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魔導書を拾う  作者: kjms
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44. 買い物は疲れる

防衛隊に入ってから、初めて手に入れた休暇。

これまでの間、自分にできる限りの力を尽くして努力してきたつもりだ。

だからこそ、たまには羽を伸ばすのも悪くないと思い、休暇をいただくことにした。


初めての休暇に浮かれ、海へ行く準備をしていた時のこと。

海に遊びに行って使えるような道具が、一つも手元にないことに気づいた。

そこで、水着や海で使う用品を購入するためにショップを訪れることにした。


私とユイ、そしてカナデの三人で。


休暇を取ったのは私一人だったが、私がユイの水着を選んでやるわけにもいかず、カナデに事情を説明したところ、ありがたいことに快く引き受けてくれた。


「いらっしゃいませ」


明るい声で店員が私たちを迎えてくれる。


「ユイちゃん、お姉ちゃんがユイちゃんに似合う可愛い水着を選んであげるからね」

「はい、お願いします」

「ふふ、お姉ちゃんに任せて。浜辺にいる男たちがユイちゃんを見たら釘付けになっちゃうくらい、素敵な女性にプロデュースしてあげるから!」


海に行く本本人ではないというのに、やる気に満ち溢れているカナデを見て、頼んで正解だったと思った。

帰りに何かお礼のプレゼントでも買って帰ろう。

女子二人が楽しそうに盛り上がっているところに、男の私が入る隙はなさそうだったので、ユイをカナデに任せて、私は店内をぶらりと見て回ることにした。


海に行ったら何が必要だろうか。

水に入るなら、まずは水着がなきゃ始まらない。

メンズの水着を適当に見繕い、派手すぎず問題なさそうなものを一つ選んでカートに入れた。


水着を一着買ったら、もう他に買うものなんてない気がする。

あっという間に、私の休暇準備のためのショッピングは終わってしまった。


二人は何をしているのかと様子を伺ってみると、水着を体に合わせながら、絶賛ショッピングに没頭中だった。

ここで私が「全部買ったから、早く選んで帰ろう」なんて言おうものなら、「デリカシーのない男」だと二人からからかわれる姿が目に浮かんだ。


せっかくの休日に、小言を言われる必要はない。


そうしてカートを押し、ゆっくりと店内を回っていると、スキューバダイビングの機材が目に留まった。

店員に尋ねてみると、私のカートを一瞥し、ダイビングのライセンスは持っているかと聞いてきた。


「必要なのですか?」

「大変申し訳ございませんが、専門家ではない一般の方には危険を伴うため、ライセンスをお持ちでない場合は販売いたしかねます。その代わりに……こちらはいかがでしょうか?」


そう言って案内されたのは、店の奥にある、

子供が使うような可愛らしいデザインの装備だった。


「シュノーケリング用のセットで、お客様のように旅行に行かれる方に大変人気の品です」


大して関心はなかったのだが、店員の話を聞くうちに興味が湧いてきた。

私はさりげなく尋ねた。


「旅行用、ということですか?」

「ええ。こちらの簡単な装備さえあれば、水面に浮かびながら水中を覗いて楽しむことができます。女性の方にも好評ですよ」


水中メガネとは違い、顔の半分を覆うゴーグルと、口に咥えて空気を確保するスノーケル、そしてフィン。

最初に見ていた本格的なものに比べれば、男らしさに欠けるし子供っぽくも見えたが、他の人もよく買っていくという話を聞くと、一つくらい持っておいてもいいかもしれないと思えてきた。


話を聞けば聞くほど、遊んでみたら楽しそうだし、ユイも喜ぶのではないだろうか。

自分一人のために買うわけではない。

女性に人気だというのだから、買っておけばユイやケイコも使うだろう。


私は慎重に、ブルーとピンクのセットをカートに入れた。

他にも浮き輪やビーチボールなどを放り込んでいるうちに、いつの間にか店内を一周し、お姫様たちが楽しんでいる場所へと戻ってきた。


「ちょうどいいところに来たわ。ユイに水着が似合ってるか見てあげて」

「私が?」


二人で適当に選べばいいのではないか。

そんなことを、男の私に見てくれだなんて。


「いいじゃない。納得いかないけど、今ユウマ兄さんしか見る人いないんだから。カナデお姉ちゃんの言う通り、どの水着がいいか一度見てみてよ。どれも可愛くて、どれを買えばいいか分からないんだもん」

