52話 ゼーレ
「あなたと対等になれたよね...」
そう言ったゼーレの目の前にはゼロがいた
ゼロは無言のままゼーレを見つめる
「私はあなたのお兄さんに憧れた、そして次はあなたにも...」
「全ては、憧れた人に...あなたに認めてもらえるように」
「そのためなら自分自身を変えても構わないと?」
ゼロの言葉にゼーレが少し目を細める
「ゼーレ、お前はそのままでいいじゃないか、何も変える必要なんてない」
「いいえ、それじゃダメなの」
「なぜダメなんだ」
「あなたを守れるように...私も強くならなきゃ...」
ゼーレはゼロに向かって構える
「あなたの隣に立つために...!」
ゼロも戦闘態勢を取る
「なら、お前の今の強さ...俺に見せてみろ」
「えぇ、存分に見せてあげる...!」
重い沈黙がその場に流れる
「...」
「...」
そして息を合わせたように互いに向かって走る
「ゼロ!!!!!」
「ゼーレ!!!!!」
ゼロとゼーレの戦いが始まった
ゼーレの攻撃は一撃が重く早くなっていた
ゼロは避けきれずとっさに防御する
「これがそのスーツのおかげか...なかなか厄介だな」
「まだまだいくわよ」
ゼロの反撃を許さないほどの手数で攻め続けるゼーレ
ゼロが一瞬の隙を見て反撃するが
「無駄よ!」
「くっ!」
ゼーレのカウンターを食らいゼロは後ろへ飛ばされる
壁際で留まりすぐ態勢を立て直したゼロだが
「!?いない」
正面にいたはずのゼーレを見失う
「どこ見てんの!」
「左か!!」
声のする方へ向いた瞬間ゼーレの魔力弾がゼロに当たる
「ぐぁああ!!」
そのままゼーレから距離を取ったゼロ
「やるな...ゼーレ」
ゼーレは一切表情を変えない
「押されてばっかじゃまずいな、よし」
ゼロはゼーレに一直線で向かう
「食らえッ!!」
「そんな攻撃...ハッ!?」
ゼーレは避けようとするが体が動かない
「まさか、拘束!?」
(避けられない...!だったら!)
ゼーレはゼロの攻撃を受け流しながら拘束を解除する
「さすがゼーレ...拘束の対処もできるか」
「解除の仕方を分かっていれば脅威じゃないわ!」
拘束魔法は拘束の魔力分吸収されるか発動場所ごと破壊されると解除される
その後はしばらく膠着状態が続き、互いに疲労が見え始めてきたころ
「お前は、なぜそこまでして強くなろうとする...!」
「言ったでしょ!あなたの隣でいたいから!」
ゼーレの攻撃を躱しながらゼロが言う
「ならこんなことをしなくても!」
「でもあのままだと認めてもらえない!あなたの傍にいる資格もない!!」
「そんなことはない!」
ゼロの攻撃を受け止めながらゼーレは言う
「私は憧れだったあなたに!私の強さを認めてもらう!」
「なぜだ!?」
「だって...!」
ゼーレは一瞬、脳裏に過った
『一緒に、頑張って生きようぜ』
初めて会った時、手を差し伸べてくれたゼロの姿を
「あなたが好きだから!!!!!」
ゼーレの攻撃を受けきれず反対側の壁まで飛ばされ倒れたゼロ
「......」
「だからこそ!好きな人の隣を歩くために!私は強くなるの!!!」
ゼロは息を整える
立ち、構え、腰を落とす
それを見たゼーレも再び構える
そして二人は互いに向かって走り出す
「はぁぁああああ!!!」
「やぁぁああああ!!!」
二人の拳がぶつかり合い、衝撃で地面が割れる
数秒の沈黙の後、ゼーレが倒れた
「はぁ...はぁ......私の、負け......」
「はぁ......はぁ......」
ゼロも耐えきれず片膝をつく
ゼーレはゆっくりとゼロの方を見る
「これでも私は...あなたに勝てないのね...」
「...」
「ねぇ...私のこと、認めてくれる...?」
「......あぁ、認めるよ、誰にも負けないくらい...強かった」
ゼーレは微笑みながら天井を眺める
すると
「いやぁ、素晴らしい!いいものを見させていただきました!」
「誰だ!!」
ゼロとゼーレが声のした方を振り向くと
白い髪、黒い瞳、赤いマントとグローブをした、見慣れた顔がそこにいた
「さぁ、これで残すは私のみとなりましたねぇ」
「お前は...」
「神の子、アルス...!」




