3話
旧題 脱線、過去
「みんなお待たせ~!」
メルさんが小走りで来たようで、若干息が上がっている
「ふぅ...それで、今日はどうしたんですか?」
普段は三人で話していてメルさんを直接呼ぶことはない
珍しかったんだろうか、少しウキウキしてるように見える
「そうだ、昨日耳にしたことなんだが」
「俺の兄貴たちを目撃したんだって?」
そこでルイが驚いた
「お前兄弟いたのか!?」
「あぁ、ルイにはまだ話していなかったが」
「えっ?ゼーレは知ってるのか?」
ゼーレは頷きながら答えた
「私は知ってるわ、まだルイと会ってない頃に聞いたから」
「僕と会う前から結構仲良かったんだね~」
「で?いつゼーレと知り合ったんだい?」
「俺は十年前のあの後から、少し離れた森の中を歩いてたんだ」
「食料を取りに行ってたんだ、周りは何もかも無くなったからな」
急に孤独になると多少は寂しくなる、その気分を紛らわすためでもあった
というのは恥ずかしいので言わないでおく
光に覆われた後の景色は酷く
辺りにあった村は消え、自分の家と遠くに森があるくらいだった
「何日か経ったある日、俺は森の中で人影を見た」
「それがゼーレだったってこと?」
「ええ、そうよ」
歩いていたゼーレに「なぜここにいるのか」と話しかけてみた
彼女は時折森を散歩しにここへ来ると言っていた
「それから二人は仲良くなったと、ふむふむ」
「実はな、もともとは三人いたんだ」
「じゃあ後の一人は誰なんだ?」
「リリア...私の姉よ」
そう、実はもう一人、リリアというゼーレの姉がいた
「歳は一つしか変わらないわ」
「その...リリア?って人、今どこに?」
ルイが不思議そうに聞いてきた
「どこにいるかは分からない」
「分からない?どうして」
「リリアはゼーレに家に招待されたときに知り合った人だ」
続きを言おうとしたがゼーレが先に口を開いた
「リリアは戦うことが昔から好きでね」
「私はよくそれに付き合わされて疲れてたの」
「だから時々リリアの目を盗んで森で散歩してたのよ」
ルイは興味津々で聞いていた
「なかなか好戦的な子だったんだね~その子は」
「そして俺も戦いに誘われた」
「ゼロはどうしたんだ?」
「本気でやらなくても勝っちまった」
「それがあいつにとっては悔しかったんだろう
それからはよく俺が相手になっていた」
「それで二年くらいたった頃かな」
リリアはそれまで中途半端だった魔法がしっかりした魔法になり
それでも勝てなかったゼロに対してある約束をした
「ゼロに絶対勝てるよう旅に出る、次会った時が最後の戦いにしましょう?と」
「ほぇ~、ゼロを倒すためだけに旅に出る、ってすげ~子だな」
「それからどこに行ったのかは未だに分かってない」
「なるほどなぁ~、その子のこと、興味出てきたな」
「おっと、ごめんメルさん、話が滅茶苦茶脱線しちゃったな」
ずっと聞いてくれていたメルさんは首を横に振りながら言った
「いいんですよ~、私お話を聞くの好きですから」
「ならよかった、それで兄貴についてなんだが」
「はい、その噂は聞いてますよ~、なんでも」
その時、どこかから轟音が響いてきた
「ん?この音は...?」
とルイが言った瞬間
「来る、広範囲バリア展開!」
メルさんの発言直後、巨大な衝撃波がギルドを襲った
しばらくすると衝撃は止み、ルイが口を開いた
「なんだ今の?てかメルさん今のは魔法?」
「なんとか間に合いました~、そうです、私の魔法ですよ」
「バリアがなんちゃら、とか言ってたよね?」
「私は防御の魔法をいくつか持ってまして、今のはその一つです」
衝撃波に耐えれずしゃがんでいたゼロが立ち上がりながら話した
「...確か、十年前の時もバリアで防いでいたんだよな」
「そうですよ~、おかげでギルドが壊れることなく済みました」
「あの時はとても普通じゃ防ぎきれそうになかったのでバリアを最大で展開したんですよ~」
「そりゃまた、すごい話だな」
「ま~その後私は魔力切れで一日気絶してたみたいなんですけどね...」
困ったような顔でメルさんは話した
「それで今の衝撃波なんですが、これからゼロさんにお話しする内容にも
関わってくると思います~」
あの衝撃波が...と少し困惑していたゼロだった