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5羽 こんな雨の日は

 今日は雨。昼過ぎは結構降るみたいなので二人にはお休みしてもらった。

雨降るとお客さん来ないんだよねー。

 前の世界のスーパーもチャリンコ部隊とご老人がメインだったから降るとひどいものだった。パソコンの売り上げとにらめっこ。ため息連発。生鮮三部門はみんなピリついて作業場とパソコンと喫煙所とフラフラ落ち着かない。

現状昨対割れてるところは「去年はチラシが強かった」だの「値上げしたから売れねえ」だのと嘆き、「値下げしろ!!でなけりゃオタクとは取引きしねえ!!」と業者を叩き、無駄にパートさんを怒鳴りつけ、スイングを蹴っ飛ばして出て行く。だいたいどこでもやるこた一緒。特に会社にしがみついてる老害に多いかな、そういう人。みなさん禿げ同でしょ?

・・・俺は昨対越えてたから、そういう日はむしろ調整でちょうどよかったけれども、ひとりだったから壁に話しかけてたなぁ。うん。いい思い出だ。

 ん~~~。ヒマだからギョウザでも仕込みますか。

挽き材ニキロに背脂一キロ、ニラ三束キャベツ一玉半、生姜200gニンニク300g

醤油オタマ1胡麻油1、コショウ20gッと。

ハックション・・・コショウめ。

よく混ぜ合わせ、冷蔵庫で少し休ませる。

さあて、タネが落ち着くまで一服ますか。

 こっちの世界のタバコにはフィルターがないのね。両切ピースみたい。別になくても困らないけどね。ただ、マッチもライターもないのよ。存在そのものが。みんな指先からポッて魔法で火を点けているからね~。俺、そんな魔法使えないし。コンロで火を点けてから外へダッシュ。


「キショウメ。風まで出てきやがった。吹き込んで来やがる」


そうぼやいて一吸い目を口にした途端


「カラン、カラン」


入り口に取り付けたカウベルが鳴る。・・・お客さんだ。今の今まで誰も来なかったのに、火を点けた途端か・・・ついてるな。


「はい、いらっしゃいませ」


急いで火を消して精一杯の笑顔で迎える。金髪ウェービーな背の高いエルフだ。スゲえヒールだな。歩きづらそ。


「・・・あの~~、この辺にクリーニング店があるって聞いたんですけど・・・見当たらなくって」


客じゃないんか~い!!俺のタバコちゃん⤵


「あー、多分、前の道右に曲がって一本目の角を右・・・ですかね。ちょうどワンブロック先ですよ」


「あ、どうも」


ヒールをカッと鳴らしながら横殴りに近い雨の中、何も買わずに出ていった。


「くそ!「どうも」じゃねぇ!ありがとう御座いますだろ?道教えてあげたのになんも買わないし。ちいっ、あんな礼儀知らずな女、透視してやればよかった」


そんな悪態をつきながらギョウザのタネを巻きにかかる。ふう、深呼吸。心の乱れはヒダの乱れ。

まっすぐビシッと五つヒダ。コレ大事。

 見栄えも兼ねてるけど、五つより多くても少なくても食べ心地が違うのよね~。

 皮込みで23g。計りながひとつ、またひとつと作っていく。15個作ったところで店のカウベルがなる。ちょうどワンパック分、区切りがいい。


「いらっしゃ・・・」


ちっ!さっきのウェービーエルフかよ。

・・・んん?

背、縮んだように見える気がするんですけど?


「ごめんなさ~い。見つかったんだけど、休みだし、帰りにヒール折れるし、傘壊れるし

最悪なんですけど!意味分かんない!!で、なんかワンチャン傘売ってるかな~って。あります?」


「かさ・・・あの、ウチ肉屋さんなんですよねー。傘は売ってないかなあ・・・。ワンチャン用もネコチャン用もね」


「やば。意味分かんない」


言葉使いにちょっとイラッとくるけど、ずぶ濡れになって両腕をさすり、寒さに震えてるその娘が可哀想に思えた。


「・・・まあ、傘は無いけどタオルならあるよ。風邪ひくよ?ほら、拭きなさいな」


「・・・ありがとう御座います」


なんだ、ちゃんとお礼言えるじゃないか。結構いい子だったりする?そんな父性本能?も吹っ飛ぶ位、タオルを受け取りに来たその娘の胸に目が釘付けになった。

 まさかのノーブラ!!!

ピタッと張り付いたシャツに、ポチッとくっきりはっきりピンクのピンッが!!


「きやっっ!?」


 受け取りに来たその娘が、ヒールの折れた靴でバランスを崩してタオルを差し出したまま固まっている俺につんのめって来た!お約束!

 俺はどこを支えてやれば良いのが分からずそのまま一緒に倒れ込んでしまった。


「ごめんなさい!!」


 ガバッと起き上がるその娘の胸が今、俺の目の前で揺れている・・・。

 ついでに俺のも起き上がって、重なり合った下腹部に明らかな異物として存在してしまった。


「ん~?やだあ~!コレってもしかして、もしかするぅ?・・・しかもコレは・・・良い物持ってるなぁ~?」


「ンふっ」ニヤッとした笑みを浮かべ、下敷きになっている俺のナニにナニかしようと、手がゆっくりと向かっていく。

 まずい

いくら客が来ないとは言え、ここは店の中。

誰か来たらど~~するの!!

ああ!!いやん!ベルトに手がぁ!!


「テ~ンチョ!!差し入れだよ~」


ガチャッ。勝手口の扉が開きアミアミが顔を覗かせ、そして、固まった。


「ああああっ!!!ちっ!違うの!待って!

違うんだってば!!誤解よ!?誤解!!」


一気に血の気が引き青ざめた。コレは本当~~にまずい。俺悪くない!!誰か助けて!


「あー、おじゃまでしたねー、さしいれおいてきますー、じゃーまたあしたー」


棒読みで去るアミアミの背中を目で追う事しか出来なかった・・・。


「なーんか、アレだね。私も帰るわ。寒ぃ~し。ってかアンタ胸見すぎ。キモッ」


「エエエエエエッ・・・」


いや、確かにガン見してましたさ!でもさ?

非道くない??くっっそおおお!!噛み付いておけば良かった!てのは置いといて、「またあしたー」ってマジすっげー怒ってたよ~~⤵⤵


「明日が怖い・・・」


もう、塞ぎ込みたい。私はギョウザになりたい。

 結局、ただ怒られただけの俺。一日中雨の予報は外れ、すっかりやんだのに心はどしゃ降りだよ。

 乾いてしまったギョウザの皮をただ涙しながら見つめていたのだった。





 









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