34. 氷の精霊とレン
京介と別れた後、用事を済ませたレンは再び合流するため彼がいる場所へ向かう途中、遠くない場所からモンスターの気配が徐々に近づいてくるのを感じた。
強くはないが、かといって弱くもない……感じられる動きはまるで群れを成しているようだった。
あり得るのか? モンスターが群れを成しているだと?
モンスターは同族同士でも仲が良くないうえに、
人間を獲物としてしか見ない凶暴な連中だ。
縄張り意識の強い熊のように他の生物を排斥する習性を持っている。
俺が間違っていなければ、今起きていることは非常に異例な現象だということになる。
だが、世の中に絶対という言葉はないと言うしな。
最近日本でこれと同じようなことがあったにはあった。
まさに「モンスターウェーブ」と呼ばれる事件。
本来なら群れるはずのないモンスターたちが一箇所に集まり、日本を混乱に陥れたことがあったが、鎮圧の過程で多くの人々が被害に遭ったという。
もしかしたら……俺もその件と無関係ではない。
モンスターウェーブの結末を知っている今。
誰かが俺に、また過去に戻してやるから、
その出来事が起きるのを防げと言われても……俺はそうしないだろう。
雪女から精髄を回収するのを止めろと言うのと変わりないし、それではユイを治療できないからだ。
今まで俺がやってきたことはユイのためだったから、多くの人に申し訳ない気持ちは持っているが、自分がしたことを否定はしない。
いつかユイが生きられる世界を作れるようになったら……その時は俺が犯してきた過ちをすべて明らかにし、罪を償うつもりだ。
それまでは止まらない。
たとえどんな代償を払うことになろうとも。
……いけないな。
またこんな考えをしてしまうとは。
これまでやってきたことの影響なのか。
最近になって、以前の自分とは違って性格がだんだん荒っぽくなっているのを感じる。
たまに自分でも驚くような考えが浮かぶ時があるが、そんな時は「誰でも悪い考えの一つくらい抱くものさ」と無理やり笑い飛ばしたりもした。
だが、最近その周期が短くなっているようで心配なのも事実だ。
能力を得るためにモンスターの心臓を吸収した副作用ではないかという疑いも持っている。
ギリッ。
奥歯を強く噛み締め、余計な雑念を振り払った。
今は感傷に浸って揺らいでいる場合じゃないからな。
京介のところへ行く前に、感覚に捉えた現場へ行ってみることにした。
トンッ。
レンは重力を反転させ、虚空を踏みしめるように体を押し上げた。
混雑した人混みを通り過ぎ、瞬く間に違和感を感じる地点に到着したレンは、あってはならない現場を目撃した。
「逃げろ!」
「助けてくれ!!」
悪い予感というのはなぜ当たってしまうのか。
今回の現象は自分とも関連があると確信したレンだった。
理由は簡単だ。北海道に行った時に遭遇した氷の精霊が目の前にいたからだ。
後で知った事実だが、精霊の特性上、気候の影響を強く受けるらしい。
雪女の影響で一年中冬を維持していた北海道でなければ形態を維持できないというから、今回の件が雪女と関連していなければ説明がつかない。
いずれにせよ。
目の前で人が死にかけているのに。
見て見ぬふりをして通り過ぎるほど堕ちてはいない。
レンは右手を胸の高さまで上げ、手を強く握りしめた。
パリン。
その瞬間、精霊が結晶のように粉々に砕け散った。
日差しを受けて輝く破片となり、虚空へ散っていく。
「あ、ありがとうございます。」
「ここからできるだけ遠くへ離れてください。」
その言葉に、後ろも振り返らずに去っていく男。
すでに北海道で精霊を相手にした経験があるため、一般的な攻撃は通用しないことを知っており、対応するのは容易かった。
「ふっ!」
レンは周囲を一度見渡した後、
両手を軽く握り込むように動かした。
動作は軽かったが、結果は違った。
周囲に散らばっていた精霊たちが、見えない力に押されたように一斉に押し潰され、粉になった。
一帯を一気に片付けたレンは、残っている精霊を探すために周辺を回りながら処理し始めた。
何度か相手にしてみた結果。
北海道で遭遇した精霊より弱いが。
単純に物理的な力だけで戦う覚醒者にとっては、依然として手強い相手だという結論を下した。
今の東京の天気は氷の精霊にとって敵対的な環境だから、放っておけば消えるだろうが、それでは人命被害が増えるので、できるだけ処理しておいた方が良さそうだった。
近くにはもう敵がいないことを確認し、別の場所へ移動しようとした瞬間、遠くの空で炎が舞い上がった。
真昼間だというのに、夕焼けのように空が赤く染まる。
「あの方向は……」
間違いなく京介だろう。
北海道では大した力も使えていないようだったが、今回は自分で何とかしているみたいだ。
あっちは当分気にする必要がなさそうなので、別の方向へ行ってみることにした。
そうして移動した先で、レンは新たなモンスターに遭遇した。




