第二話
二人の同棲生活が始まって早数日、たくさんのお菓子に囲まれ、隣には可愛い女の子がいて、たまにその子がぺろぺろしてくるという甘く刺激的な日常にサトルは段々と慣れ始めていた。
そんなある日、フワリがお菓子の補充のために買い物へ出ていた時のこと、サトルが部屋でくつろいでいると、不意にインターホンが鳴った。「ん?フワリが戻ってくるには早いし…誰だろう?」不思議に思いながらサトルが室内のモニターを覗くと、そこには口元のほくろがセクシーなボブカットの美女が映っていた。
『フワリちゃん、約束通り会いに来たわよぉ…』美女が優しい声でモニター越しに語りかけてくる。
「すみません、フワリは今出掛けてて…」サトルがそう答えると、美女は想定外の相手からの返答だったからか、一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに納得したように頷き、『あなたがフワリちゃんと同棲してるって子ね?フワリちゃんから話は聞いてるわ。初めまして、フワリの姉のユキノです。』そう言って優しい微笑みを見せた。
◇ ◇ ◇
「ごめんなさいね、急に押しかけちゃって…」部屋に通され、申し訳なさそうにソファに座っているユキノにサトルは、「これ、よかったら…」と、飲み物を差し出す。
「ありがとう、優しいのねぇ…フワリちゃんが一緒に暮らしているのがいい人で、お姉さん嬉しいわ。」
「い、いえ!そんな…」
「それにしてもフワリちゃん、昔からちょっと抜けてるのよね…あなたと出会う前はあの子、『寂しいから会いに来て!』って毎日のように連絡してきてて、その時にした約束通りの時間に会いに来たのに…」
「フワリ、忘れちゃってたみたいですね…」
「素敵な彼氏さんができて私のことなんてどうでもよくなっちゃったのかしら?今度はこっちが寂しくなっちゃうわ…」口ではそう言いながらも、ユキノの表情はどこか嬉しそうだった。
「あの…ユキノさん、フワリとは喧嘩中なんじゃ…?」サトルは意を決して気になっていたことを聞いてみた。
「ああ、フワリちゃんが喧嘩しているのは私のもう一つ上の姉、マイカ姉さんよ」
「あ、そうだったんですか…」
サトルは自分の持っていた様々な心配が杞憂だったとわかったが、それでもまだ気が気ではなかった。同棲中の彼女の親族との突然のエンカウントというのももちろんなのだが、それ以上に、(デカすぎる…)ユキノが少し動くだけでもその胸元でゆらゆらと揺れる、二つの巨大なメロンがサトルの意識をかき乱していたのだ。
(フワリもだいぶ大きい方だけど…アレはちょっと比べ物にならないぞ?)一般的には巨乳に分類されるであろうフワリとも格が違う、爆乳や超乳と言われるような存在に、サトルはこの時始めて対面していた。
「…ねえ?」「は、はい!?」(まずい!ちょっと見過ぎたか?)サトルは非難されることも覚悟していたが、ユキノは心配そうな表情を浮かべると、「あなた、ちょっと疲れてるみたいに見えるけど大丈夫?もしかして普段、フワリちゃんに振り回されたりするんじゃないかしら?よかったら…お姉さんが癒やしてあげましょうか?」と、少し身を乗り出してサトルのことをじっと見つめてきた。
「癒やすって、どういうことでしょうか…?」サトルがユキノの提案に対する疑問と、さらに近づいてきたメロンに気を取られていると、「うふふ、こうやって…ね?」ユキノはいきなりサトルのことを抱き寄せ、「ほら、いい子いい子♡サトルちゃん、頑張ってるんだから、今はリラックスしてお姉さんにすべて任せて…♡」そう言いながらサトルの頭を優しく撫でてきた。
(うわ…めっちゃ落ち着く…でもこれ、絶対にヤバい!相手は同棲中の彼女のお姉さんだぞ!?)サトルは頭ではそう理解していても、ユキノの優しい声と温もりに逆らえず、思わず身をゆだねてしまう。
