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第五話「祈りは現実の否定なのか?」 1

 今日もまた夢の中にいる。


 濃霧が晴れて、広場にいることを知る。


 昨日こなたとかなたに会った広場だ。


 夢の中での時間経過なんてあやふやなものだと思うが、もはや起きているリアルの時間の何割かに近い時間を夢の中で過ごしているような気がする。


 ふわり、と白い影が降りてくる。


 そのそばには、着物を着た祈が立っていて、これまで通りこちらを見て微笑んでいた。


「また会ったね」


 リアルよりも夢の方が祈と会話している気がする。


 相変わらず裁定者、燐は日傘を差したまま無言でこちらを見ている。いつも頭に乗せているカエルは今はいない。


 ただ今日はその二人だけではなかった。


「かなた、さん」


「うん……」


 燐の横にはかなたが昨日と同じ服装で立っていた。今のかなたはメガネをしていないから、髪型以外はこなたそっくりに見える。


「どう、して」


 どうしてもこうしても、夢の中だからどうでもいいとはわかってはいるが、聞かずにはいられなかった。


「こんなところまで来ちゃった」


 かなたは弱々しく、苦笑する。


「こんなところ?」


「夢の中、に、来ちゃった」


「ここはどこなの?」


「ここは、夢の世界。みんなが住んでいる夢の世界だよ」


 かなたはそう言った。


 ゲームを続けるとどうなのか。


 こなたは身体が侵されてしまうと言った。


「私は、もう戻れないかもしれない」


 霧がかなたを包むかのように、彼女の姿が霞む。


 彼女の言葉に答えたのは祈だ。


「大丈夫、あなたはまだ時間がある。でも、もうすぐ」


「そう、そうなの、私はまだなの」


 少し安心したかのような顔をかなたがする。


 時間とは何なのか。


「ねえ、お願いがあるの」


 彩花に向かい直したかなたがじっと見る。。


「こなちゃんを、助けてあげて」


「助ける?」


「こなちゃんはとても弱いから、頑張っちゃうの」


 こなたが助けようとしたのは、かなたではないのか。


 かなたのために、ゲームを勝ち続けようとしていた。


「こなちゃんの友達になってあげて」


「あれ、かなた、さん?」


 彩花が思考に時間を取られた一瞬、かなたは広場から姿を消していた。


「まだ、彼女はここまでしかいけない」


 祈が残念そうに呟いた。


「でも都合がいいかも」


 祈はちらりと白い裁定者の少女を見る。


 彩花も視線を移すが、少女は何も答えなかった。


 最後に祈が言う。


「私も、夢で待ってる」

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