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魔導書を拾う  作者: kjms
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20. アヤノ護衛、高速思考の覚醒者ミオ

「こちらへご案内いたします。」


図書館司書の綾乃は、黒いスーツを着た男たちに囲まれた状態で福島市を後にした。

彼女の役割は、W.D.C(世界防衛評議会)が開催される期間中、各国の覚醒者の前に姿を現し、健在であることを知らしめることだ。


毎年東京で開かれる評議会には、各国の覚醒者たちがそれぞれの目的を持って参加する。

力の弱い国の覚醒者たちは次世代の主役たちと親睦を深めるために集まり、

先進国の覚醒者たちは綾乃に会うために日本を訪問する割合が大きかった。


彼女が防衛隊で務める職責は図書館司書だ。

ここで言う本は一般的な本ではなく、魔道書を指す。

綾乃が魔道書をどのように管理しているかは極秘で知られていないが。

先進国の覚醒者たちが年に一度日本を訪れ、合意された数量の魔道書を本国へ持ち帰ることが彼らの主要な任務だった。


そのため日本としては、綾乃が他国の覚醒者に露出されることを嫌がるが。

逆にW.D.C(世界防衛評議会)のような国際会議を設けてでも、彼女が無事であることを他国に知らせる必要があった。


そうせずに隠すことを選択すれば、大激変の時に起こった惨事が再び繰り返されるのは明白だったからだ。


綾乃の覚醒能力がどこかに存在する図書館へ向かう鍵であることを知っていても、軽々しく動かずに日本に集まる理由もそれにある。


いや、正確に言えば、初期の混乱の中で日本の覚醒者たちは外勢の侵入を阻止することに成功した。

それに対し、自国の敗北を想定していなかった国々が、これ以上の損失は手に負えないと判断し、新たな体系が作られ、それが今日のW.D.Cの姿に繋がったのだ。


綾乃が自分を東京へ連れて行く男たちを見ながら言った。


「私のためにお疲れ様です。」


しかし、返ってくるのは冷たい沈黙。

彼女には慣れたことであったため、返答がなくても気にしなかった。

代わりに、走る車の窓の外を眺め、無関心な目でガラスに映る護衛たちを目に焼き付けた。


自分を護衛している覚醒者たちは、防衛隊の中でも人材と呼ばれるような人々だ。

特に、すぐ隣に座っているミオさんは、私が不便にならないように日本政府が配慮という名目で割り当てた人物だった。


だからといって、女性だからといって男性覚醒者より弱いわけではない。

今隣にいるのは、対人戦に特化していると評価されるミオさんなのだから。


彼女の覚醒能力は高速思考。

刹那の瞬間、他人よりもはるかに多くの思考をすることができ、元特殊部隊出身としての経験で、戦闘では常に状況に合った選択を下すことができるという。


東京へ戻る道中。

綾乃は窓の外に見える麦畑の風景を見た。


「綺麗ですね。」


秋風に揺られ、黄金色の波を立てる。

周囲で起こることは一時忘れろと言わんばかりの風景が、彼女の心を落ち着かせた。


ぼんやりと外を眺めている瞬間。


キーッ!

