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4羽 骨まで愛して

「浮酔天鱗衣魚・・・へえ・・・こんななんだ・・・」


 惣菜用の発注書に、なんだか分からないけど美味しそうな名前が載っていたから頼んでみた。そいつが今しがた届いたのだけれども


 ヤバい


名前から、勝手に仙人にお酒注いでる羽衣天女的なイメージを抱いておりました・・・。

けど、目の前にいるコイツは

 顔は赤ら顔のおっさん

 160cmかなりメタボ体型

 表皮はがちがちのでっかい鱗がびっしり

 胸ビレと尾ビレだけでエラがない

なるほど、浮かれた酔ッパライで、天鱗みたいな硬~い鱗の魚、ね・・・確かに。

よし。コイツを(サカナ+オッサン)でギョッサンと名付けよう。

“肉質は白身で淡白。天麩羅やムニエルに最適”

・・・ホントかよ!?忘年会シーズンによく見掛けるオイリーなおっさんにしかみえないんだが!!パートさん(今日はサワリだけ。アミアミはお休み)が怯えて震えてるっちゅーの!!


「申し訳けない!まさか丸魚で来るとは思ってなくて・・・。ってか魚なのかすら怪しいんですけどね。

・・・食べたこと、あります?」


「・・・切り身ではよく見かけますぅ。

 後、フィッシュバーガーのフライはだいたいコレ・・・。尾頭付きは初めてみましたけど、なんか・・・すごいですね。もう食べられなくなりそうですぅ」


「だよね」


だってさ、キロいくらで書いてあるからさ、

切り身だと思うじゃない。

 とりあえず頼んじゃたからにはやりますよ。やればいいんでしょ!俺は釣りが趣味で魚おろすの得意なんよ。でもね、エラが見当たらないし、肛門からはなんとなく嫌だし、どこから包丁を入れればいいのやら?

コイツは出番だ!


「ステータスオープン!!」


・・・おろ?鱗が厚いのか身しか視えない。

かなり深度を上げないと無理だな・・・。

致仕方なし!深度を上げるとね、その、服どころか、下着までもが透けてしまうのよね。

つまり、あれだ、そこで怯えてるサワリさんのあられもない姿が拝め・・・不可抗力よ?

仕方なくよ?仕事だからさ!

・・・と!!いうわけで!!いざっっ!!


「さらにオープン!!」


ん~、結構深いな・・・お?視えて来た。

骨は・・・ふつうの魚だね。臓物は・・・ありり?エラがある!!おっさんの二重アゴに隠れて見えなかったや。なら、そこから捌いて行けば・・・!よし、コイツは解った!!

解ったから・・・ちょっとだけ、ほんのちょっとだけサワリさんを見てもいいかな?ちょっとならいいよね!?見てもいいかな?いいとも~!!

 ドッキドキするね!!


「ヒャ!!」


思わず声にならない声が出た。心拍数が上がり過ぎて心臓止まるかと思ったよ!!

すごいよ!?これは!!

俺の目の前でサワリがあられもない

 “内臓付きの骨格”

の、姿でカタカタ震えているんだ!!なんてこったい。

深度が深すぎて下着どころか、肉まで透けてますがな!!ん?モツ・・・きれいだな。

じゃない!


「モザイク!!」


あ・・・かけられた。あらま。便利な機能付きだったのね?初めて知った!


「え?なにがですか??」


イヤン。ガイコツが可愛い声でしゃべってる。


「ああ、いや、何でも。あれだ、その、そう!コイツがね?エグいなあ~と思ってさ」


しどろもどろだな。俺の秘密を知られるワケにはいかない。終わる。ヒトとして、終わる。

それにしても・・・はぁ・・・ガイコツかぁ・・・

がっかりだけど、サワリは守られたと思えばね。落ち込みながらギョッサン捌きます。

すさまじく硬い鱗をはいだ後の腹がひどくて更に凹む。ベルトに乗ったリーマンオヤジのそれにしかみえないよ・・・。ポヨン。

キモっ。さっさと終わらせよ⤵⤵

二重アゴを捲りエラから包丁をいれて


「ゴリっっ」


中骨を切断して頭を取る・・・。

うわあ、グロいグロい!!こっちの方こそモザイク!!


「オエッ。私、対面からしばらく戻りませんね。ムリっっ!!」


「え!?そのカッコで!?」


「は?何か変です?」


「!!あ~~。何でもないです」


「ちょっともう!気になる~~。え?どこ?

