21話
ルイが「いいところ」とだけ告げ、ゼロとゼーレを連れて館の奥へと歩き出す
ゼロは無言で後に続きながら、心の中で疑念が渦巻いていた
討伐依頼に写っていた人物、リリア
リリアはゼーレの姉であり、ゼロにとってはライバル的存在だった
「で、どこに向かってるんだ?」
ゼロは耐え切れず、前を歩くルイに問いかけた
「もうすぐわかるよ」
地下に続く階段を下り少し歩くと、両開きの扉が現れた
ルイは扉の前で立ち止まり、ゼロとゼーレに振り返る
「この中で話そう、落ち着いて話ができる場所だからね」
ルイが扉に手をかざすと扉が静かに開いた
中に入ると、どこかを映しているモニター数枚と、ベッドなどのちょっとした家具が置かれていた
中央には丸いテーブルと椅子が置かれている
「部屋は広くなったが前の所から置いてるものはそう変わってないな」
「あんまり環境を変えたくないからね、さあ、本題に入ろう」
ルイは椅子に座りながら、ゼロとゼーレに向かって手招きし、ゼロは椅子に腰を下ろした。ゼーレも無言で席につくが、その表情は硬い
「討伐依頼の人物についてだが...」
ゼロが口を開こうとした瞬間、ルイはゼーレをちらりと見てから静かに言葉を継いだ
「リリアさんのことだね」
その名前が出た瞬間、部屋の空気が張り詰めた
リリアは幼い頃から魔力の適性が高く、特大魔法を操ることに長けていた
彼女はゼロとライバル関係にあり、互いに力を認め合っていた
数年前、旅に出たリリアは今、討伐の対象として名前が挙がっている
「姉さんが、なぜ討伐対象に...?」
ゼーレが硬い声で問いかける
彼女は強がっているように見えるが、その目には動揺が隠せない
ルイは静かにゼーレを見つめながら、言葉を選ぶように話し始めた
「リリアさんが討伐対象になった理由は、その力が危険視されたからだ。彼女は生まれつき圧倒的な魔力の持ち主で、特大魔法を得意としている。だが、その力を使いすぎたことで、周囲から危険視されるようになったんだ」
「そんな...」
ゼーレの表情が曇る。姉の才能を誰よりも知っている彼女にとって、リリアが危険な存在として扱われることは到底納得できることではなかった
「でも、それだけじゃない」
ルイの言葉に、ゼロが目を細めた
「他にも理由があるのか?」
ゼロが問いかけると、ルイは少し頷いた
「リリアさんが討伐対象になったのは、自分の限界を超える力を求め、各地を巡り、さらなる強大な魔法を手に入れようとしているからさ。だから、一部の魔導師たちは、彼女を放っておけなくなった」
ゼロは拳を握りしめ、かつてのリリアとの戦いの日々を思い出した。強大な力を手にすることは時に災いを呼び寄せる。リリアはどこかで均衡を崩してしまったのだろうか
「リリアは今どこにいるんだ?」
ゼロがルイに問いかけた
「正確な場所はまだわかんないけど、リリアさんは今、南方の古代遺跡に向かってるって情報があるよ。彼女はそこで、さらに強大な魔法を手に入れるつもりらしい」
「南方の遺跡か...」
ゼロは思案しながらルイの言葉を噛み締めた。南方の古代遺跡は、かつて強力な魔導師たちがある魔物を封印した場所として知られている
「リリアを止めないとな」
ゼロは立ち上がった
「姉さんを...討伐するつもりなの?」
ゼーレが不安げにゼロを見つめる。彼女にとって、リリアは家族であり、大切な存在だ。だが、ゼロの目に浮かぶ決意の光は、彼が討伐という形ではなく、彼女を救おうとしていることを示していた
「討伐じゃないさ。リリアを止めて、元に戻す。それが俺たちにしかできないことだ」
ゼロの言葉にゼーレは深くうなずいた。そして彼らは、かつてのライバルであり、ゼーレの姉であるリリアを救うため、南方の古代遺跡へ向かうことを決意した