ドスン。


体が宙に投げ出されるような感覚と同時に、世界が逆さまになるのを感じた。


「うーん……。」


精神を覚醒させた綾乃は、周囲の状況を素早く確認した。

体がひっくり返っており、車の天井が地面に向かっていることから、車が横転したことが分かった。

シートベルトをしていたため大きな怪我はなかったが、事故に遭った時の記憶がないことから、軽度の脳震盪を起こしたようだった。


ウジッ。


「テロです。頭に注意して外に出てください。」



テロに遭ったミオは、車両が横転する状況で素早くドアを開けて外に飛び出した。

覚醒者の身体能力と高速思考が加われば、一般人には想像もできないことを成し遂げることができる。


綾乃を護衛していた人員の中で、最も早く車から脱出したのはミオだった。

続いて車から脱出してくる人員に、周囲を警戒するように告げようとしたその刹那。


フン、フン。


彼らの額に風穴が開き、倒れる姿を見た。

ミオは慌てて両腕を上げて頭を覆った。

案の定、すぐに腕を伝って強烈な痛みが感じられた。


その瞬間、頭の中に多くの考えが駆け巡る。

銃弾か?いや、それでは貫通力と負った傷が異なる。

腕に異物も感じられないことから、覚醒者の仕業が有力だった。


地面に着地したミオは素早く動いて、降りた車の後ろに隠れた。

そして、ひしゃげたドアを無理やりこじ開けるようにして、中にいた綾乃を外に出した。


運転手は血を流して死んでいる。


「頭を下げてじっとしていてください。覚醒者が襲撃しました。」


ウジッ。


ミオはサイドミラーを引き剥がした。

そして引き剥がしたサイドミラーを頭上に掲げ、慎重に周囲を鏡で照らした。

遠くに三人の姿が見える。誰なのか識別はできないが、目鼻立ちを見る限り三人全員男だった。


少し前まで覚醒者が多い場所から離れたばかりだ。

容疑者を特定するのは難しいが、おそらく彼らの一味だろう。

綾乃を連れて行く自信があるから、今が好機だと考えてこのような手段を取っているのだろう。


ミオは皆に聞こえるように叫んだ。


「車の後ろに隠れろ!援護部隊が来るまで位置を死守する。」


そして急いで所持していた呼出機を操作し、救助信号を送った。

敵は雪女が南下している今、混乱に乗じて綾乃を狙っているようだ。

そこに全力を投じると本来の予定より遅れるかもしれないが…綾乃の重要度を考えれば、優先順位を変えてでも救助隊を送ってくるはずだと信じた。


元の時間より少しだけ持ちこたえればいい。

綾乃の護衛に選ばれた者全員が覚醒者だ。

一般人だった頃から彼女のように専門的な訓練を受けていたわけではないが。

どこに出しても能力面では引けを取らない人々だった。


別途言わずとも、生き残った人々は状況を把握して対応に当たった。

それぞれの能力を活用して敵の攻撃に反撃していると。


ドカン!

ドンドン、ドンドン。


爆発するような音がして、近くにあった車が吹き飛んだ。


「うわあ!俺、俺の足!」


その車両の後ろにいた覚醒者たちは、戦闘の続行が不可能になった。


車の後ろに隠れても、車を吹き飛ばす攻撃には何の役にも立たないことを確認したミオは、首を回して別の車の後ろに身を隠している護衛たちを見て頷いた。


カチャ。


残りの護衛隊員全員が一時的に車両の外に出て、敵に向かって駆け出した。


フン、フン。


その過程でまた一人が倒れた。

静かだが銃弾のように速い攻撃、さらに精度まで加わり、敵も侮れない相手だった。

ミオは腰に差していた対覚醒者用銃を取り出して弾倉を装填し、敵に向かって構えた。


パン、パン。


一定の間隔を置いて飛んでいく二つの弾丸。

曲線を描きながら誰かの死に向かって進んでいく。


パン。


「おお。音が格別だな。」

「気をつけろ。俺はお前の世話係じゃない。」


一発はサングラスをかけた男の軽い手つきに弾かれ、

同じ軌道を描いて飛んできた二番目の弾丸は、体格のいい男が手のひらを広げて防いだ。


「ごめん。」


サングラスをかけた男は自分の過ちを認め、素早く謝罪した。


「デボロさん、あまりそう言わないでください。アキさんも失敗することもありますよ。」


マジシャン姿のタクミが歪んだ帽子を整えながら二人の間を取り持った。


「同じ軌道で飛んでくるとは思わなかった。二度目はないぞ。」

「…ああ。雑魚相手に時間を長くかける理由はないから、隊長が来る前に終わらせよう。」

「僕は後ろで二人を応援しています。ファイト!」


タクミが後ろに下がると、それが合図であるかのように、迫りくる敵に向かって走り出した。


先行するデボロの耳元を、アキが口から放つ空気弾が高速で通り過ぎていった。

敵が能力を使ってデボロを攻撃していたが、アキの適切な補助と最前線で培われた実力には及ばなかった。


一つ気になるのは、車の後ろに隠れて時折目を狙ってくる攻撃だ。

デボロはむしろ相手が機関銃を乱射してくれた方がいいと考えるほど厄介な攻撃だった。


敵を殺す時も。

次の一歩を踏み出す時も。

どの方向に動いても。

目を狙って攻撃が来るので。

戦闘中にひどく気が散るのだった。


最初、アキを狙って飛んできた弾丸を手で防いだら。

銃を無差別に撃つのは無駄だと知り、目だけを執拗に狙ってくるのだ。


銃を使う覚醒者の中でこれほど厄介な敵は、彼の立場でも初めてだったが。

もしここが広い野原ではなく、建物が多い市街地だったらかなり厄介な相手だっただろうとデボロは思った。


しかし、戦いはいつだって公平ではないものだ。


「終わりだ!」


地面を蹴って高く飛び上がったデボロは、半壊した車を飛び越えて反対側に着地した。


ドン。


「うん…?」


しかし誰もいない?

