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『第4回 下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞』

まるで君はひまわりのようで

作者: 佐藤そら

 早起きの君は、今日も元気に布団をめくり飛び起きると、庭に一目散にやって来た。


「おはようっ! またおっきくなったね!」


 君はキラキラした笑顔で、わたしに水をやる。


「ひまわりさん、もうすぐ咲くね!」


 君が毎日欠かさず面倒を見てくれたからね。

 いつの間にか、君の身長も追い抜かして、こんなにも大きくなったよ。

 もともとは、小さな種だったのに。


 いつも輝く君は、わたしよりもよっぽど、ひまわりのような気がする。



 わたしはいつも、庭から君を見守っている。

 ポーカーフェイスなひまわりだけど、いつも君を見守っている。


 朝から君は、今日もすいかを頬張って、夏を満喫中だ。

 蝉の声が夏を主張していて、今日も暑くなりそうね。



 数日後、わたしはついに開花した。


 太陽を見つめていたら、慌ただしく君が帰って来た。

 君は玄関にランドセルを放り投げると、こちらに向かって勢いよく駆けて来る。


「わぁーー! 咲いたぁあ!!」


 君は、夏の日差しよりも眩しい笑顔で、わたしを見上げた。

 やっぱり君は、わたしよりもひまわりだと思う。



 君は慌てて部屋に戻ると、画用紙と色えんぴつを手に、再びわたしの前にやって来た。


 二つの膝小僧が、こちらを向いて並んでいる。

 君は何やら描き始めた。


 じーっと、わたしを見つめる。

 そんなに見つめられたら、照れるじゃないか。


 やがて、黄色い色えんぴつを取り出すと、ニコニコしながら画用紙に色をつけ始めた。



「じゃーん! 見て!」


 君は、わたしに絵を見せた。


 あら、これはわたし?

 とても上手ね。


 そこには、立派なひまわりが描かれていた。



 その夜、君はママに着せられた浴衣で庭にやって来た。

 夏祭りでもあるのかい?


「どう? すっごいでしょ?」


 君は、得意気に決めポーズをキメる。


 君はいつも『おっきい』『すっごい』って、小さい『っ』

 を使う。

 かわいいな。



 君は家族とバーベキューを始めた。

 わたしが咲いたお祝いらしい。


 星座も輝く夜空で、心地よい。


 トウモロコシにかじりついて、もぐもぐしている君は、ハムスターみたいだ。

 わたしの、ひまわりの種をあげようか?

 もぐもぐしてみるかい?



 無邪気でかわいいまま、大人になるのかな?


 紳士でカッコイイ、大人になるのかな?


 何でも着こなしちゃうスーパースターになるのかな?


 相変わらず、短パンでも履いてたりして。


 先輩にいじられたり、後輩に頼りにされる先輩になってるのかな?


 誰からも愛されてほしいな。


 妄想は蕾のように膨らむ。


 ひまわりのように、大きくなってね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 彼は、絶対に、将来ひまわりのような明るさを持った大人に成長し、たくさんの人の心をあたたかくしてくれるようになると確信できるのはなぜなのかしら。 量子力学の作品にコメントさせていただいた、「…
[良い点] とても気持ちが温かくなるお話でした。 ひまわりが少年のお母さんのように見えて、私も読んでいて少年を愛おしく思いました。
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