9羽 やぶへび
もうダメだ。
人妻エロボディのエルフが、クリームまみれの半泣き上目遣いでへたり込んでたら、一体誰が抗えようか!?少なくとも俺には無理!
今すぐにでもこの俺の息子・・・ああ!!
こんなにもアタマがはち切れそうになるほどになったのは、ツカレマラ以外では久しぶりだ!!
ンフッフッ!!その小さなお口に入りきるかな!?なんなら、生クリームつけてねじ込んでやるぜ!!
「ガチャッ!」
いきなり開いた勝手口の音でビクッとなって、意味不明の阿波踊り。ワチャワチャ。
「おう!!カツマルさんよ!ニンジン、持って来たぜ!アンタ、手、怪我してんだろ!?手袋したまんまだもんな!」
おっちゃんか!取りに行くって言ったのに、ナイスタイミング!!
いや~、びっくりし過ぎて思わず踊っちまったよ。
「っつあ、ありがとう御座います!ありがとう御座います・・・助かりました!」
・・・いやはや、本当に危なかった!!
バクバクとした左胸を右手で押さえて、チラと辺りを見回すと剥ぎ取った前掛けがまな板に叩きつけられていた。左手には・・・清潔なタオルが握り締められていた!
自我がとんでなお、拭き取り用にとタオルをつかむとは!しかもちゃんと二枚。
トホホな自分を今は褒めてやりたい!
でも、まぁ、たとえ据え膳だったとしても手を出す度胸は俺にはない、か。
「お?なんだい!二人とも、もう来てたのかい。おはよう!」
「・・・おはよう御座いますぅ~~」
「おっちゃん!おはようー!!」
「おう!!・・・ああん!?そりぁ、あれか?クリームか!?なんで飛び散ってんだ?あれだろ、上向きで使ったろ!?
裏に使い方が書いてあった筈なんだけどなぁ。それじゃガスばっかり出ちまって泡にならね~だろ!?
・・・なんだよ、カツマルさんも、わかんねーんなら、ちゃんと見ないとよ!」
「はあ・・・済みません」
そう言いながら二人にタオルを渡してあげる。
「・・・顔、洗ってきます~⤵⤵」
「私もー!」
俺からタオルを受け取ると、二人とも鏡のある洗面台へと向かった。もう、カステラを食べる気分でもないし、午後のおやつタイムにまわすとしますか。
「いい娘達だよな~。この商店街のアイドルだ。大切にしねぇとな!」
「で・・・ですね~」
ちょっと後ろめたい気持ち。
そんなアイドル的存在のあ~んな姿やこ~んな姿が俺のスキルで見放題!なんだな。
惜しむらくは、脳にはUSBが差せない。そもそも無いし。
・・・じゃない!あれは事故、です。意図的にはやらないぞ!!っと。
そんなことより、ここは「商店街」と言えるのだろうか?100m間隔位でポツン、ポツンとパン屋があったり美容院があったりクリーニング店があったり・・・。まあ、この世界は広いっぽいから、100m位は近いの部類なのかな。
年中無休の個人商店だから、何処にも行けなくてさ。この世界の事、未だによく分かってないのよね。今度、定休日でも設けようかしら。
そんで二人連れて温泉でも行って、いい景色眺めて、美味しい物食べて、美味し~いお酒飲んで、はだけた浴衣から覗く胸元やふともも眺めて・・・。
「テンチョ~。最悪ぅ~!マツエク取れちゃいました~。あと、書いた眉も⤵⤵」
「あたし、平気。リップ位だし」
おっとイカン。また妄想に浸ってしまっていた。独り言と妄想癖はなかなか抜けないな。
あ、サワリがメッチヤ凹んでいる。そういやぁ、マツエク高いとか言ってたもんな。
「大丈夫ですよ!二人とも、素がステキだから問題ないです!!ね?おっちゃん!」
精一杯なぐさめる。事実、ステキだし。
「だなあ!朝っぱらから可愛い娘達が見れたから、今日はオレもやる気が違うよ!!そんじゃな!!ニンジンそこ置いてくよ!
あとよ!上によ、オレの故郷から送られてきたキノコ乗ってるから食ってくれよ。手!お大事にな!!」
「ありがとう御座います!いつも済みません。ありがたく頂きます!!」
ホント、おっちゃんイイヒト!!またコレがおっちゃんが持ってきてくれる物はみんな美味いのよ!
「テンチョ~。なんかテンションすっごい下がっちゃったんでー、あったかい美味しい物が食べたいです・・・」
出た!たまに振ってくるサワリのおねだりが!
「あたし、スープとかがいいな」
加えてスープ縛りですか!なんてわがままなパート達なんだ!!
くそう!可愛いから、許す!
「ウイ。ナニカ~、ツクラァセテ~、モライマスデコマンタレブー」
なんとなく、カタコト。
「アハハ。何ですか~ソレ~。ウソです、ウソウソ!大丈夫です!作らなくも!」
「え!?あたし食べたい」
「もう!アミちゃん!」
うん、いつもの通りの感じだ。
さてと。う~ん。温かいの、ね。じゃあ先月仕込んだザワークラウトと頂いたキノコ、ウィンナーでポトフでも作りますかな!
作り方は至って簡単。お鍋にお水1㍑、ザワークラウト握り拳分一掴み、輪切りウィンナー2、3本分、割いたキノコ適当、火にかけてキノコに熱が通ったら出来上がり♪
調味料は要らないよ!ザワークラウトとウィンナーの旨味だけで十分なのだ!
「アミさん、キノコとってちょ」
なんとなく調理の流れでアミに頼んだのは間違えだった。キノコを手にしばらくそれを眺め、こそっと
「こないだのテンチョー、こんくらいだったよねー」
「ちょっと!アミちゃんヤメテー」
うわあ・・・聞こえてます。なんて事を!!ヤメテー!は、こちらのセリフです(泣)
「もちょっとあったかな?・・・20cm位・・・かな(笑)」
「18cmです」
ああっ!!しまった!!つい答えてしまったではないですか!!
ハッと顔を見合わせ、暫くの沈黙のあと
「・・・測った事、あるんですね」
一同大爆笑。
ホント、ヤメテ。顔から火が出るほど恥ずかしいから!あのポロリ、無かったことにはしてくんないのね⤵⤵更には自爆発言。
泣きっ面に蜂、踏んだり蹴ったり殴ったりのフルコース。この世界は仏滅が二日続くのかしら。
涙が出るほど笑った後、時々思い出し笑いの咲き乱れる楽しい朝のひと時は、一生忘れないだろう。
美味しいはずのポトフは、少ししょっぱかった。