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12羽 OP好きは男の基本スキル

 今朝は暑すぎて目が覚めた。

窓を開けっ放しで寝落ちしたらしく、まだ日も昇ってないのに熱風が吹き込んできている。


「んっ!?んん~!?いててってっ」


 外を眺めていた顔が正面に戻らない。どうやら寝違えちゃったみたいで首がまわらない。布団で寝た記憶、ないもんね。いてて。

 何とか着替えて下に降りたのだが、首がナナメ45度に傾いたまま戻らないや。昭和のヤンキーみたいでカッコわる⤵

・・・納めのない日で良かった。これじゃ運転出来ないもんね。


「・・・カシュウ~~・・・」


 対面ケースのスイッチを入れると早速ピシッパキッと天面の触媒が冷えてゆく。

 要らない苦労をしながら肉を並へ終え、リブロースを3枚、バットから抜いてまな板へのせる。


「おはよう御座いますー!昨日はありがとう御座いました!!」

「・・・おはよう御座います~。ありがとう、御座いました~」


 ちょうどスジ切りを終えたところでアミアミとサワリが出勤して来た。


「ア~、ミナサマ、オハヨウゴザイマス」


首が痛くて、まるで某宇宙映画の金ぴかロボットみたいに体ごとふり向く。声真似付きで。似てないけど(笑)

 因みに俺は那智さん以外認めない派だ!!


「アハハッ!!」


あれ!?ウケた??


「ちょっと二人とも何!?

同じ方向いててウケるんですけど!」


・・・違ったみたい。


「スミマセン~。なんか、寝違えちゃってて、首痛いんですぅ~⤵⤵」


「サワちゃん、ずうっとナナメに走っててチョーウケるんですよ~!もうワタシ、笑いすぎて疲れちゃった!」


 アミアミがフラフラ走行の真似をする。はためには大分オーバー。


「ちょっと恥ずかしいからやめて~⤵」


 アミアミの物まねを止めさせようと追いかけるが、足首がクキっとなってよろける。


「危ないなぁ。気をつけてよ?」


 うん。普段のサワリを見ている限りではオーバーではないんだろうな(笑)


「う゛~、それにしても、暑いいっっ!!出勤しただけだけど、もうシャワー浴びたい」


「それね~!」


「今日は暑すぎるよね~!ご苦労さまです 

(一緒に入りたい・・・)!」

 

 熱いコーヒーを氷たっぷりのグラスに半分ほど注ぎ入れミルクをもう半分。カフェオレにしてあげる。

 アミアミはぴったり目のTシャツ、サワリは胸元ゆったりなカットソーで、それぞれ襟首をパタパタさせて胸元に風を送りながら受け取った。まっすぐ向けないからじっくり愛でられないのが残念でならない。


「フッフッフ。奇遇だね、実は俺も寝違えなのよ~!あっ!・・・ねぇねぇ、ほら!こうして並んだらファーストフードみたい♪ご一緒にポテトはいかがですか~?」


 売り子のネェチャンよろしく、ポーズをとってみせた。


「あー、なんて言うか、そんな微笑ましくないですね。並んじゃうとお客さんにケンカ売ってるみたいでヒドイ有様です」


「ホント!?ダメじゃん!!」


 なんて、他愛ない会話をしながらモグモグタイムを終え、開店準備に取りかかった。

 ケースや秤を拭いたり、肉を包む為の経木(葉)を揃えたりとするのだけれど、サワリは首痛の為にちょこちょこっと動いていて、まるでペンギンのよう。


 「はい、これ」「はい、経木のおっきいヤツね」「もー、サワちゃん下のヤツ、ワタシが取るよ」


 サワリの作業をその都度アミアミがフォローしてあげている。うん、いいコンビだ!

 俺は俺で頑張ってシャッターを開ける。

うーん、体幹って大事なのねぇ~。ナナメのままの首じゃ力が入らないよ。

 このシャッター・・・直したいなあ・・・古いし、重いし。

半分程開けたところで誰かが待っているのが見えた。


「おはよう御座いますっ!マルカツさん!!

