2. 蘇生
夢を見た。
いや、夢だと思っていたが、すぐに気づいた。
これは僕が忘れていた、今朝の出来事だった。
僕は書店でレンに贈るプレゼント用の本を選んでいた。すると一冊の本からまるで後光が差しているように感じられ、不思議に思って手を伸ばし、それを手に取ったのだが、書店とは縁遠い僕でも、手にしている本がこの場所にふさわしくない代物だということは、見た瞬間に分かった。
元の場所に戻すのは気が進まず、店員にいくらか尋ねようとした瞬間、本から野獣の姿が飛び出してきて、僕を飲み込んだ。
「ハッ!」
全身が寝汗で濡れていた。
目を開けると、僕は病院のベッドに横たわっていた。
見慣れない天井だ… どうしたことだろう?
レンの家族と旅行に行く途中で、モンスターの襲撃を受けたはずだが······
クッ。
体が悲鳴を上げる。
全身を殴られたようだ。
気を失う前に見た男に助けられたのだろうか?
僕が生きているのを見ると、防衛隊が人を送ってきたのは確かだった。
無事だという安堵感がこみ上げてくると、一緒にいた人たちの安否が心配になった。
病室に横たわって周囲を見回したが、部屋には僕以外誰もいなかった。
豪華な個室とは。
いくらかかるのだろう?
レンの家族は別の病室にいるのだろうか?
ガラガラ。
その時、ドアを開けて看護師が入ってきた。
彼女がベッドの横にある機械を見ながらボールペンで書き込んでいるのを見て、僕はそっと口を開いた。
「あの···一緒にいた人たちはどこにいるか分かりますか?」
「お目覚めになりましたか。今、病院には多くの患者さんが運ばれてきていますので。関係者の方をお呼びしますので、楽にして休んでいてください。」
「ありがとうございます。」
確かにあんなことがあったのだから、怪我人も多いだろう。
誰かを呼んでくれるというから、今は看護師さんの言う通りにしよう。
看護師が出て行き、リモコンでチャンネルを回した。
すると、テレビで僕がいた場所をヘリコプターから撮影した映像が流れた。
「ご覧の通り、人命と財産への被害は深刻です。今回現れたモンスターはB級で、防衛隊隊長マサヒロ氏が迅速に出動し、被害を最小限に抑えたと······」
「テレビに穴が開くぞ。」
誰かが病室に入ってきた。
僕が人が入ってくるのも気づかないほど集中していたのだろうか?
でもどこかで見たことがあるような···見覚えがある。
眉間に皺を寄せながら記憶を辿る。
頭の中をかすめるように通り過ぎた人が浮かんだ。
「...防衛隊隊長さん?」
「俺を知っているのか?」
眉を吊り上げ、驚いた顔を見せる。
「事故に遭って気を失う前に助けてくださった方をぼんやりと見たのですが、ニュースで防衛隊隊長が解決したと報じられていたので、そう推測しました。」
「判断力は悪くないな。」
頷き、満足したようにニヤリと笑う。
何が良いのか分からないけれど、恩人が喜んでいるのだから僕も嬉しい。
僕は心からの感謝の言葉を伝えた。
「おかげで助かりました。ありがとうございます。」
「できたからしただけだ。体の具合はどうだ?」
「大丈夫な気がします。」
「それは様子を見なければ分からないだろうな。しばらくは体を大事にしろ。」
「はい、ところで僕と一緒にいた人たちは無事ですか?」
部屋に訪れる静寂、部屋の空気が変わった。
僕は何か間違っていることを直感し、もう一度尋ねた。
「一緒に車に乗っていた人たちはどうなりましたか?」
僕がじっと見つめると。
彼が、仕方ないといった様子で口を開いた。
「お前と一緒に車に乗っていた者たちがどうなったか聞いているのなら、死んだ。大人の男女が一人ずつ、それとお前と同年代に見える男が一人だ。幸い身体は大きく損傷していないから、葬儀は無事に執り行える」
信じがたい言葉に、頭がくらんだ。
僕が病院にいる以上、彼の言葉は事実なのだろう。
むしろ、これほどまでに直截的にレンとその家族が死んだと聞かされたことで、頭の中ではこれが現実なのだと実感が湧いてしまった。
あの状況で生き残ったのは、自分一人だけだという事実を。
頭で理解しているからといって、それで納得できるわけではなかった。
胸に大きな穴が開いたような、言いようのない空虚さが押し寄せた。
「今のうちに存分に泣いておけ。明日、また来る」
レンとその家族の報せに衝撃を受け、呆然としている僕を残し、彼は再訪を告げる言葉を置いて病室を去っていった。
ぽろぽろ。
彼が部屋を出るのを待っていたかのように、涙が溢れ出した。
またしても、モンスターに大切な人を奪われた。