一瞬の間に逃げたようだ。

デボロは広がる野原を見渡し、叫んだ。


「行けるものならどこかネズミのように遠くまで逃げてみろ!クハハッ!」

「逃がしたのか?」


いつの間にか周囲の片付けを終えたアキとタクミがデボロの隣に立った。


「いや、見ればわかるだろ?俺が逃がしてやったんだ。」

「…そうとでもしておこう。タクミ、頼む。」

「任せてください。もしものために周りにたくさん仕掛けておいたので、すぐに網にかかるはずです。」


その言葉が嘘ではないかのように。

しばらくして黄金色の野原に悲鳴が響き渡った。



チームメイトたちが死んでいくのを見たミオは、彼ら相手に勝ち目がないことを悟った。

彼女の任務は、援護が来るまで綾乃を守ること。


敵の中に傍観している一人が参戦する前に、この場を離れなければならないと考えた。


「今から身をかがめて動きます。」


だから、チームメイトが命をかけて時間を稼ぐ間に、野原に身を隠した。

麦が腰まで伸びていたので、密かに動くのは難しくなかった。

風になびく麦穂のせいで、どこを見ても同じ景色しか見えないだろう。


ミオと綾乃は一言も話さずに広い畑を横切り、事件の現場から遠ざかった。

これくらいなら簡単には見つけられないだろうと感じた時、前方で人の気配がした。


銃を持って動くと発生する騒音のためその場に置いてきたが、今からでも懐の銃を取り出すべきかと思った。

いや、直接見て対応しても遅くはない。


むしろ銃を取り出して一般人が見て叫んだら、それがより危険な状況を招く。

この土地の農夫かもしれないという可能性が、銃を取り出すのをためらわせた。


二人は息をひそめて、人が通り過ぎるのを待った。

しかしミオの願いもむなしく、二人を探しに来る人がいた。


しかし農夫ではない。

日焼けしていない肌と、都会でしか見ないような服装。

瞬間、この男がなぜここにいるのかという多くの疑問が湧いたが、まずは彼を落ち着かせようとした。


「しっ。」


人差し指を口元に持っていった。


無関心な目で見下ろす男。

元々冷静な人間なのかと思った瞬間。

곧その男が手を上げ、大きな声で叫んだ。


「ここ!ここにいます!私が見つけました!」


何かがおかしい!

彼の叫びを聞くやいなや、ミオは綾乃の手を引いて野原を走った。


「走って。」


数歩走っただろうか。

ミオは手に感じる抵抗感に足を止め、後ろを振り返った。

綾乃が動きを止めてその場に立っているではないか。


「なぜ?」

「彼らが望んでいるのは私です。今からでも私を置いて行けば、生き残れます。今日はあまりにも多くの死がありました。私はミオさんだけでも生きていてほしい。」

「私の任務は綾乃さんを守ることです。」

「彼らが望むものを得るまでは私は大丈夫だから、他の人々と後日を期しましょう。待っています。」


綾乃の言葉通り、一人でここを脱出する方が後日を計るのに役立つ。

敵の能力も今は推測できるので、対応チームを組めば綾乃を奪還する勝算はあるだろう。


彼女も望んでいることであり、どうせ自分が奴らを食い止めても今の状態では1分の時間も稼げないだろうから、今できる最善の選択をしなければならなかった。


「…わかりました。必ず助けに戻ってきますから、それまでご無事でいてください。」


必ず助けるという決意を固めて振り向いたその時。

敵の影がミオの背後に迫っていた。

ドン。


冷たい感覚がミオの首を締め付けた。

足が地面から離れ、行き場を失った。


「ぐふっ……」

「やっぱりタクミさんの能力は本当に便利ですね。」


一瞬、これからの方向を決めかねていた間に、ミオは襲撃してきた男たちに追いつかれたことを悟った。


「おい、女、かなり厄介だったぞ。そろそろ終わらせよう。ん?何だって?」


デボロはうめく女の言葉を聞くため、首を掴んでいた手を顔に近づけた。


「もう一度言ってみろ。あの世へ行く道、遺言は残さないのか?」


敵に捕まった以上、援軍が来るまで少しでも時間を稼がなければならなかった。


「魔道書を奪いに来たのか?」

「じゃあ、なんでこんな田舎まで来たと思う?」

「…魔道書がある場所に行くには綾乃さんが必要だろう。彼女を殺したら魔道書は見つけられない。」

「ああ?それは俺たちがやることだ。お前は自分の心配でもすればいいんじゃないのか?面白い女だな。気に入った。防衛隊を辞めて俺たちと一緒に働かないか?」


その言葉を聞いたミオは、綾乃が無事であることを知った。


「ええっ?!デボロさん、そんなことしていいんですか?」

「なぜだ?こういう遠距離覚醒者いればいいだろ。おい、女、どうだ?」

「…それなら私も助けてくれるのか?」


ゴキッ。


デボロが首を掴んでいた手に力を込めた。


「いや、仲間として迎え入れようと思って尋ねたのではなかったのですか?」

「時間稼ぎしようとしているのが目に見えるだろ。生意気な。」


そして、ぐったりした体を野原の片隅に片付けてしまった。


残ったのは綾乃と三人の怪しい男たち。

彼らの視線が一斉に綾乃に向けられた。


綾乃が口を開いた。


「シンイチロウさんはどこですか?本来なら一緒にいることになっていたはずですが。」

「さあ?ここの仕事が終わったら、俺たちに帰ってろと言っていました。多分…雪女のいる場所に行ったんじゃないですか?」

「隊長もまったく。放っておけば防衛隊の連中が勝手に処理するだろうに。」


まるで互いを知っているかのような様子だったが。

間もなく、レンとキョウスケ、ゲンドウが現場に到着した。


「こんにちは。綾乃です。精髄は持ってきましたか?」

「あなたが図書館司書の綾乃?」

「はい。」


レンはユイの治療が一歩近づいたことに安堵し、北海道から持ってきた精髄を見せた。

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