8羽 あるあるだよね
アタマがぐわんとする。まるで二日酔い、いや、スキル酔いかな。
結局、無駄なスキル発動はヨル夜中まで続いて、冷蔵庫のストック煮玉子を食べたら、消えた。記憶も一緒に消えたらよかったのに。
肉体的に嫌な事なら慣れてるから屁でも無かったんだけどね・・・。
作業靴で引っ張たかれてほっぺたに靴跡ついてるとか、S管で冷蔵庫に吊されるとか、モモかん喰らって小半日脚引きずってる、とか!
・・・まぁ、あるある話よね。
でも!あんなのは、なかったかなぁ・・・。
ああああああっ”・・・ありありと思い出してきたぁ・・・。意図しないポロリ。しかも
エレクト
エレクトポロリ
そうだ!今日なんか来なければいいのに!って心の底から願ったら何とかなるかしら。目をつむり力強く願おう!!違う世界に飛んじゃう位なんだから、いけるか!!
「えい!!」
・・・ゆっくり片目を開けてみたけど、そこに在るのはスネ毛の生えたなまっちろい脚とせんべい布団。さっきのまま。だよね~。
こんなとき、どんな顔すればいいのか・・
笑えばいいと思うよ、うえっへっへ~
アホな事言って笑っても、アラームの野郎が仕事に行けと五月蝿くがなる。いいじゃん。現実逃避くらいさせてくれても。
はぁ・・・仕方ない、行きますか。
そ、みんな嫌な事があってもやるしかないの。仕事なんで。責任ですよ。
とりあえず、朝一番で八百屋へ向かう。シャッターはまだ上がっていないけど、仕入れから帰って来てるはず。
「おはよう御座います~!おっちゃん、玉ネギとニンジン1ケース、あと、ニラ三束で。後でパートに取りに来させますんでよろしくです」
やっぱり居た。ここの八百屋、ウチのカツマル精肉店の真向かい(と言っても道幅100m位あるけどね)にあるんだけど、ここのおっちゃんも、休まない。雨がひどい時に午後閉まる事はあるくらいかな。
子供が大好きで、懐かしい感じの駄菓子を並べているのだけれど、きなこ餅とかさくらんぼ、とか、ちょっと脳がバグる。ココ、日本じゃなくて?
梅ジャムを見つけた時なんか思わず六つも買ってしまったが「ナニで出来ているんだろ?」と、どうしても気になって裏を見てしまい(駄菓子にナニで・・・ってのは無粋なのにね。企業努力で出来てます♪)
原材料:ピンクスライム
とあった時には思わずのけぞった。食べたけど。
「おう!おはよう!なんだよ、いいよ。俺届けてやるよ!ニンジン重ぇからな!!」
サムライ映画の“先生”みたいな風貌のわりに
めっちゃくちゃ優しい。俺も地上げ屋みたいな感じらしいから並んでいると傍目にけっこうエグい。前に、これからカチコミが起きると勘違いされて、自警団に囲まれたことがある位だ。
俺もおっちゃんも善人だよ?っての!
「あはっ!いいっすよー。じゃ、後で俺取りに来ます。お菓子も欲しいですし♪」
うん。おっちゃんと話してちょっと、元気出て来た。後でステーキ肉でも持ってってあげよう。
店に戻り勝手口のノブに手を掛けると、店の中から声が聞こえる。どうやら二人とも、もう来ている様だった。
どうしよう。入りづらい。が。
ええい!!ままよ!
「おっはよ~~!!」
意を決して思い切り明るく振る舞ってみた。いい歳の男がウダウダしてても気持ち悪いだけ!過去には戻れない!起きちゃった事はしょうがないの!!裸はお互い様だし!
・・・違った。視てるの、俺だけでした。ごめん。
「おはよう御座いますぅ~!」
「おはようこざいま~す!!」
何事も無かったかの様な返事に拍子抜け感。と同時に有難味を感じる。
「うん!おはようヾ(´ω`=´ω`)ノ」
「・・・あれ??」
「なっ・・・なに??」
「コーヒーは!?」
「すぐ淹れさせていただきます!!」
嗚呼、いつも通りだ。いつも通りの弱い立場の俺。気持ち的には普段より弱いけど、これでいいのだ!
いつもよりも豆を細挽きにする。今日はマキネッタで濃い目にするのだ。さっき八百屋でザラメがのってるカステラを仕入れたのよね~♪
「はいりましたよ~。サアどうぞ♪」
「ありがとう御座います♪あっ!!カステラ!!すごい!昨日の夜、なんかカステラ食べたいな、って思ってたんですぅ♪」
「へっへっへぇ~。やるもんでしょ?ちなみに、スプレータイプの生クリームもあるのだ!!」
「わ!すごい!!コレどうやって出すんですか?」
「こう・・・容器を上下によく降ってから下に向けてウニュニュ~ゥって・・・」
ビュルルッ!!
「きやぁっ!?やだあぁ!!」
「ちょっと!?なに??」
容器をシャカシャカと振り、下に向ける前にプッシュしてしまった様で、ホイップにならずに液状のままの生クリームが、勢いよく二人の顔に飛び散ったのだ!
ベトベトとしたソレは、ある程度の粘度を保ちながら頬を伝い、やがて、パタタとテーブルの上にこぼれ落ちた。
わずか数秒の筈なのに自分にはそれが、ある種の興奮せざるを得ない、甘美極まる永劫な時に思えてならなかった・・・。
・・・なんてちょっと文豪のような考え方など出てくる訳もなく、素直にエレクト。
・・・俺はチューボーか!!
「大丈夫!?」
ニヤけた顔を気取られないように精いっぱいキリッとしてタオルを渡す。
「サワちゃん!もう!!・・・でも、美味しい♪」
顔に付いたクリームを指ですくい、意味深長な笑みを浮かべながら、舌の先でチロッとなめてみせた
(お約束過ぎるだろ!!わざとか?わざとなのか!?黒表紙人妻エロス小説か!っての!俺を悶絶死させるつもりか??それともこれは・・・やっぱりお誘いなのか!?)
なんとか自制心にしがみ付きながら目を背けた先にサワリがへたり込んでいた。
顔中ベトベトでぷうっと頬を膨らませ涙ぐんで。
俺の自我はここまでだった。