僕は枕に顔をうずめ、長い間、声を上げて泣き続けた。
翌日。
泣き疲れて眠ってしまった僕は、腫れ上がった目を辛うじて開けた。
内心夢であってほしかったのに、本当だったなんて···最悪だ。
「はぁ······」
病室に座っていると、ふと昨日隊長から聞いた言葉を思い出した。
確かに、僕と一緒に車に乗っていた成人男女と、同年代に見える男が死んだと言っていた。
昨日は正気ではなかったから気づかなかったが、改めて考えるとユイが死んだという話は聞いていないことに気づいた。
その瞬間、僕はベッドから飛び出し、ドアを開けて外に駆け出した。
そしてまっすぐにナースステーションへ向かった。
「ここに患者さんでイトウ・ユイという人はいませんか?」
「どういうご関係ですか?」
「一緒に事故に遭ってここに来たのですが、知人です。」
「申し訳ありませんが、ご家族でなければ病院のポリシー上、お教えすることはできません。」
「いや、でも······」
トン。
その時、僕の肩を掴む手が感じられた。
誰かと思ったら、昨日見た防衛隊隊長という男だった。
「朝から元気そうだな。健康そうで何よりだ。とりあえずここでそうしているよりも、二人で昨日話しきれなかったことでもしないか。外に良い場所があったが、気分転換がてら行かないか。」
行く途中、病院内のカフェで抹茶ラテを注文した。
「気分が優れない時は美味しいものを食べるのが一番だ。」
僕はストローに口をつけなかった。
冷たい抹茶ラテを手に持ったまま、昨日聞いたことを尋ねることにした。
「僕と一緒に車に乗っていた人たちは死んだって言いましたよね?」
「そうだったな。」
「一緒にいた女の子はどうなりましたか?」
「...ここの病院にいる。」
僕と同じ病院にいるという。
生きているという言葉に安堵した。
「看護師さんに聞いたら、家族じゃないからどこにいるか教えてくれないって言ってたんですけど、一緒に行っていただけませんか?」
「ふむ···ダメではないが、今行かなければならないのか?」
なぜかユイの状態が良くないという口ぶりに不安感が押し寄せた。
僕でさえこの状態なのに、一人残されたユイが今どうなっているのか想像すらできなかった。
知らんぷりはできない。
隣で力になってあげたい。
「はい。」
「よし。本人が望むならな。」
飲み終わったカップをゴミ箱に入れ、僕は彼の後を追った。
到着したのは重症患者が滞在する病室だった。
ドアを開けて入った。
ベッドには人が横たわっていたが、包帯で顔を覆われていて、ベッドの前の名前がなければ誰か分からないほどだった。
ベッドの横に行き、そっと彼女の名前を呼んでみたが、ユイの声は聞けなかった。
植物人間判定を受けたという衝撃的な知らせと、合同葬儀の前に火葬を進めるという話を聞いた。
防衛隊隊長に会ってから、多くの話を聞いた。
彼の名前はサトウ・マサヒロ。
日本の東京支部防衛隊の隊長として、仕事を終えて防衛隊に戻る途中で事件が発生したため、彼が直接動いたという。
そして僕に運が良かったと言った。
彼でなければ、現場に隊員が到着するのが遅れて死んでいたはずだ、と。
その言葉に、もっと早く来ていればレンの家族は助かっただろうと言いたかったが、それは子供の駄々っ子だと分かっていたので口には出さなかった。
そして。
「お前には才能があるぞ。」
「才能ですか?」
「怪物を殺す才能だ。」
その言葉に、心臓が激しく脈打った。
僕にそんな才能があったのなら、なぜもっと早く現れてくれなかったのか。
そうしていれば、僕の両親も、レンも、彼の家族も守れたはずなのにと、激しい怒りが込み上げた。
すでに起きてしまったことは、もう取り返しがつかない。
僕に怪物を裁く才能があったとしても、それはもう必要ないのだという絶望が押し寄せた。
その二つの感情が混ざり合い、病室で寂しく横たわるユイの力になりたいという決意が、心に深く刻まれた。
「家ほどの大きさの奴とぶつかって、一般人なら死んでいた衝撃だ。俺が到着した時、お前は覚醒したようだった。そこに横たわっている子もお前のおかげで助かったようなものだから、あまり落胆するな。防衛隊が最善を尽くして治療を助けてくれるだろう。そうすれば目覚めるかもしれない。心の整理がついたら、防衛隊を訪ねてこい。」
だから今、僕はレンが旅立つ最後の姿を見るために火葬場に来た。
どれだけ多くの人が死んだのか、すでに多くの遺体が火葬炉に入っていた。
レンの番が来た。
職員が棺を運ぶ際に起きた、異変。
レンの遺体が入っている棺が、「ガタッ」と動いた。