「サトルちゃん、もっと甘えたい気分になってきたんじゃない?ふふ、お姉さんのお膝で寝てみる?」
「ええ!?」(何それ…めっちゃ恥ずかしいけど…断れない…ユキノさんの雰囲気に惹きこまれる…)
気づいたときにはサトルの頭はユキノの膝に乗っていた。
「フワリちゃんが赤ちゃんだった時のことを思い出すわ…フワリちゃん、いつもこうやって私に甘えてたの♡」サトルは視界を巨大なメロンに完全に覆われた状態で、その向こう側から降ってくるユキノの優しい声をただただ浴び続ける。
(なんだこれ…頭がふわふわしてきた…)
「サトルちゃんは今からおっきな赤ちゃんよ。赤ちゃんだから何も考えなくていいの…お姉さんが全部面倒見てあげるからね…♡」
(やばい…ユキノさん優しすぎる…フワリに悪いのに…離れられない…)
その時だった。
「ただいまー!めっちゃ美味しそうなお菓子いっぱい買ってきたよ!えへへ、早く食べよ…って、あれ!?ユキノ姉さん!?なんでここに!?」
「フワリちゃん、おかえり♡約束してたの、忘れてたでしょう?」
「あー!ごめん、ユキノ姉さん、すっかり忘れてた!」
「まったくもう…でも、サトルちゃんが優しくお相手してくれたから、とっても楽しかったわよ♡」
「ちょっとサトル君!なんでユキノ姉さんのお膝で寝てるの!?もー!ユキノ姉さん、サトルくんに変なことしないでよー!」
「うふふ、ごめんねフワリちゃん。サトルちゃんがちょっと疲れてそうだったから…少し甘えさせてあげちゃった♡ね、サトルちゃん?」
「え?あ!はい…ごめん、フワリ…ユキノさんが優しくてつい…」
「もー!ユキノ姉さん、ダメだよ!サトル君は私の彼氏なんだからー!」
フワリはユキノの膝と乳の間からサトルを救出すると、いつもより激しくサトルの頬を舐め始めた。
「ぺろぺろ~♪」
「ちょっとフワリ!?お姉さんの前だよ!?」
「あらあら、フワリちゃん…人に盗られたくない物をぺろぺろ舐めるちっちゃな頃からの癖、まだ直ってなかったのね?お行儀が悪いからやめなさいってずっと言ってるのに…ちょっと甘やかしすぎたかしら?」
◇ ◇ ◇
ユキノの帰宅後、フワリとサトルはソファに並んで座り、話をしていた。
「サトル君、ユキノ姉さんに会ってみてどうだった?」フワリの問いかけにサトルは、「なんか…すごい人だったな…」と、遠い目をしながら答える。今度は逆にサトルがフワリに、「ユキノさんって普段どんな人なの?」と問いかける。
「え~サトル君、ユキノ姉さんのこと気になっちゃう感じ?えへへ、でも分かるよ~!ユキノ姉さん、めっちゃ魅力的だもんね♪実はね、ユキノ姉さん、高級クラブで働いてるの!しかも~…No.1の人気嬢なんだよー!」「高級クラブの人気No.1!?」サトルは目を丸くして驚きながらも、ユキノの纏うあの見ているだけで惹きつけられるような独特のオーラを思い出しながら納得をした。
「ユキノ姉さんに会った男の人、みーんなユキノ姉さんに夢中になっちゃうんだ~。でも、サトルくんは私の彼氏なんだから、ユキノ姉さんに夢中になっちゃダメだよ♪」フワリは上目遣いでサトルを見つめながら、その首筋をぺろっと舐める。サトルはそんな奔放なフワリの行動にドキッとする。
「ユキノ姉さん、優しくて大好き♡でも、サトル君には私のことだけ見ててほしいな…♪」
「僕はフワリのことしか見てないよ。」
「嘘、サトル君めっちゃユキノ姉さんのおっぱい見てた「そんなことより、ユキノさんが帰り際に言ってたことだけど!」
かなり強引に話の流れを変える形になったが、サトルがユキノの帰り際の言葉を気にしていたのは本当のことだった――
『フワリちゃん、一回くらいは実家に顔を出しなさい。マイカ姉さんも心配してるから…』
「フワリの実家ってどこなの?」
「ここから徒歩10分…」
「近っ!?」