「……役に立てるか分からないが、頑張ってみるよ」

「ぷっ、何それ。着替えてくるから待ってて。お姉ちゃん、手伝ってください」

「ええ」


カナデがユイと一緒に試着室に入っていった。

その時からだった。

女性主導のショッピングに付き合わされると地獄が始まるという、レンの言葉を思い出したのは。


試着室内で水着を着替えながら、二人がはしゃぐ声が外まで漏れ聞こえてくる。女子同士の、聞いているこちらが赤面するようなきわどい会話が聞こえてきてからしばらくして、ユイが外に出てきた。


「どうですか?」


水着姿がどうかと聞かれ、私は感じたままを口にした。


「いいよ。よく似合ってる」

「へへっ、本当ですか? 他のも着てみますね」

「待ってるから、ゆっくり着替えておいで」


最初は出だしも良かったのだが。


「今はどうですか?」

「すごくいい! 綺麗だよ」

「今度は?」

「ユイじゃないと着こなせないだろうな」

「へへっ……」


しかし、褒めるのも一回や二回ならいい。

何度も試着室を往復されると、座って反応しているだけでも体力が削られていった。


「最高だよ!」

「綺麗だ」

「うん」

「う、うん……」


当然、ユイに向ける称賛の声も、その熱量が冷めていかざるを得なかった。


「何よ、ちゃんと見てるの?」

「全部似合ってるから……」


魂の抜けたような褒め言葉に、ちゃんと見ているのかと釘を刺されてしまった。


その時、ふと思い出した。

以前、レンが女性とのショッピングがどれほど過酷かをため息混じりに嘆いていたことがあったのだが、それとは別に、そんな事態に陥った時にどうやって危機を回避するか、その方法を聞いた記憶が蘇ったのだ。


「結構時間が経ったけど、お腹空いてない? ご飯食べに行こうか。久しぶりに美味しいものでも食べよう」


最善の方法は、美味しい食べ物で釣ってその場を脱出することだ。


「うーん……お腹、空いたかも……いいですよ。はぐらかそうとしてるのは見え見えですけど、今回は見逃してあげます。カナデお姉ちゃん、美味しいもの食べに行きましょう。ユウマ兄さんがご馳走してくれるって!」

「じゃあ、高いものでも食べに行こうか?」

「やったぁ! 高いもの食べに行きましょう!」


他にも策はあったが……幸い効果は抜群で、追撃の必要はなかった。

ここを抜け出したいのは確かだが、それとは別に、自分も今は稼ぎがある。今日時間を割いて手伝ってくれたカナデには、美味しいものを馳走するつもりでいた。


だが、そこで。


「水着はどうするんだ?」

「どうするって、全部買いますよ」

「全部?」

「……ダメ、ですか?」

「いや、ダメなことはない。よし、全部買おう」


ユイが試着した水着を全部買ったとしても、自分が買った品物の値段に比べれば大したことはないからいいのだが……。

全部買うつもりだったのなら、私は一体何のためにあんな苦労をしたのだろうか。

ユイの喜ぶ姿を前に、そんな言葉は口が裂けても言えなかった。


「ありがとうございました。またお越しください!」


両手いっぱいに荷物を抱えて店を出ると、店員の笑顔が二倍になったような錯覚を覚えながらショップを後にした。


「カナデお姉ちゃんのおかげで、可愛い水着がたくさん買えました。ありがとうございます」

「私もユイちゃんと楽しかったわ。ユイちゃんの体が良くなったら、次はもっと可愛い水着を着て、男たちをメロメロにしに行こうね」


コホン……。カナデさんはまたこの子に何を言っているのやら。

変なことばかり吹き込まれなければいいのだが。

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