥がれ落ちた。
一番良いのは、手が痛くないことだ。
「時には単純で無骨なのが一番だ。」
勢いに乗って精密にコントロールしようとしたが。
手の形のような繊細な作業は難しかった。
これからもっと多くの練習が必要になりそうだ。
「よし、そろそろ実戦に投入してもよさそうだ。」
「大丈夫でしょうか?」
「まだもっと学ぶべきことがあるんじゃないですか?」
「モンスターがお前たちが会ったやつだけだと思っているのか?」
レオ班長の判断のもと、私たちは初めての実戦を経験することになった。
私たちはモンスターを探しに、東京近郊の山を登った。
郊外で発生したやつで、一定の領域から外に出ないという。
「俺が他の班に、教育に使えるようなやつがいたら殺さずに放っておくように言っておいたから、お前たちのレベルに合ったやつが出てくるだろう。」
その時、茂みがガサガサと揺れた。
まさかモンスターかと思って緊張したが、飛び出してきたのは熊だった。
「班長、あれは違いますよね?」
「なぜだ、戦ってみるか?」
「熊は人を引き裂きます。」
「モンスターは危険じゃないとでも?」
たとえ戦えるとしても、モンスターでもない生き物を殺す覚悟などできていなかった。
熊も私たちを見下ろしてから、興味がないとばかりに通り過ぎていった。
その後も私たちはしばらくモンスターを探して山をさまよった。
あまりに時間がかかったので、我慢できなくなったレンが口を開いた。
「レオ班長。もしかしてモンスターがどこにいるか知っていますか?」
「いや。この山のどこかにいると聞いただけで、俺もどこにいるかは知らない。」
やはりレオ班長も知らなかったのか。
「家のように巨大な体格でない限り、山が広いから見つけるのに時間がかかりそうですね。」
「そうだな…何かおかしいな。普通、こういう領域を持つやつは、自分の領域に人が入ってきたのを幽霊のように察知するもんだ。本来なら今頃あいつが姿を現していてもおかしくないんだが……」
グオオオー!
その時。
遠くない場所から熊の鳴き声が聞こえた。
「行ってみよう、ついてこい。」
レオ班長を先頭に。
私たちは音のした方向へ走った。
そうして到着した場所では、熊同士の争いが繰り広げられている様子を見ることができた。
いや、よく見ると一体は熊で。
もう一体は熊のように見えるがモンスターだった。
ただその体格は熊とは比べ物にならないほど大きかった。
一方的な戦いだったが、熊は引き下がらなかった。
「あれを見ろ。」
レオ班長が人差し指で指し示した先には、子熊が無残に死んでいた。
「モンスターというやつらは、人間に敵対的なだけでなく、あのように他の動物にも敵対的なやつらだ。まるで生命を妬むかのように。世の中に不必要なやつらだ。」
モンスターは食べ物を食べないと聞いた。
それなのに、食べもしないのに幼い子熊を狩り、
弄ぶように踏みつけるやつを見ると、内側から怒りがこみ上げてきた。
「さっき私たちを通り過ぎた熊みたいですね、子熊を探していたんでしょうか。」
状況を観察するかのように見守っているレンの声は冷静だったが。
彼と長く過ごした経験から、彼が怒っていることを私は知っていた。
「今すぐにでも飛び出したいのはわかるが、俺が防衛隊の任務は何だと言った?」
防衛隊の任務?
「モンスターを殺すことです。」
「そうだ、もしあの熊が人間だと仮定したら、お前たちはどうする?」
「死ぬ前に助けなきゃ。」
「近すぎて一般人だと仮定すると、私たちの実力では助けられないと思いますが。」
「ではどうするつもりだ?」
「機会を見て復讐してやればいい。」
一つの質問に二つの答え。
私は助けると言い、レンは復讐してやると言った。
「どちらも正しい言葉だが、どちらもモンスターと戦うという前提を敷いているな。防衛隊の推奨指針は、モンスターと戦うために危険を冒すな、ということだ。」
「それって何ですか?」
「身の程を知れ、ということだ。モンスターと自分の力量を見極めて、無理そうなら逃げろ、一般人が死のうがどうだろうがな。」
「…防衛隊は市民を守るためにあるんじゃないんですか?」
「市民の命よりも覚醒者が優先だ。」
カッとなって、その言葉に反論しようとしたが。
モンスターと対峙していた熊が倒れた。
そして待っていたかのように、私たちを後押しした。
「お前たち二人なら相手にできるだろう。行け。」
初めての実戦。
葬儀場でモンスターとぶつかったことはあったが。
それは戦いではなく、ただ生きるためのもがきだった。
レンは剣を抜き、私は拳に念力をまとわせた。
適度な距離を保った私たちは、モンスターに近づいた。
覚醒して向上した身体能力で奴を圧迫したが。
念力をまとった拳で攻撃すると、スポンジを叩くような感触を受けた。
「こいつ、革が厚すぎる!」
レンは私よりも状況が少し良い程度。
防衛隊から支給された剣は平凡なものではなかったが。
厚い革のせいで深い傷を負わせることができなかった。
大きな体格に比べて素早い動き。
私たちが苦戦していると、レオ班長が大声で叫んだ。
「辛いなら言え。まだお前たちには無理だったと報告してやる。」
「それはいいんで、何か助言をください!」
先は長いのに、ここで引き下がるわけにはいかない。
「どうしてもと言うなら、拳は軽く、足は重く動かしてみろ。」
それはどういう意味だろう?
助言を求めると。
理解できないことばかり言う。
「レン!防衛隊から支給される剣は隊長も使うものだから、そう簡単には折れないはずだ!」
レンへの言葉を聞くと、
葬儀場での出来事を思い出した。
「レン!熊狩りだ。背後へ回れ。」
「ああ。」
レンは頭のいいやつだから、理解しただろう。
「おい、この野郎!図体ばかり大きくて、大したことないな!」
グオオオッ!
私の言葉を理解したかのように、奇声を上げながら巨大な丸太のような腕を振り回した。
鋭い爪が空気を切り裂く音が耳を刺した。
私は奴が腕を振り回すタイミングに合わせて。
膝を深く曲げ、体を弾ませて、そのままモンスターの胸に飛び乗った。
そして拳に全力を込め、胸にパンチを叩き込んだ。
素早く重い攻撃にバランスを崩し、よろめくモンスター。
バランスを崩して後ろに倒れる瞬間。
後ろにいたレンが剣で待っていたかのようにモンスターを貫いた。
しかし、分厚い胴体のせいで剣は半分しか突き刺さらなかった。
僕は素早く手に念力を纏い、奴を押しやった。
ドスン!
図体の大きなやつらしく、血が噴水のように噴き出した。
しばらく待っても反応がないのを見ると、確かに死んだようだ。
全てが終わったと思った途端、安堵感と共に止まっていた心臓が破裂しそうなほど鼓動した。
「おい!何してるんだ、助けてくれ。」
しまった!
私はモンスターの下敷きになって動けないレンを引き上げた。
大根を引っこ抜くように引き上げると、彼の体はモンスターの血でびしょ濡れになっていた。
「大根じゃなくて赤い人参だな。」
「何をバカなこと言ってるんだ?」
「お疲れ様。」
「ああ。お前もな。」
トコトコ。
「拳は軽く足は重く、ってそういう意味じゃなかったんだがな…とにかく、モンスターを処理したんだからよくやった。正直、お前たちのレベルより上だったから、助けを求めてくると思ったよ。」
その言葉に、私たちは何も言わずとも自然にレオ班長の方へ顔を向けた。