ゆってくださいよ~~」


「その~、あれだ。あんまり素敵だからまたナンパされやしないかと思ってさ」


「ばか」


ホッペに手を当て照れながらガイコツ、じゃない、サワリが販売へ向かう。

 骨が肉を売る。シュールだな。

さて、何とか柵取りまで終えたギョッサンを調理しますか。確かに白身で馬鹿でかいタラといった感じ。ん、これはムニエルだな。

 まずは切り身にしたギョッサンに塩コショウ、乾燥ハーブを打っておく。

熱したフライパンにタップリのバター。

両面に小麦粉をはたいて焼いていく。

皿に盛り付け、ローズマリーを一枝。

お手軽ね。もう一品。

①玉ねぎとパプリカを極薄にスライス。

②お酢にオリーブオイル、ピンクペパー、隠し味程度の梅酢(バルサミコ可)でドレッシングを作り①を混ぜて冷蔵庫へ。

③切り身をひとくち大に分けて塩コショウ。

しばらく馴染ませ片栗粉をまぶしてフライ。

④揚げたてを②と合わせてマリネする。

⑤再び冷蔵庫で冷やして

はい、完成♪ちなみに②は多めに作っておいてソテーしたキノコを混ぜても美味しいよ♪


俺が調理している間、チラチラとこちらを見るサワリに気が付いていた。きっとお腹空いてきてるんだ。


「サワリさ~ん。そろそろお昼どきよ?

召し上がりませんかぁ?」


「ありがとう御座いますぅ。でもヤダッッ!

そっち行きたくなーい!」


「ははっ。大丈夫でーすよー。アラは処分しましたから~。コーヒーテーブルの方で食べましょう。バケットもありますよ」


「・・・じゃあ、頂きます」


モザイク越しの胃の辺りがぎゅるって動いた。やっぱりお腹空いてるなぁ?

 にしても、スキルがなかなか解けない。サワリはまだ骨格標本のまま⤵⤵

結構深度上げたから時間かかるのかなぁ。

 外へ「お昼休み」と書かれた看板を掲げて

戻るとサワリがテーブルについていた。


「コレ、さっきのですかあ?うわあ、美味しそう♪テンチョー何でも出来るんですね!

イッタダキま~す。ん!お~い~しい!!」


見た目、咀嚼する骨だがサワリだと思うと愛おしい。病気だ。


「どれ。あ、ホントだ。美味いね」


切った感じモウカザメっぽかったのに、味も口当たりもタラだった。いいねコレ。惣菜メニューに加えようかしら。

 んー、仕事中じゃなけれぱなぁ。ワインほしいッス。

 小さなテーブルを挟んでちょっと軽めの昼食。

美味しいものにいい女。しあわせだね。

 今はホネホネだけど、ぼんやりと、本当に美味しそうに食べてくれるサワリの顔が見える気がする。そう、その笑・・顔・・・!!

 気がじゃない!スキル効果が切れてきたんだ!じわ~っと肌色面積が増えてきて、胸の谷間がハッキリとしてきた!!バストトップ

が!!


「コッ、コーヒー入れてきますね!」


「あ、気が回らずに済みません。テンチョー座ってて下さい。私やります」


「大丈夫!もう起っちゃったし(いろんな意味で)座ってて」


この状態のサワリに立ち上がられたら

それはそれは素敵な光景でしょうけど、やっぱり、ね。ガスコンロの火をながめながら同称十念。落ち着け、俺。


「やっぱり私コーヒー煎れます。たまにはやらないと」


すぐ隣から声がする!!


「うわあ!!」


びっくりして尻もちをついたらゴミ箱のギョッサンの顔と目が合って思わず両目をふさいだ。


「どうしたんですか?テンチョー変ですよ??いつもですけど」


「いつもじゃないもん。ちょっと疲れてるだけだもん」


欲望に負けて指の隙間からチラッと・・・

おお♡ナマ足が目の前に!!もう少しうえ!

なあああ!!純白の下着が!!

そうよね~。ハダカは期待し過ぎよねぇ~。

でもサイコ~にしあわせ気分ダア!

いち!にい!さん!ダア~~!!最初から最後までクライマックスですよ!!


「テンチョー変です!こわ!!」


ドン引きされるのと共にスキル効果も切れたようだけど眼福の極みで御座いました!!

 その後一日どう仕事をしたのか覚えてません。うろ覚え、うわの空。

 夜はとてもしあわせな夢が見られましたが、よく朝、下着を洗う自分が情けないの極みで御座いましたとさ。










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