33.5話 少女の遭遇
同時刻、リリアの部屋
「よっ、もう起きたか?」
部屋の扉をそっと開けながら聞くゼロ
寝ているリリアの隣で座っているゼーレがゼロを見る
「ゼロ、まだリリアは起きてないけどケガは大丈夫そうよ」
「そっか、見といてくれてありがとうゼーレ、あとは俺が見ておくよ」
「ありがとう、少し寝るわね」
しばらくしてゼーレが眠ったのを確認したゼロはルイと通信をする
「あれからあの時の謎の男について少し聞き込みをしてみたが、結局何も分からなかった」
「テリア女王と一緒にいた男だね、もしかしたらだけど、彼が例の魔物かもしれない」
「あいつが?どうして」
「実は彼の後を偵察機で追っていたんだ、彼は王国を去った後、とある場所へ向かった」
「あいつがあの話の通りだとすると...もしかして」
「うん、向かった先は古代遺跡だ、これで彼が魔物の可能性が出てきた」
「そういうことか、次に向かう先はまたそこになりそうだな」
「ま、今はそっちの面倒を見てあげて、すぐに出発は無理だろう?」
「そうだな、そうしよう」
「さて...目が覚めるまでもう少し起きとくとしよう」
ゼロが看病をしてしばらく...
一時間近く経ったころ
ゼロは窓から夜の街を見ていた
「...やっぱ栄えてるとこは違うなぁ、こんな夜更けだってのにまだ人が多い」
すると、ある店の前が騒がしそうにしているのが見えた
「ん、なんだあれ、何かあったのか?」
「リリアはまだ起きなさそうだ、よし、ちょっと行ってみるか」
城を離れ騒ぎのする店へ駆けつけたゼロ
「一体何が起こってるんだ...」
人だかりを縫うようにして前へ進むゼロ、そして見えたのは
「あれは...女の子?」
そこに立っていたのは拳を構えている少女と怯えている店員であろう人だった
「どういう状況なんだ」
少女は無言で足を踏み出すと店員との距離を一瞬で詰めた
「う、うわぁぁああ!!」
店員の叫び声と同時に少女のストレートで吹っ飛んでしまった
「...!あの子、見た目からは想像できない強さだ!このままだとまずいな、あいつ死んじまう」
少女はゆっくりと店員に近づいていく
そしてまた拳を突き出す
「...ん」
店員に拳が当たる直前、誰かに拳を受け止められる
「おいおい、こいつ殺す気か?」
「...邪魔」
少女のストレートを止めたゼロはそのまま店員から遠ざかる
「一体何があったんだ?」
「...」
「なぁ、教えてくれ」
少女は少し離れるとゼロに向かって構える
「さすがに話してくれないか、しゃあない」
ゼロも少女に構える
「よしこい!」
少女はすぐに距離を詰め拳を振る
ゼロはそれを素早くかわす
「...!」
「へぇ、歳に似合わず随分やるね」
少女はすかさず次の攻撃に入る
「けど、残念」
ゼロは攻撃を受け止めた
「俺には攻撃が止まって見える」
「ッ!」
ゼロはそのまま少女を押し倒す
「うっ...!」
「これで!」
ゼロは少女に拳を振る
「くっ...!」
「さ、これで俺の勝ちだ」
ゼロが殴った先は地面だった
「お前の話聞かせてくれるか?」
「......」
少女は無言で頷く
場所を変えたゼロと少女
「さっき店員を襲っていたようだが、何があったんだ?」
「...べつに」
「まさか何も無く襲ったと?」
「違う、その...」
「...?」
少女は俯きながら言う
「お、お金...」
「金?なんのために?」
「生きるため...」
「生きるためか...まあこの国だとそういう人もいるかもな」
「...」
「やめろ...なんてことは言えない、お前の事情を知らないし」
「...?」
「まあなんだ、無作為に襲うんじゃなくて、悪いことしてるやつに拳を振りかざして欲しい、とは思う」
「悪いこと?」
「ああ、お前ほどの腕がありゃ、そうそうそこらの奴には負けないだろう」
「そう、かも」
「それに、これはお前にとってメリットにもなり得るんだ」
「どういう...?」
「悪いことしてるやつはその悪いことで得たそれなりの金を持ってるもんだ」
「うん」
「お前はそいつを倒して金を奪ってやりゃいい、それもまた悪いことではあるが、生きるためなんだったら仕方ないことだろう」
「分かった、これからはそうする」
少女の言葉を聞いたゼロは立ち上がる
「俺の楽しみがまた増えちまったな」
「楽しみ?」
「お前はこれから強くなる、そう確信したからさ」
「強い人、好き?」
「ああ、大好きだ」
「...そっか」
「んじゃ、俺は帰るわ、お前もそろそろ寝るんだぞ」
「うん、おやすみ」
「風邪ひくなよ~」
ゼロは少女に背を向け、城へと戻っていった
少女はそれを見ながらつぶやく
「...わたし、強くなる、憧れのあなたに、追いつけるように」
少女はそう誓いながら夜の街へ消えていった
ゼロは帰りながら、ふと思った
「...名前聞いとくんだった」




