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第1.5話 あの日の薫、戦いの傷

この話は第1話の後で、第2話の前の話となっております。

 初めてアンジェストロになって、初めて戦闘を経験した日の夕方。

 天土薫は妖精たちを抱えながら、走って帰路についた。


 「た、ただいまっ!」


 薫はぶっきらぼうにそう伝えると、階段を駆け上がり自身の部屋に駆け込んだ。

 室内は学習机も、本棚も、ベッドもしっかりと配置されており使いやすいように並べられていた。


 「わっ…そっか、私が勝手に入れてって言ったんだった。えっと、ラパン…たちは、ちょっと、家族に見つからなさそうなところに隠れててもらえる?」


 「わかったラパ。…カオルは何かするラパ?」


 「ちょ、ちょっと、シャワーをね…戦って汗かいちゃったから…ほら」


 そう言って、自分の背中を見せる。確かに薫のスウェットには汗が滲んでいた。

 ラパンたちは薫の言う通り、ベッドの下など、目立たない場所を選んで隠れた。


 薫はクローゼットから自分の下着や替えの洋服を取り出し、一階へ降りる。

 すると、母親の花子から声をかけられた。


 「どうしたの?そんなに汗びっしょりで…」


 「公園行っててさ。結構広くて見るところ多くて楽しんじゃった!」


 流石に引っ越し初日に汗だくで帰って来た娘を心配する母親。

 薫は、見つけた公園が思ったより広くて歩き回ってしまったという言い訳をして、シャワーを浴びると言い、その場を後にした。


 「はぁ……はぁ……」


 段々と息切れをし始める薫。

 服を脱ぎ、風呂場に入ってシャワーから温水を出す。


 (戦ったんだ…私…)


 今になって、アンジェストロとして戦った実感を得てきていた。

 いつの間にか足が震えており、しゃがみ込んでしまう。

 呼吸もどんどん浅くなっていく。


 (怖い…怖い…怖い…怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い…痛い…)


 震える足に、出していたシャワーの温水が当たる。

 震える体に風呂場の床から親が跳ねる。


 いつの間にか、薫の目からは一筋の涙が溢れていた。


 (怖い痛い怖い痛い怖い痛い…でも、ラパンたちも…きっと怖くて痛い…)


 「私に力があって、それであの子達が助けられるなら……やろう、私。怖いのも痛いのも全部全部、飲み込むんだ…」


 シャワーヘッドを床に置き、両手で頬を包む。

 手は温かく、彼女の心を癒した。


 (とりあえず、眠ってる妖精の子を寝かせられる場所を作らなきゃな……あ、そういえば昔、段ボールで作るミニチュアの家って買ってなかったかな…)


 そう思いつくと、すぐに体を洗い、部屋へ戻っていった。


 その目に涙はもう無かった。

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