早くからごめんなさいねっ」


 まだ顔が出る前から元気な声が飛んでくる。サクマさんだ。納め先の保育園の先生で常にパワフル、エルフにしてはめずらしい有色の肌でちょっと太め。笑い上戸でいわゆるザ・お母ちゃん!って感じのとても良い方なのだ。


「いや、大丈夫、ですよ!!くっ!おっもい、なあ!!・・・っと。フゥ、開いた。おはよう御座います、いらっしゃいませ。どうぞ中へ」


「あっはっは。ごめんね~!息子が急に「かあちゃん、午後から部活行くから弁当!!」なんて言ってくれちやって、もう何よ、なんもないわよ~って。あっはっは。もう~ホーントバカ息子何だから!」

 

「わかりますぅ~。ウチなら、もうリイナと朝から口げんか合戦ですよ~。それで一日中プリプリになっちゃいますぅ~」


 いつの間にか隣に来ていたサワリが接客に加わる。


「アハハハ!ね~!私だってもうプリプリよー!

あら!?・・・どうしたの?二人ともおんなじ方に首かしげて」


 サクマさんも、ナナメに傾いた二人の顔と同じ方に首を傾けて心配そうに聞いてきた。


「あ、寝違えちやって」

「あ、寝違えちやって」


 二人してハモる。


「プッ!あっはっは!ちょっとなに!?あっはっは!だいじょ・・・あっはっは!もう笑わせ・・あっはっは!お腹いた・・・ははっ

・・・しゃべられ・・あ~っはっは!!ちょっと、外・・・あっはっは・・・苦しい~」


 う~ん。ツボってしまったみたい・・・。

むせ込みながら一旦外へ逃げてしまった。

うん。俺でも笑う。ってか、実際つられて笑ってしまって、首にひびいて痛い。それが可笑しくて余計に笑ってしまう。

 痛くて笑っちゃう事、あるよね~。


「良かったですねー。笑ってもらえて」


 仲間はずれみたいなカタチになってちょっとふくれっ面のアミアミ。

サクマさんの接客中に揚げ物のお客が来て、コッチに来られなかったのだ。


「いや~ごめん!揚げ物してるのに接客、ありがとね。でもね?コレはこれでつらいのよ!?

・・・あっそうだ!今度は三人でやってみる??」


「やりません」


 おう、即答。機嫌悪いスイッチを踏んでしまったかしら?今朝は普通だったのに。


「・・・アレェ?サクマさん、いなくなっちゃった??」


 頭をポリポリ掻きながらヤな感じから逃げる。


「みたいですね~。私見てきましょうかぁ?」


「いや、いいよ。そのうち来るでしょ」


 なんて言ってたら手をバタバタ振りながら、遠くからでも爆笑しているのがわかるサクマさんが見えた。


「あっはっは!もうやだあ!笑ってたらお買い物してないのに帰っちゃって!ごめんねー!」

  

 ズコーッ!・・・である。


「アハハハ!ちょっとサクマさん!!アハッ!可愛すぎますぅ~!アハハハ!」


 ワア、サクマさんのが伝染してサワリがステータス異常か!ってぐらいに笑って止まらない。嗚呼、販売員が・・・。

 しかし!身をよじって笑うたびにカットソーの隙間からたわわなオパーイの谷間がちらり。たゆんたゆん。ありがとう、サクマさん。

 さらには、常に覗きこもうと必死にあがくと、なんとなく首が治ってるでは、あ~りませんか!!

 恐るべしエロパワー。

 いや、OPパワー。


「いや~、サクマさん!ありがとう御座います。楽しい一日のスタートを切れましたよ!

(色々とね)で?なにに致します?」


「あー、オークカツと自家製メンチがそっちで楽しそうにしてる間に揚がりましたよ」


 アミアミが俺だけに聞こえる声でつぶやく。ありゃ~、またボッチにしてしまったからか、機嫌悪いなぁ・・・。

普段はこんな娘じゃないのに・・・。


「サクマさん!!今、アミアミがカツとメンチを揚げたんですけど、どうですか?」


「うわーー!ありがとうアミちゃん!ちょうどカツサンドにしようかな?って思ってたの!!」


「あー、それはよかったです!今日のカツ、リブなんで美味いッスよ!!息子さん、大喜び間違いナシですよ」


・・・あり?機嫌悪いのは俺にだけっぽ。


「はい!!サクマさん。なんかスゴい笑ったら寝違えたの治ったみたいですぅ!ありがとう御座います」


 サワリがカツを渡して、お辞儀。おお!またチラリと!チッパイのアミアミなら先まで見えてたな。

・・・じゃない。良かった。サワリも治ったみたい!これで皆さん万全かな?

 アミアミの機嫌悪いのが気になるけど、とりあえず、そいじゃ、ま、今日も一日頑張りますか!



















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